電話対応をしているけど、聞き取れない
訪問看護事務の事務職員としてと働いていて、このような悩みはないでしょうか。
今回は、電話対応時に聞き取れない原因から、失礼にならずに聞き返すための具体的なフレーズを解説します。
電話対応への不安を自信に変え、落ち着いて的確な対応ができるようになりましょう。
目次
なぜ聞き取れない?医療・介護現場における電話対応の5つの原因
電話が聞き取れない状況を改善するためには、まず原因を正しく理解しましょう。
相手側、自分側、そして環境など、複数の要因が複雑に絡み合っています。
ここでは、医療・介護の現場で特に考えられる5つの原因を掘り下げて解説します。
1.【相手側の原因】高齢者特有の話し方や専門職の早口
電話が聞き取れない原因の一つは相手側の話し方にあり、特に医療・介護の現場では特有の課題が存在します。
- 高齢者特有の話し方:加齢による聴力低下や滑舌の変化で、声が小さくなったり、ことばが不明瞭になったりする
- 専門職の早口:医師やケアマネジャーなど、多忙な専門職が要件を端的に伝えようとして、早口で話す場合がある
相手の話し方が原因だと割り切ることも、ときには必要です。
自分のせいだと過度に思い込まず、状況に合わせて聞き返し方を工夫する意識をもちましょう。
2.【自分側の原因】緊張や「聞き返せない」というプレッシャー
自分自身の心理状態も、聞き取り能力に大きく影響します。
- 「聞き返したら失礼だ」
- 「新人なのに何度も聞き返すのは申し訳ない」
といった、「聞き返してはいけない」強いプレッシャーが、あなたの耳を塞いでしまうことがあります。
この思い込みは、焦りや緊張を生み出すことも。
相手の話の内容よりも「聞き取らなきゃ」という気持ちばかりが先行し、かえって集中力が散漫になってしまうのです。
まずは「正確に聞くためには、確認(聞き返し)が不可欠な業務である」と認識を改めましょう。
3.【環境的な原因】電話機の性能や事業所内の騒音
意外と見落としがちなのが、物理的な環境要因です。
あなたの能力とは関係なく、聞き取りにくい状況が作られている可能性があります。
- 電話機の性能:長年使用している電話機は、スピーカーの音質が劣化している場合がある
- 電波状況:コードレス電話機や携帯電話の場合、電波が不安定だと音声が途切れ途切れになる
- 事業所内の騒音:他のスタッフの話し声、コピー機の作動音、外の騒音など、周囲の音も聞き取りの妨げになる
もし特定の場所や電話機で聞き取りにくいと感じる場合は、ハードウェアの問題を疑ってみましょう。
ヘッドセットの導入を検討するなど、環境改善を上司に相談してみるのも一つの手です。
4.【スキル不足の原因】メモを取るのに必死で内容が頭に入らない
電話対応ではメモを取ることが基本ですが、その行為自体が聞き取りを妨げているケースもあります。
特に新人の頃は、一言一句すべてを書き留めようとしてしまいがちです。
しかし「書く」という作業に集中しすぎると、「聞く」という意識がおろそかになります。
手がメモを追いかけるのに必死で、相手の話の文脈や全体像が全く頭に入ってこないのです。
その結果、メモには単語が羅列されているだけで、後から見返しても意味がわからないという事態に陥ります。
5.【医療・介護特有の原因】緊急性の高さが焦りを生む
医療・介護現場の電話は、緊急性を伴う場合があります。
利用者さんの体調不良や、ご家族からの切羽詰まった相談など特有のプレッシャーが冷静な判断と思考を妨げる場合も。
この焦りは視野を狭くし、聴覚にも影響を与える場合があります。
「早く看護師に報告しないと!」
という気持ちが強くなるほど、相手の話の細かい部分を聞き逃しやすくなるのです。
電話対応で聞き取れないときの返し方を場面別に紹介!
