- 「訪問看護のスケジュール管理をエクセルでやるメリット・デメリットは?」
- 「エクセル管理のポイントを知りたい」
このような悩みを抱えている事務職員の方もいるのではないでしょうか。
スケジュール管理に専用システムを導入する場合、費用が負担となるため手元のエクセルで何とかやりくりしている事業所もあります。
エクセルは無料のツールではあるものの、メリットとデメリットをしっかりと把握しておかないと、スケジュール管理で使いこなすのは難しいかもしれません。
そこで本記事では、訪問看護のスケジュール管理をエクセルで行うメリット・デメリットを解説したうえで、運用のポイントも解説します。
目次
訪問看護のスケジュール管理をエクセルで行うメリット
訪問看護のスケジュール管理をエクセルで行うメリットには、以下の3つがあります。
- 無料で導入できる
- 自事業所に合わせて自由にカスタマイズできる
- 紙や口頭よりも正確に情報共有できる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
無料で導入できる
エクセルは新たな費用をかけずに導入できます。
ほとんどの事業所のパソコンにはすでにインストールされているため、新たな契約や高額なソフト購入の必要がありません。
基本的な操作方法を覚えれば、特別な専門知識がなくても十分に活用できるのも大きな魅力といえるでしょう。
特に小規模な訪問看護ステーションにとっては、専用ソフトの導入費用や月額利用料が大きな負担となることがあります。
エクセルなら初期費用も月額費用もかからないため、経済的な負担を抑えてスケジュールが管理できます。
自事業所に合わせて自由にカスタマイズできる
エクセルなら自分たちの運用に合わせて、自由に機能を変更できます。
たとえば、関数を使って訪問時間の自動計算や重複チェックを設定したり、条件付き書式で曜日ごとに色分けしたりすることも可能です。
利用者さんごとの特記事項や注意点を記録するための備考欄を設けることもできますし、職種別(看護師・PT・OTなど)の区分けも自由自在です。
このように、ステーション独自の運用ルールや管理方法に合わせて、細かく調整できることがエクセルの大きな強みといえるでしょう。
紙や口頭よりも正確に情報共有できる
紙のスケジュール表や口頭での伝達と比べて、情報共有がしやすいといえます。
スケジュールの変更があった場合に、紙の表では書き直しや修正テープで対応する必要がありますが、エクセルならすぐに修正して再共有できます。
さらに変更履歴を残せるため、「いつ、誰が、どのような変更をしたか」の記録も可能です。
訪問看護のスケジュール管理をエクセルで行うデメリットと注意点
エクセルを使ったスケジュール管理のデメリットは以下のとおりです。
- 属人化しやすく引き継ぎが難しい
- 事業所内でしか閲覧できない
- 関数ミス・入力ミスがそのまま反映されてしまう
それぞれについて解説します。
属人化しやすく引き継ぎが難しい
ファイルの作成者や管理者に依存しがちな点はデメリットといえます。
関数の設定や入力ルールなどは、作った本人にしかわからないことが多いものです。
- 「このセルには必ず○○と入力する」
- 「この関数は△△のために設定している」
このような暗黙のルールが存在することがあります。
作成者が休みや退職でいなくなった場合、他のスタッフが同じように操作できず、業務が滞る原因となるでしょう。
また、複雑な関数を駆使して作られたファイルは初心者には扱いづらく、引き継ぎにも時間がかかります。
このような属人化のリスクを防ぐためには、操作マニュアルの作成や定期的な研修、複数人での管理体制の構築などが必要でしょう。
事業所内でしか閲覧できない
エクセルファイルは基本的に特定のパソコンに保存されるため、事務所内でしか閲覧・編集できません。
そのため、看護師が訪問中にスケジュール変更があった場合、事務所に戻るまで最新情報を確認できない問題があります。
そのため、クラウドサービス(GoogleスプレッドシートやMicrosoft 365など)と比較すると、使い勝手の悪さを感じる方もいるでしょう。
関数ミス・入力ミスがそのまま反映されてしまう
操作ミスがあっても気づかないリスクがあります。
- 誤って重要なセルや関数を削除してしまった
- 日付や時間を間違えて入力してしまった
このようなミスにより、スケジュール全体に影響が出るかもしれません。
セルの保護機能を設定していなければ誰でも自由に編集できてしまうため、意図しない変更が加えられるリスクがあります。
また、関数の設定が複雑すぎると小さなミスが計算エラーを引き起こし、それが気づかれないまま運用されることもあります。
このようなリスクを減らすためには、定期的なバックアップ、重要なセルの保護設定、入力規則の活用などが効果的です。
訪問看護のスケジュール管理をエクセルで行う際のポイント
エクセルでスケジュール管理を効果的に行うためには、以下の3つのポイントを押さえましょう。
- スケジュール管理の目的を整理する
- 関数や条件付き書式などで工夫する
- 不要な要素を削ぎ落とす
それぞれについて解説します。
スケジュール管理の目的を整理する
エクセルでスケジュール表を作成する前に、まず「何のために作るのか」を明確にしましょう。
- 訪問看護師の移動効率を上げたい
- 訪問忘れや訪問先の間違いを減らしたい
- 管理者のスケジュール作成業務の負担を減らしたい
このように目的はさまざまです。
目的が違えば、作るべきスケジュール表の形も変わってきます。
- 週単位の表がよいのか
- 月単位の表が適しているのか
