「返戻ならまだしも、査定で減点までされてしまった……」訪問看護ステーションの請求業務を担当していると、こうした通知を見て肩を落とした経験がある方は少なくないはずです。しかも困ったことに、査定は返戻と違って「直して出し直せば済む」ものではなく、原因を正しく理解しないと同じ理由で何度も点数を削られてしまいます。
この記事では、訪問看護レセプトの「査定」「減点」がなぜ起きるのかを、返戻との違い・増減点連絡書の見方から整理したうえで、実務でよくある査定事例、日常業務での防止策、査定に納得できないときの再審査請求の手続きまで、一次情報にもとづいて解説します。
この記事でわかること
- 「査定」「減点」と「返戻」の違い(介護保険と医療保険で扱いが異なる点)
- 増減点連絡書に書かれているA・B・C・Dなどの記号の意味
- 訪問看護でよくある査定・減点の事例(優先関係の誤り・算定要件不備など)
- 査定・減点を防ぐための日常的なチェックポイント
- 査定に納得できないときの再審査請求の手続き
目次
訪問看護レセプトの「査定」「減点」とは?「返戻」との違い
先輩、「査定」で減点されたって通知が来たんですけど……これも返戻と同じように、直して出し直せば大丈夫ですよね?
そこ、よく混同されるポイントなんです。返戻は「審査の前段階で不備が見つかり差し戻される」手続きで、修正して再請求すれば通ります。一方で査定は「審査の結果、算定要件を満たさないと判断されて点数そのものが減点される」手続きなので、再請求ではなく再審査請求という別の手続きで対応することになります。
「返戻」「査定」の違いをより詳しく整理した内容は、レセプト返戻再請求とは?手続きの必要性や流れを解説!でも解説していますので、あわせて確認しておくと理解が深まります。この記事では、査定・減点がなぜ起きるのか、その原因と防止策に焦点を絞って解説します。
| 制度 | 差し戻しの種類 | 内容 |
| 医療保険 | 返戻 | 記載内容の不備等により審査前に差し戻される。修正して再請求できる |
| 医療保険 | 査定(減点) | 審査支払機関の審査により点数が減額される。再請求ではなく再審査請求で対応する |
| 介護保険 | 返戻・過誤・保留 | 審査確定前は返戻、支払確定後の誤りは過誤、給付管理票未提出等は保留として扱う |
注意
介護保険の請求では、本来「査定」という言葉は使いません(確度高:既存記事でも一次情報をもとに確認済み)。介護保険で不備が見つかった場合は「返戻」「過誤」「保留」のいずれかで扱われ、医療保険のような「査定・減点」という概念とは制度が異なります。本記事で扱う「査定・減点」は、主に医療保険の訪問看護療養費における審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)の審査を指します。
査定・減点はどう通知される?増減点連絡書の見方
医療保険の訪問看護療養費で査定・減点があった場合、審査支払機関からは「増減点連絡書」という帳票で通知が届きます。社会保険診療報酬支払基金が公表している資料では、この帳票の記載内容が次のように説明されています(確度高:社会保険診療報酬支払基金「増減点連絡書・各種通知書の見方」令和8年2月版で確認。ただし同資料は医療機関・薬局向けの一般的な様式説明であり、訪問看護療養費に限定した記載ではない点に留意してください)。
| 記号 | 増減点事由 |
| A | 療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上適応とならないもの |
| B | 療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上過剰・重複となるもの |
| C | A・B以外で医学的に保険診療上適当でないもの |
| D | 告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの |
| F | 固定点数が誤っているもの(事務上の誤り) |
| G | 請求点数の集計が誤っているもの(事務上の誤り) |
| H | 縦計計算が誤っているもの(事務上の誤り) |
| K | その他 |
このうち、事務担当者として特に押さえておきたいのはD(算定要件に合致していない)です。医学的な判断が絡むA・B・Cと違い、Dは「指示書の期間」「加算の算定要件」「優先すべき保険の判断」といった事務手続き上の確認不足で発生することが多く、日々のチェックで防げる余地が大きい区分だからです。また、同資料には「縦覧点検」(同一患者の複数月にわたるレセプトを通覧して査定するもの)・「入外点検」といった点検方法の名称も記載されており、単月のレセプト単体では問題なくても、数か月分をまとめて見たときに算定回数の超過などが発覚するケースがある点も押さえておく必要があります。
訪問看護でよくある査定・減点の事例①医療保険・介護保険の優先関係の誤り
要介護認定を受けている利用者さんなのに、医療保険で請求してしまって査定された、という話を聞いたことがあるんですが……そんなことが起こるんですか?
