「今月もまた返戻が来た……」レセプトを提出したあとにこの通知を見つけると、ため息が出てしまう事務担当者は多いのではないでしょうか。返戻は再請求の手間だけでなく、事業所の入金サイクルにも影響します。
返戻は原因を知り、事業所としてチェックの仕組みを整えることで確実に減らせます。この記事では、訪問看護のレセプトでよくある返戻の原因4つと、今日から実践できる防止策4つを、事務担当者の視点で具体的に解説します。
この記事でわかること
- 訪問看護レセプトの返戻でよくある4つの原因
- 加算の算定要件・保険種別の判断ミスが起きやすいポイント
- 返戻を防ぐためのチェック体制・事業所内での取り組み方
- 返戻が続く場合に見直すべき業務フロー
目次
訪問看護でありがちな返戻の原因4つ
返戻は「レセプトの記載内容に不備・疑義があり、審査支払機関から事業所に差し戻される」ことを指します。まずは、現場でよく起こる4つの原因を見ていきましょう。
算定要件を満たしていない加算の請求
特別管理加算・緊急時訪問看護加算といった加算には、それぞれ算定要件(届出の有無、対象となる利用者の状態、算定できる期間や回数の上限等)が細かく定められています。要件を満たしていない状態で加算を請求してしまうと、返戻の対象となります。訪問看護では医療保険・介護保険の両方に類似の名称を持つ加算が存在することもあり、同一の内容で二重に算定してしまうようなミスも起こりやすいポイントです。
適用となる保険種別の間違い
訪問看護は原則として介護保険が優先されますが、厚生労働大臣が定める疾病等(いわゆる別表第七)に該当する利用者については、年齢や要介護認定の有無にかかわらず医療保険が優先されます。この判断を誤り、本来は医療保険で請求すべきものを介護保険で、あるいはその逆で請求してしまうと返戻の原因になります。
介護保険と医療保険、どちらで請求すべきかいつも迷ってしまいます……。何を見て判断すればいいんですか?
まずは訪問看護指示書に記載されている傷病名・状態を確認することです。別表第七・第八に該当する記載があるかどうかで、優先される保険が変わります。判断に迷ったら、看護師や管理者にも必ず確認してくださいね。
負担割合証や保険証の確認が不十分
介護保険証・医療保険証に加え、後期高齢者医療の負担割合証や公費負担の受給者証を複数持っている利用者も少なくありません。有効期限切れや負担割合の変更(1割→2割・3割など)に気づかないまま請求してしまうと、返戻につながります。特に月初・年度初め・利用者の誕生月(介護保険の負担割合証の切り替えが起こりやすい時期)は注意が必要です。
記録と請求内容の不一致
訪問看護記録書・訪問看護報告書の記載内容と、レセプトに記載した訪問日・訪問時間・実施内容が食い違っていると、審査の過程で疑義が生じ返戻の対象となります。訪問看護計画書等の記載要領では、実施した看護・リハビリテーションの内容を報告書に具体的に記入することが求められており、この記録とレセプトの整合性が取れているかどうかは、審査支払機関がチェックするポイントの一つです。
特に起こりやすいのが、看護師が急きょ訪問時間を変更した場合や、予定になかった処置を追加で行った場合に、その変更が記録書には反映されているのにレセプト側の入力に反映されていない、というケースです。看護師からの報告と事務側の入力作業の間にタイムラグがあると、こうした不一致は起こりやすくなります。訪問記録が確定してからレセプトを入力する、という順番を徹底するだけでも、この種の不一致は減らせます。
訪問看護の返戻を防ぐための対策4つ
原因がわかったところで、事業所として実践できる具体的な対策を見ていきましょう。
- 二名以上でのチェック体制をつくる請求担当者一人だけの確認で提出するのではなく、別の職員が加算の算定要件・保険種別・保険証情報をダブルチェックする体制を作りましょう。作成者と確認者を分けるだけでも、見落としは大きく減ります。
- 自事業所の過去の返戻事例を分析する過去に返戻となった事例を一覧化し、原因ごとに分類しておくと、自事業所で特に起こりやすいミスの傾向が見えてきます。同じ原因で繰り返し返戻を受けている場合は、その工程に重点的なチェックを入れましょう。
- 定期的に研修を受ける加算の算定要件は診療報酬・介護報酬改定のたびに見直されます。改定内容を事務員自身が正しく理解しているか、定期的な研修や勉強会で確認する機会を設けましょう。
- 事業所に合った請求ソフトを活用する算定要件のチェック機能やエラー検知機能を持つ請求ソフトを活用することで、人的ミスを減らせます。ソフト任せにするのではなく、エラー表示が出た際に「なぜそのエラーが出たのか」を理解した上で対応することが大切です。
POINT
返戻対応そのものの手続き・期限については、別記事「訪問看護レセプトの返戻・再請求とは?期限や査定との違いを解説」で詳しく解説しています。原因と対策を押さえたら、実際に返戻が来たときの対応もあわせて確認しておきましょう。
全部の対策を一気に導入するのは難しそうです……どこから手をつければいいですか?