- 訪問者(看護師)別に作るべきか
- 利用者さん別に作るべきか
といったように、形式も目的に合わせて決定する必要があります。
たとえば看護師の負担を減らすことが目的なら、一日の訪問順に沿った時系列のスケジュールが適しているでしょう。
一方、事務職員が全体を把握するためなら、カレンダー形式で月単位の予定が一目でわかる表が役立ちます。
このように、スケジュール表の目的を明確にし、必要な情報と形式を決めましょう。
関数や条件付き書式などで工夫する
エクセルの強みを活かすなら、関数や条件付き書式の活用がおすすめです。
たとえば、以下のような工夫が考えられます。
重複チェック機能をつける
COUNTIF関数を使って、同じ時間帯に同じ看護師が重複して訪問予定になっていないかをチェックする。
重複があれば自動的にセルの色が変わるように条件付き書式を設定する。
視認性を向上させる
曜日ごとに色を分けたり(土日は青、平日は白など)、条件付き書式で「午前/午後」、「予定/実績」の色分けをしたり、祝日を赤色で強調表示したりする。
このような機能を組み込むことで、使い勝手が格段によくなります。
ただし、あまりに複雑な関数設定は引き継ぎが難しくなるため、基本的なものにとどめておきましょう。
不要な要素を削ぎ落とす
本当に必要な情報だけを厳選し、余計な要素を削ぎ落とすことが重要です。
情報を詰め込みすぎると見づらくなり、重要な予定を見落とす原因になってしまいます。
たとえば訪問時間と利用者名が最も重要なら、その情報が一目でわかるように大きなセルで表示し、詳細情報は別シートに移すなどの工夫が効果的です。
不要な装飾や複雑な罫線、使用頻度の低い情報欄などは思い切って削除し、視線の流れを妨げないシンプルなデザインを目指しましょう。
具体的には、次のような点に注意します。
- 使用頻度の低い情報(詳細な住所など)は別シートや備考欄に移動させる
- 同じ情報を複数箇所に記載することを避ける
- 過度な色分けやフォントの使い分けを控え、必要最小限にとどめる
シンプルであるほどミスも少なく、引き継ぎも容易になるということを忘れないでください。
実務でよくあるトラブルとエクセルでの対処法
訪問看護のスケジュール管理でよく発生するトラブルとその対処法を紹介します。
- 急なキャンセルや変更に対応できない
- 誰かに引き継げない・属人化してしまう
- 端末に保存している場合ステーション内でしか閲覧できない
これらの問題を解決するための方法を見ていきましょう。
急なキャンセルや変更に対応できない
訪問看護の現場では、利用者さんの体調変化や急な入院などにより、予定が変更することは多々あります。
エクセルでのスケジュール管理では変更点が目立たず、古い情報のまま訪問してしまうといったミスが起こりがちです。
そのため、以下のように対応しましょう。
- 変更があったセルは赤字や太字、背景色を変えるなど視覚的に目立たせる
- 取り消し線を使って元の予定を残しつつ変更内容を追記する
- 変更内容をコメント機能で付記する
これらの工夫により、スタッフ全員が最新の情報を確認できるようになります。
特に重要なのは、変更があった場合の連絡ルールを明確にしておくことです。
- スケジュール変更は必ず口頭とメールの両方で伝える
- 変更後は必ず新しい表を印刷して掲示する
こういったルールを決めておくとよいでしょう。
誰かに引き継げない・属人化してしまう
エクセルのスケジュール表が属人化してしまうと、担当者が休みや退職の場合に業務が滞ってしまうリスクがあるため、以下のような対策を行いましょう。
- ファイル名や保存場所、更新頻度などの基本ルールを明文化する
- 入力方法や関数の説明を簡潔にまとめたマニュアルを作成する
- スクリーンショットなどを活用して視覚的にわかりやすく解説する
- 使いやすいようにシンプルなテンプレートを用意する
- 入力例を別シートに用意して参照できるようにする
- 複雑な関数は極力避け、基本的な機能だけで動くように設計する
- 常に2人以上が操作方法を把握している状態にする
上記の対策により、「このファイル、○○さんしか使えない」という状況を避けられるでしょう。
特に小規模なステーションでは急な人員不足が大きな問題となる場合もあるため、引き継ぎやすいシステム作りが重要です。
端末に保存している場合ステーション内でしか閲覧できない
従来のエクセルファイルは、特定のパソコンに保存する形式のため、ステーション外からのアクセスが難しいという問題があります。
そのため、看護師が訪問先でスケジュールを確認したり、急な変更を反映したりできません。
解決策としては、以下が考えられます。
- クラウドサービスを活用する:Googleスプレッドシート、DropboxやGoogleドライブなどのファイル共有サービス
- 画像として活用する:PDF化や画像化したデータを看護師のスマートフォンに保存する
ただしこれらの方法は、利用者の個人情報を含むデータを通信可能な端末に保存して持ち歩くため、セキュリティ設定を徹底しましょう。
まとめ
訪問看護ステーションのスケジュール管理は、エクセルでも十分にできます。
無料で使えて自由度が高いという大きなメリットがある一方で、属人化やミスのリスクには注意が必要です。
重要なのは、ステーションの体制や規模に応じて、無理のない運用方法を見つけることです。
完璧なシステムを目指すのではなく、日々の業務を少しでも楽にするためのツールとして、活用していきましょう。
ビジケア訪問看護事務マガジン
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