- 「レセプト代行とは何?」
- 「毎月のレセプト業務が負担なので、何とかしたい」
このような悩みにお答えします。
小規模な訪問看護ステーションでは、管理者がレセプト業務を行っているという事業所も少なくはありません。
事務員を一人雇用するにも人件費がかかるため、管理者が担っているのが現状です。
そこで今回は、訪問看護ステーションの運営に役立つ「レセプト代行サービス」について解説します。
煩雑なレセプト業務は外部に委託し、自事業所でやるべきことに専念したいと考えている訪問看護ステーションの管理者は、ぜひ参考にしてください。
目次
レセプト代行とは?
レセプト代行とは、訪問看護ステーションや医療機関、介護事業所などが行うレセプト業務を外部の専門業者に委託するサービスです。
業務の効率化や請求ミスの削減を実現できる方法として、近年注目されています。
訪問看護ステーションがレセプト代行を利用すると、診療報酬請求や介護給付費請求における書類作成・点検・提出などの煩雑な業務を専門家に任せられます。
レセプト代行サービスの特徴について、以下の点を見ていきましょう。
- レセプト代行サービスでできること
- レセプト代行と事業所内処理の違い
それぞれ解説します。
レセプト代行サービスでできること
レセプト代行サービスでは、以下のとおり医療・介護保険請求に関わる幅広い業務を委託可能です。
- レセプトの作成・点検・提出
- 保険証や指示書の有効期間チェック
- 入金処理
- 領収書の発行管理など
毎月の請求業務で最も時間がかかる部分を専門家が任ってくれ、正確さと効率性を兼ねられます。
さらに必要に応じて、レセプトデータを分析して経営改善の提案を行ってくれるレセプト代行業者もあります。
請求データから利用者の傾向や収益性の高いサービスなどを分析し、経営戦略に活かせる情報の提供も可能です。
また、最新の診療報酬・介護報酬改定情報の提供と対応もしてくれる点も大きな魅力でしょう。
レセプト代行と事業所内処理の違い
訪問看護ステーションでレセプト業務を行う際には、「事業所内処理」と「レセプト代行」という2つの選択肢があります。
どちらを選ぶかは事業所の規模や状況によって異なりますが、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
両者の主な違いを項目別に比較しましたので、参考にしてください。
項目 | 事業所内処理 | レセプト代行 |
---|
運用方法 | 自社スタッフが全て内部で完結させる | 外部の専門業者に外注する |
情報管理 | 機密性が高い 必要な時にすぐ確認・修正ができる | 業者へのデータ提供を必要とする 機密情報も公開する必要がある |
人的リソース | 専門知識をもつ事務スタッフの確保・育成が必要になる | 専門スタッフの確保は不要で、人材育成の負担もない |
初期コスト | 高い(レセプトソフトの導入費用) | 低い(契約料のみで導入可能) |
ランニングコスト | 人件費が固定費として発生 教育コストも継続的に必要 | 業務量に応じた変動費として管理できる 社会保険料や福利厚生費の負担がない |
専門性 | 内部育成のため専門性に限界がある | 業務の専門性と効率性が高い 専門家による正確な請求ができる |
制度改定への対応 | 継続的な学習が必要 知識の習得に遅れが生じる場合がある | 最新の制度に対応しやすい 専門知識を習得する負担が少ない |
リスク管理 | 担当者の休職や退職によるリスクがある | 安定したサービス提供ができる 人材リスクが少ない |
長期的な視点 | 内製化によるコスト削減の可能性がある | 事業規模の変動に柔軟に対応できる |
上記のように、事業所内処理とレセプト代行ではそれぞれ特徴が異なります。
自事業所の状況や優先すべき項目を考慮し、より適した選択をしましょう。
訪問看護ステーションのレセプト業務の特徴と課題
訪問看護ステーションのレセプト業務における主な課題は、次の4つが挙げられます。
- 医療保険と介護保険があり複雑である
- 返戻・査定のリスクや収益へ影響がある
- 管理者がレセプト業務を担う場合が多い
- 制度の学習が負担に感じる
それぞれについて見ていきましょう。
医療保険と介護保険があり複雑である
訪問看護ステーションのレセプト業務が複雑なのは、医療保険と介護保険の両方を取り扱うからです。
利用者さんごとに適用される保険種別が異なるため、同じ訪問看護サービスを提供していても、異なる報酬体系での請求が必要になります。
両者では請求する基本報酬と加算が異なり、それぞれにルールが存在します。
さらに、利用者さんの状態変化によっては、同一月内で保険種別が変更(医療保険から介護保険へ、またはその逆)になるケースもあり、そのような場合は扱いがより複雑になるのです。
返戻・査定のリスクや収益へ影響がある
訪問看護ステーションにとって、返戻や査定は収益に直結する大きな問題です。
