「返戻通知が届いたけれど、何をどう直せばいいの?」「査定と返戻って、同じもの?」──訪問看護ステーションの事務を担当していると、月末月初の請求業務のたびにこうした不安に直面する方は多いのではないでしょうか。とくに介護保険と医療保険の両方を扱う訪問看護では、同じ「差し戻し」でも呼び方や対応期限が制度によって異なり、混同したまま社内マニュアルを作ってしまっているケースも見受けられます。
本記事では、レセプトの「返戻」「過誤」「査定」の意味の違いを制度ごとに整理したうえで、再請求の期限は介護保険が2年・医療保険が5年という、見落とされがちなポイントを一次情報とあわせて解説します。返戻を未然に防ぐコツや、通知を受け取ったときの具体的な対応手順まで、この記事を読めば迷わず動けるようになります。
この記事でわかること
- 「返戻」「過誤」「査定」の意味と、介護保険・医療保険での呼び方の違い
- レセプトの提出期限(毎月10日)と、審査〜通知までの流れ
- 再請求(消滅時効)の期限は保険制度によって異なる点(介護保険2年・医療保険5年)
- 返戻される主な原因と、日常業務での防ぎ方
- 返戻・過誤の通知を受け取ったときの具体的な対応手順
目次
レセプトの「返戻」「再請求」とは?基本をおさらい
そもそも「返戻」ってどういう意味なんですか? 審査で落ちた、ということでしょうか……。
「落ちた」というより「いったん差し戻された」とイメージするといいですよ。国保連や支払基金が審査した結果、記載内容に不備が見つかったレセプトを、修正してもう一度出してもらうために事業所へ戻す手続きのことです。
返戻とは、国民健康保険団体連合会(国保連)や社会保険診療報酬支払基金が毎月のレセプト審査を行った際に、記載内容の不備や算定要件の未達などが見つかったレセプトを事業所へ差し戻す手続きです。再請求は、その返戻理由を確認し、必要な修正・資料の追加を行ったうえで、あらためて審査機関へ提出し直すことを指します。返戻は「支払いを拒否された」わけではなく、「正しい内容で出し直せば支払われる」段階であるため、放置せず速やかに対応することが重要です。
「返戻」「過誤」「査定」の違い|介護保険と医療保険で呼び方が違う
訪問看護は介護保険・医療保険のどちらでも提供されるため、請求業務も両方の制度をまたぎます。ところが、「返戻」「過誤」「査定」という言葉の使われ方は、介護保険と医療保険で異なります。ここを混同すると、後述する再請求の期限を見誤る原因にもなるため、まず制度ごとに整理しておきましょう。
| 制度 | 差し戻しの種類 | 内容 |
| 介護保険 | 返戻 | 審査確定前に不備が見つかり差し戻される。修正のうえ再請求すれば足りる |
| 介護保険 | 過誤(過誤申立) | 支払い確定後に誤りが判明し、いったん取り下げてから正しい内容で再請求する |
| 介護保険 | 保留 | 居宅介護支援事業所の給付管理票未提出など、事業所側以外の事情で支払いが保留される |
| 医療保険 | 返戻 | 記載内容の不備等により差し戻される。修正して再請求できる |
| 医療保険 | 査定 | 審査支払機関の審査により減点・減額される。原則は再請求ではなく再審査請求で対応する |
注意
介護保険の請求では、本来「査定」という言葉は使いません。医療保険の「査定(減点)」と、介護保険の「返戻・過誤・保留」を混同したまま案内している情報も見られるため、自事業所の請求フローが今どちらの制度の話をしているか、通知を受け取るたびに確認する習慣をつけておくと安心です。
レセプトの提出〜審査・通知までの流れ
そもそもレセプトって、いつまでに出せばいいんでしたっけ?