電話が聞き取れないとき、最も重要なのは「どう聞き返すか」です。
聞き方一つで、相手に与える印象は大きく変わります。
ここではクッションことばを上手に使い、失礼にならずに聞き返すフレーズを紹介します。
1.相手の声が小さい・遠い・電波が悪い場合
相手の声が物理的に聞き取りにくい場合は、自分のせいではなく環境のせいにすると、相手も気を悪くしにくいでしょう。
- 「申し訳ございません、少々お電話が遠いようでして、もう一度お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
- 「恐れ入ります、電波の状況が悪いようで音声が途切れてしまいました。大変恐縮ですが、もう一度〇〇についてお聞かせいただけますでしょうか」
このように、具体的な理由を伝えることで聞き返すことへの正当性が生まれます。
2.相手が早口で追いつけない場合(医師・ケアマネジャーなど)
多忙な専門職からの電話では、相手のペースに合わせようと焦る必要はありません。
「ありがとうございます。重要なことですので、念のため一つずつ復唱させていただいてもよろしいでしょうか」
このように正確な情報共有のために、こちらがペースをコントロールする意識をもちましょう。
3.相手が高齢で滑舌が不明瞭な場合
高齢の利用者さんやご家族に対しては、特に丁寧で思いやりのある対応が求められます。
相手のプライドを傷つけないように、ことば選びには細心の注意を払いましょう。
- 「ありがとうございます。大切なことですので、もう一度ゆっくりお伺いしてもよろしいでしょうか」
- 「〇〇様、落ち着いてゆっくりで大丈夫ですよ。まずはお名前からお伺いできますか」
「急がなくて大丈夫ですよ」というメッセージを伝えることで、相手の緊張が和らぎ、聞き取りやすい話し方をしてくれます。
4.専門用語や知らないことばが出てきた場合
知らないことばが出てきたときに、わかったふりをするのは危険です。
- 「申し訳ございません、不勉強で恐縮ですが、『〇〇』というのはどういったものでしょうか。教えていただけますでしょうか」
- 「恐れ入ります、ただいまおっしゃった〇〇ということばですが、どのような漢字を書きますでしょうか」
知らないことを素直に認める姿勢は、むしろ誠実な印象を与えます。
曖昧なまま話を進めないようにしましょう。
5.話が複雑で要点を整理したい場合
ご家族からの相談など、話が多岐にわたって長くなることもあります。
そのようなときは、一度話を区切って要点を確認しましょう。
- 「お話ありがとうございます。一度ここまでの内容を整理させていただいてもよろしいでしょうか」
- 「つまり、〇〇様が一番お困りなのは、△△ということでお間違いないでしょうか」
相手の話を要約して確認することで、話の論点がずれていないかを確認できます。
これは、アクティブリスニング(積極的傾聴)の重要なテクニックの一つです。
何度聞いても聞き取れないときの最終手段
あらゆるフレーズを試しても、どうしても聞き取れない。
そのようなときのために、最終手段も用意しておきましょう。
「大変申し訳ございません。何度もお伺いしたのですが、私の力不足でどうしても聞き取ることができません。もし可能でしたら、一度お電話をお切りして、こちらからお掛け直しさせていただいてもよろしいでしょうか」
電話機や電波の問題である可能性もあるため、掛け直すことで状況が改善される場合があります。
また、一度仕切り直すことで、お互いに落ち着きを取り戻す効果も期待できるでしょう。
まとめ
今回は、電話対応で聞き取れない理由や対処法を解説しました。
電話が聞き取れないこと自体は、決してあなたの能力が低いからではありません。
相手の話し方や環境、そして医療・介護現場特有のプレッシャーなど、さまざまな要因が絡み合っています。
大切なのは、聞き取れなかったときにわかったふりをせず、「正確に確認しよう」とすることです。
紹介したフレーズを実践し、電話対応に自信をもってください。