- 「訪問看護の事務員として、クレーム対応にどう向き合えばいいのだろう?」
- 「適切な対応方法がわからず、いつも不安だ」
訪問看護ステーションの事務員は、利用者さんやご家族からのクレーム対応をすることが多いものです。
適切な対応ができれば、ステーション全体の評判も良くなり、地域から選ばれる事業所になるでしょう。
とはいえ、「クレーム対応は憂鬱だ」と感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、訪問看護のクレーム対応に役立つ基本的な知識を紹介します。
本記事では、以下のことがわかります。
- 訪問看護に寄せられるクレームの種類
- クレーム対応が重要な理由
- クレーム対応のポイント
- クレームを未然に防ぐ方法
訪問看護の事務員としてスキルアップし、自信をもって仕事にとり組むためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
訪問看護ステーションに寄せられる主なクレーム
訪問看護ステーションにはさまざまなクレームが寄せられており、事務員が最初の対応窓口となる場合が多いことでしょう。
クレームの種類を事前に把握しておけば、冷静な初期対応と情報収集ができるようになります。
訪問看護で多いクレームは、主に次の5つです。
- 訪問時間の遅刻や予定の変更に対する不満
- サービス内容への不満
- 看護師のコミュニケーションへの不満
- 請求や費用に関する不満
- 担当看護師の変更に関する不満
それぞれ見ていきましょう。
訪問時間の遅刻や予定の変更に対する不満
「9時に来ると言っていたのに、30分も遅れて来た」など、訪問時間に関するクレームがあります。
利用者さんやご家族は訪問を心待ちにしていることが多く、少しの遅れでも不安や不満につながりやすいもの。
交通機関にトラブルがあったり、前の利用者さん宅での対応が長引いたりして、やむを得ない事情で遅れることがあります。
また、急な予定変更に対して連絡が遅れてしまうことへの不満も少なくありません。
特に一日のリズムが固定化している方や、ご家族が仕事を調整しているケースでは、連絡の遅れは大きな不満につながるでしょう。
サービス内容への不満
利用者さんが期待するケアと、実際に提供されるケアとの間にギャップがあると、不満が生じやすくなります。
「お風呂掃除をしてほしい」「もっと長く滞在してほしい」など、訪問看護で対応できる範囲を超えた要望が寄せられる場合があります。
提供できるサービスに限りがあることを利用者さんが十分に理解していないと、起こりがちです。
看護師のコミュニケーションへの不満
看護師が忙しそうにしていると、利用者さんやご家族は質問や相談をしづらく感じ、不満を抱えてしまうことがあるでしょう。
また、「日々の様子をあまり詳細に家族へ報告してくれない」など、連絡や情報共有が不十分だと感じるケースも少なくありません。
他にも、専門用語を多用しているために内容が理解できず、不満に感じてしまう場合もあります。
請求や費用に関する不満
「思っていたより金額が高い」「請求内容が複雑でわかりにくい」など、費用に関するクレームも事務員が対応する機会があります。
訪問看護では医療保険適用分と介護保険適用分、自己負担額など料金体系が複雑であり、利用者さんにとってはわかりにくいことが多いのです。
請求書の記載ミスや、事前説明と実際の請求額に差があるケースでは、特に強い不満につながりかねません。
担当看護師の変更に関する不満
- 「やっと信頼関係ができたのに、看護師が変わってしまった」
- 「新しい看護師にすべて説明し直すのが面倒だ」
このような、担当看護師の変更に関するクレームも珍しくありません。
長期間のケアが必要な方にとって、担当看護師との信頼関係はとても重要であり、担当者が変わってしまうと大きな不安につながってしまいます。
看護師が変更になる理由や事前の説明が不十分だと、より不満が強くなる場合もあるでしょう。
新しい担当者に落ち度がないとしても、「前の看護師の方が良かった」と比較されてしまい、信頼関係の構築も難しくなってしまいます。
訪問看護のクレーム対応が重要な理由
訪問看護のクレーム対応が重要な理由として、以下の3つが挙げられます。
- 適切なクレーム対応により信頼関係が構築できるから
- クレームがサービスを改善するきっかけになるから
- 対応の良し悪しがステーションの評判を左右するから
それぞれについて見ていきましょう。
適切なクレーム対応により信頼関係が構築できるから
適切なクレーム対応ができれば、利用者さんやご家族との信頼関係が深まります。
なぜなら、問題が発生したときこそ誠実な対応や解決力を示すことで「困ったときに頼れる」という信頼が生まれるからです。
たとえば、以下のような点です。
- 問題解決力を示す:訪問時間の遅れに対して、「今後は15分以上の遅延時には必ず事前連絡します」と具体策を提示する
- 誠実さを示す:請求書の誤りを素直に認めてすぐに修正し、「ご指摘ありがとうございます」と感謝の言葉を添える
このようにクレームを適切に処理すれば、かえって信頼関係が強くなり、長期的に良好な関係が保てると考えられます。
クレームがサービスを改善するきっかけになるから
クレームは、自分たちだけでは気づかなかった問題点や改善点を気づかせてくれる貴重なものです。
たとえば、「毎回訪問時間が違う」という不満から、スケジュール管理の見直しや連絡体制の改善が実現できることもあるでしょう。
このように、クレームをきっかけにサービスが改善する可能性があるため、「失敗」ととらえずむしろチャンスだと思うことが大切です。