毎月10日が基本です。前月にサービス提供した分を、翌月1日から10日までの間に国保連や支払基金へ提出します。10日を過ぎると、その月の審査には間に合わず翌月扱いになってしまうので注意してくださいね。
- レセプト提出(毎月10日まで)前月にサービス提供した分をレセコンで作成し、国保連(介護保険)または社会保険診療報酬支払基金・国保連(医療保険)へ提出します。
- 審査提出されたレセプトの記載内容・算定要件・資格情報などが審査機関で審査されます。
- 通知不備があれば、介護保険は「返戻」「過誤」「保留」、医療保険は「返戻」「査定」として通知が届きます。問題がなければそのまま支払いが確定します。
- 修正・再請求通知内容を確認し、必要な修正や資料の追加を行ったうえで、レセコンから再請求します。
POINT
提出期限の10日は必着です。土日祝の関係で受付期間が前後する場合があるため、各都道府県の国保連・支払基金が公表する受付日程表を毎月確認しておくと安心です。
返戻される主な原因とその防ぎ方
- 資格喪失後の請求:利用者の保険資格が喪失・変更されているのに気づかず請求してしまう
- 記載事項の誤り:氏名・生年月日・保険者番号・被保険者番号などの入力ミス
- 算定要件の未達:加算の算定に必要な指示書・計画書・報告書などが要件を満たしていない
- 重複請求:同一利用者・同一サービスで二重に請求してしまう
- 傷病名とサービス内容の不整合:訪問看護指示書の傷病名と、実際に提供したサービス内容が対応していない
これらの多くは、事業所側の確認体制で防げるものです。請求前に利用者の保険資格情報を毎月確認する、指示書の有効期限と傷病名を突き合わせるといった基本のチェックを、請求担当者だけでなく看護師とも共有できる体制を作ることが、返戻を減らす一番の近道です。
注意
レセコンの自動チェック機能はあくまで補助です。傷病名とサービス内容の整合性など、システムでは検知しづらい不整合は、最終的に人の目での確認が欠かせません。
再請求の期限はいつまで?介護保険は2年、医療保険は5年
「再請求の期限は5年」という説明を見かけることがありますが、これは医療保険レセプトの消滅時効についての話であり、介護保険の訪問看護費は時効の年数が異なります。制度ごとの根拠は次のとおりです。
| 制度 | 請求権の消滅時効 | 根拠 |
| 介護保険(介護報酬) | 2年 | 介護保険法第200条第1項 |
| 医療保険(診療報酬) | 原則5年(令和2年4月診療分から。それ以前は3年) | 民法改正(令和2年4月1日施行)にともなう取り扱いの変更 |
POINT
訪問看護ステーションは介護保険と医療保険の両方を請求することが多いため、返戻・過誤の通知が来たら「どちらの制度のレセプトか」を必ず確認したうえで期限を管理してください。介護保険分を医療保険と同じ「5年」だと思い込んで対応を後回しにすると、消滅時効の成立により再請求できなくなるおそれがあります。
うちは介護保険と医療保険の両方の利用者さんがいるので、まとめて「5年で大丈夫」って覚えていました……。
それは危ないですね。介護保険分は2年で時効になってしまうので、返戻・過誤の通知が来たら制度ごとに期限を分けて管理して、できるだけ早く対応するようにしましょう。
返戻・過誤を受け取ったときの対応手順
- 通知内容の確認返戻・過誤・査定のどれに該当するか、理由コードとあわせて確認します。
- 原因の特定資格情報・記載内容・算定要件など、どこに不備があったかを利用者記録や指示書と突き合わせます。
- 修正・資料準備必要な修正を行い、加算などの根拠資料が必要な場合はあわせて準備します。
- レセコンで再請求データを作成介護保険の過誤の場合は取り下げ処理を行ったうえで、正しい内容で再請求データを作成します。
- 提出・結果確認翌月以降の提出期限(毎月10日)にあわせて再請求し、審査結果を確認します。
「返戻」と「査定」はどう違いますか?
介護保険では審査確定前の差し戻しを「返戻」、支払確定後の誤りを「過誤」、居宅介護支援事業所側の書類未提出等による保留を「保留」と呼びます。一方、医療保険では記載不備による差し戻しを「返戻」、審査による減点・減額を「査定」と呼びます。「査定」は医療保険特有の用語で、介護保険の請求では基本的に使いません。
再請求の期限を過ぎるとどうなりますか?
消滅時効が成立すると、原則としてその分の介護報酬・診療報酬を請求する権利がなくなり、再請求はできなくなります。介護保険は2年、医療保険は令和2年4月診療分から原則5年が消滅時効の期間です。
訪問看護は介護保険と医療保険の両方を請求しますが、期限はどう管理すればいいですか?
レセプトが介護保険分か医療保険分かをまず区別したうえで、それぞれの消滅時効(介護保険2年・医療保険5年)を基準に管理します。両方の制度の利用者を担当している場合は、制度ごとに一覧化しておくと期限管理がしやすくなります。
返戻を防ぐために日常的にできることはありますか?
毎月の請求前に利用者の保険資格情報を確認すること、訪問看護指示書の有効期限や傷病名とサービス内容が対応しているかを確認すること、加算算定に必要な書類がそろっているかをチェックすることが基本です。看護師と事務担当者で確認項目を共有しておくと、記載ミスや算定要件の未達を防ぎやすくなります。
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まとめ|返戻・再請求は「介護保険か医療保険か」を区別して対応する
訪問看護のレセプト返戻・再請求は、介護保険と医療保険で使われる用語も、再請求の期限も異なります。通知を受け取って慌てる前に、まず「どちらの制度の話か」を区別することから始めましょう。
この記事のまとめ
- 介護保険は「返戻・過誤・保留」、医療保険は「返戻・査定」と呼び方が異なる
- 再請求(消滅時効)の期限は介護保険が2年、医療保険が原則5年(令和2年4月診療分から)
- 提出期限は毎月10日。返戻を防ぐには資格確認・指示書の突合・算定要件チェックが基本
- 通知を受け取ったら放置せず、原因特定→修正→再請求のステップですぐに対応する
制度ごとの違いを正しく理解しておけば、返戻・再請求の対応もスムーズになり、事業所の資金繰りの安定にもつながります。
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