記載ミスや算定の誤りによるレセプトの返戻・査定は、請求したはずの報酬が当初のスケジュールどおりに受け取れないことを意味し、事業所の収益に影響を及ぼします。
返戻されたレセプトは修正・再請求する必要がありますが、その間の入金が遅れるため、特に小規模な事業所ではその影響は大きいと考えられます。
月々の収入が安定しないと、スタッフへの給与の支払いや運営資金の確保に支障をきたすこともあるでしょう。
さらに、継続的に返戻や査定が発生すると、審査機関からの信頼低下にもつながりかねません。
長期的に事業を運営していくうえで、大きなリスク要因となるでしょう。
管理者がレセプト業務を担う場合が多い
小規模な訪問看護ステーションでは、管理者自身がレセプト業務も兼任せざるを得ないケースがあります。
本来であれば利用者さんへのケアの質向上や、事業所の管理運営に専念すべき管理者が、レセプト業務も担当することになるため、過度な業務負担が生じてしまいます。
通常業務だけでも多忙な中、レセプト業務までこなすことで、勤務時間内に処理しきれないことも場合もあり、残業や休日出勤を余儀なくされるケースもあるでしょう。
管理者の負担が増えると、職場全体の雰囲気やサービス品質にも影響を与える可能性があり、スタッフのモチベーション低下や離職率の上昇にも注意が必要となります。
人件費を削減する観点から、レセプト専任の事務員を雇用できない現状もあり、管理者の業務過多による生産性低下や品質低下のリスクも生じます。
制度の学習が負担に感じる
診療報酬は2年ごと、介護報酬は3年ごとに改定されるため、正確にレセプト業務を行うには常に最新情報を学ぶ必要があり、その負担は決して小さくありません。
複雑な算定のルールや加算要件の理解には専門的な知識が必要とされ、頭を悩まされることが多い現状があります。
本来であれば、訪問看護師としての専門性や利用者さんのケアの質向上に時間を使いたいところ、請求事務の知識習得に貴重な時間をとられてしまいます。
レセプト代行を訪問看護ステーションに導入するメリット
訪問看護ステーションにレセプト代行サービスを導入する主なメリットは、次の4つが挙げられます。
- 正確なレセプト請求ができる
- 経営が安定する
- レセプト以外の業務に専念できる
- 事務員の人件費を削減できる
それぞれについて見ていきましょう。
正確なレセプト請求ができる
レセプト代行サービスのメリットのひとつは、専門のスタッフが正確に請求業務をしてくれるため、以下が実現できます。
- 記載ミスや算定の誤りが減る
- 算定の可否を正確に判断し、算定漏れを防げる
- 返戻や査定のリスクが減る
ほかにも最新の診療報酬・介護報酬改定に迅速に対応してくれるため、情報をいち早くキャッチし、必要な情報をピンポイントで提供してもらえます。
経営が安定する
返戻・査定が減少すれば予定どおりの入金が見込め、キャッシュフローが安定します。
入金が遅れると運営資金の確保に苦労する場合がありますが、正確な請求によって資金繰りの心配が減ります。
算定漏れが防止できれば、本来請求できるはずの報酬も確実に得られるため、収益アップにもつながるでしょう。
安定して収益が確保できると月々の収入予測が立ちやすくなるだけでなく、人員配置や設備投資なども、中長期的な視点で考えられるようになります。
さらに、経営データの分析により収益改善のアドバイスが得られる場合もあります。
- どのような利用者層が多いか
- どの加算を取得していくべきか
こういった分析結果をもとに、経営戦略の立案にも役立てられるでしょう。
レセプト以外の業務に専念できる
管理者がレセプト業務から解放されると、本来の業務に集中できるようになります。
- スタッフへの教育や研修
- シフト調整、勤怠管理、人事評価
- 利用者さんへの対応
- 他職種との連携
- 苦情対応や契約の手続き
こういった管理者が担うべき本来の業務に専念できるようになり、組織全体の機能向上につながるでしょう。
事務員の人件費を削減できる
レセプト専任の事務員を雇用するよりも低コストで、専門的な業務を外注できます。
正社員として事務員を雇用する場合、給与に加えて社会保険料や福利厚生費などの固定費負担が発生します。
一方で代行サービスであれば、純粋にサービス料金のみの支出で済むのです。
訪問看護ステーションの規模に合わせて業務量に応じた料金体系を選べるため、小規模事業所でも無理なく導入しやすいでしょう。
まとめ
今回は、訪問看護ステーションの運営に役立つサービスとして、レセプト代行について解説しました。
レセプト代行サービスの概要は以下のとおりです。
- レセプト代行サービスでは、複雑な請求業務を外部の代行サービスに依頼できる
- 管理者が請求業務を行っている事業所では、負担を大きく減らせる
- 請求が正確になり、資金繰りが安定する
- 管理者が請求以外の業務に専念できる
自事業所の状況や管理者の負担感に応じて、レセプト代行サービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。