まずは「過去の返戻事例を一覧にする」ことから始めるのがおすすめです。自事業所で何が原因になりやすいかがわかれば、限られた時間の中でどこを優先してチェックすべきかが見えてきますよ。
あわせて読んでおきたい関連記事
返戻・再請求の具体的な手続きや期限について、あわせて確認しておくと安心です。
返戻・再請求の手続きを読む
まとめ|返戻は「原因の把握」と「チェック体制」で確実に減らせる
訪問看護レセプトの返戻は、加算の算定要件・保険種別の判断・保険証の確認・記録との整合性という、いずれも事務担当者が日々向き合っているポイントで起こります。原因を正しく理解し、事業所としてのチェック体制を整えることで、返戻の発生は着実に減らせます。
この記事のまとめ
- 返戻の原因は「加算要件」「保険種別」「保険証確認」「記録の不一致」の4つに大別できる
- 別表第七に該当する利用者は年齢・要介護認定にかかわらず医療保険が優先される
- 二名以上のチェック体制と過去事例の分析が、返戻を減らす近道になる
- 請求ソフトのエラー検知機能は「理解した上で使う」ことが大切
今月の返戻が続いているなら、まずは自事業所の過去事例を一覧化するところから始めてみましょう。
次に読むべき関連記事
レセプトの記載要領そのものを見直したい方は、記載要領と請求ミス防止のポイントもあわせてご覧ください。
記載要領と請求ミス防止を読む
よくある質問
返戻と査定はどう違うのですか?
返戻は記載内容の不備・疑義により審査支払機関から事業所に差し戻されるもので、事業所側で内容を確認・修正して再提出します。査定は、記載内容自体は受理された上で、算定内容の一部が減額・不承認とされるものを指し、扱いが異なります。詳しくは別記事「返戻・再請求とは?期限や査定との違いを解説」もご確認ください。
介護保険と医療保険、どちらで請求すべきか迷ったときはどうすればよいですか?
訪問看護指示書に記載されている傷病名・状態が、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第七)に該当するかどうかを確認します。該当する場合は年齢や要介護認定の有無にかかわらず医療保険が優先されます。判断に迷う場合は、看護師や管理者に必ず確認しましょう。
請求ソフトを導入すれば返戻はなくなりますか?
請求ソフトのエラー検知機能は人的ミスを減らす助けになりますが、すべての返戻を防げるわけではありません。エラー表示が出た際に理由を理解した上で対応することや、二名以上でのチェック体制と組み合わせることが重要です。
同じ原因で返戻を繰り返してしまいます。何から見直せばよいですか?
まずは過去の返戻事例を一覧化し、原因ごとに分類してみましょう。自事業所で特に起こりやすいミスの傾向が見えてくるため、その工程に重点的なチェックを入れることで、同じ原因の繰り返しを減らせます。
出典・参考
加算の算定要件・保険種別の判断基準は診療報酬・介護報酬改定により変更されることがあります。実際の請求にあたっては、最新の告示・通知および審査支払機関の案内をご確認ください。