対応の良し悪しがステーションの評判を左右するから
一件のクレーム対応が口コミで広がり、ステーション全体の評判に大きな影響を与えることがあります。
昨今はSNSや口コミサイトの普及により、良い評判も悪い評判も以前よりずっと速く、広く拡散されるようになりました。
「あそこは苦情を言っても聞き入れてくれない」という評判が立つと、新規の利用者さんの獲得が難しくなるかもしれません。
そのためクレーム対応は迅速で誠実に行い、悪評を広げないことが重要です。
訪問看護の事務員が知っておきたいクレーム対応のポイント
訪問看護の事務員が知っておきたいクレーム対応のポイントは、以下の4つです。
- 相手の話を傾聴する
- 事実確認を徹底する
- 問題の解決策を提示する
- 謝罪と感謝の姿勢を示す
それぞれについて見ていきましょう。
相手の話を傾聴する
クレーム対応の第一歩は、傾聴することです。
途中で遮らずに相手の話を最後まで聴けば、「私の話を聴いてくれている」という安心感を与えられるでしょう。
また、「〇〇の件でご不快な思いをさせてしまったのですね」「そうだったのですね」など相づちを打ったり、「〇〇ということでしょうか」と復唱したりして、「聴いている」というメッセージを伝えることが大切です。
事実確認を徹底する
クレームの内容を正確に把握するためには以下の「5W1H」による事実確認が不可欠です。
- いつ(When)
- どこで(Where)
- 誰が(Who)
- 何を(What)
- なぜ(Why)
- どのように(How)
「先日、看護師の態度が悪かった」という曖昧な表現から、5W1Hを基本に事実確認をすると、以下のようになります。
「〇月〇日の午前10時頃、利用者A様の寝室にて、B看護師が血圧測定の際に『なぜ今日の血圧は高いのでしょうか?』という質問に答えてくれなかった」
このように、聞きとりの際は自分の思い込みや憶測で判断せず、客観的な事実を集めることを心がけましょう。
メモをとりながら話を整理すると、後で看護師に報告する際にも正確に伝えられます。
問題の解決策を提示する
事実確認ができたら、次は解決策を提示します。
しかし、即答できる問題と看護師や管理者に確認が必要な問題もあるため、見極めが大切です。
「請求書の見方について説明してほしい」といった事務的な内容なら、その場で対応できるでしょう。
一方、「看護師の訪問内容を変更してほしい」といった要望は、専門職への確認が必要です。
そのため提示する解決策によって、「いつまでに」「どのように」対応するかを明確に伝えましょう。
「〇〇について、明日の朝9時までに担当看護師に確認して、ご連絡いたします」といったように、具体的に伝えます。
謝罪と感謝の姿勢を示す
さいごに、あらためて謝罪と感謝の姿勢を示しましょう。
- 「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした」
- 「また、今回お問い合わせをいただき誠にありがとうございました」
謝罪と感謝を組み合わせることで、「この事業所は誠実に対応してくれる」という印象を与え、信頼関係の構築につながります。
また、クレーム対応後に「その後いかがですか?」と確認の連絡をしておくと、さらに信頼度が高まるでしょう。
訪問看護のクレームを未然に防ぐ方法
クレームへの適切な対応も大切ですが、未然に防げるのが理想です。
訪問看護においてクレームを防ぐ方法は、以下の3つです。
- 利用開始時には丁寧にオリエンテーションする
- 請求書の内容をわかりやすく説明する
- 過去のクレーム事例を教訓にする
順番に解説します。
利用開始時には丁寧にオリエンテーションする
利用開始時に丁寧なオリエンテーションをしておくと、後々のクレームを大幅に減らせます。
サービス内容を明確に説明し、「できること」と「できないこと」を示せば、期待値と現実とのギャップを埋められます。
たとえば、以下のように伝えると良いでしょう。
「訪問看護では医療処置や健康管理は行いますが、掃除や買い物などの生活援助は行えません」
また、利用開始時によくある質問や不安に対する回答をまとめた資料を用意しておくと、スムーズに説明できます。
請求書の内容をわかりやすく説明する
請求に関するトラブルを防ぐには、請求書の内容をわかりやすく説明しましょう。
特に訪問看護の複雑な保険制度や自己負担額は、図や「1割負担で約〇〇円」といった具体例で示すのがおすすめです。
また、請求書には各項目の説明をつけて「いつでも質問してください」と伝えると、利用者さんの不安が和らぐでしょう。
もし追加の処置やサービスなどによって料金が変わる場合は、必ず事前に説明し同意を得てください。
「〇〇により約△△円変わります」と具体的に伝えると良いでしょう。
過去のクレーム事例を教訓にする
過去のクレームを分析してパターンや傾向を把握しておけば、同じような失敗を繰り返さずに済みます。
事例をスタッフ間で共有し、「なぜ問題が起きたのか」「どう防げるのか」を話し合う機会を設け、対策をとることでクレームの再発を防ぎます。
たとえば「訪問時間の遅れに関するクレームが多い」という傾向であれば、訪問スケジュールの見直しや連絡体制の強化などの対策が考えられます。
まとめ
今回は、訪問看護ステーションの事務員として知っておきたいクレーム対応のポイントについて解説しました。
クレーム対応は憂鬱だと感じる方も多いと思いますが、「成長のチャンス」でもあります。
日々誠実に対応していれば、サービスの質が向上し、ステーションの評判も良くなるでしょう。
また、事務員としてのスキルアップややりがいにもつながりますので、ぜひ本記事を参考にクレーム対応に臨んでみてください。