実際によくある査定理由のひとつです。要介護・要支援認定を受けている利用者への訪問看護は、原則として介護保険が優先されます。医療保険が使えるのは、末期の悪性腫瘍や神経難病など「特掲診療料の施設基準等 別表第七」に定められた疾病等に該当する場合や、急性増悪等で主治医から特別訪問看護指示書が交付された場合など、限られたケースだけなんです。
この優先関係を誤ると、本来は介護保険で請求すべき分を医療保険で請求してしまい、査定(減点)や返戻の対象になります。別表第七に該当する疾病等は、訪問看護レセプトの「心身の状態」欄に記載する疾病等コード(別表7・別表8)とも連動しており、該当の有無をレセコン入力前に必ず確認する必要があります(確度中:別表第七の対象疾病・優先関係の枠組みは複数の公開情報で一致していますが、告示番号は診療報酬改定のたびに改められているため、最新の告示・通知を都度確認してください)。
POINT
利用者ごとに「要介護認定の有無」「別表第七該当の有無」「特別訪問看護指示書の発行有無」を一覧で管理しておくと、どちらの保険で請求すべきかを毎月迷わず判断できます。
訪問看護でよくある査定・減点の事例②算定要件・記載内容の不備
優先関係の誤り以外にも、算定要件や記載内容の不備による査定・減点は多岐にわたります。代表的なものを整理します。
| 事例 | 査定・減点につながる主な原因 |
| 特別訪問看護指示書関連 | 指示書に定められた有効期間(原則14日間)を超えて訪問看護療養費を算定してしまう |
| 特別管理加算 | 該当する疾病等コード・状態と、算定した加算額(コード・単位)が一致していない |
| 同一建物居住者への訪問 | 同一建物・同一敷地内建物の範囲や、同一日の算定人数の数え方を誤り、通常の点数のまま算定してしまう |
| 訪問看護指示書との不一致 | 主治医の指示書に記載のない内容(回数・処置等)で算定している |
注意
同一建物居住者に関する減算は、令和8年度診療報酬改定で「同一建物」の範囲(同一敷地内の別棟を含めて合算するかどうか等)の見直しが行われています。制度の詳細・単位数は改定ごとに変わるため、本記事では算定誤りが起きやすい論点として紹介するにとどめ、具体的な単位数の断定は避けています。自事業所への適用は必ず最新の告示・通知やレセコンベンダーの案内で確認してください。
査定・減点を防ぐための実務チェック
- 優先関係の事前確認利用者ごとに要介護認定の有無・別表第七該当の有無・特別訪問看護指示書の発行状況を一覧化し、レセコン入力前に確認する。
- 指示書の有効期間チェック訪問看護指示書・特別訪問看護指示書の有効期間と、実際に算定する期間・回数が一致しているかを確認する。
- 加算の要件と記載の突合特別管理加算などを算定する際は、心身の状態欄の疾病等コードと加算内容が一致しているかをダブルチェックする。
- 同一建物の状況把握同一建物・同一敷地内建物への訪問人数や算定区分を、月次で棚卸しして誤りがないか確認する。
- 過去の増減点連絡書の振り返り過去に査定・減点があった理由をチームで共有し、同じ事由記号(A〜Kなど)が繰り返されていないかを月次で確認する。
あわせて読んでおきたい関連記事
返戻と査定の用語・期限の違いをもう一度整理しておきたい方は、こちらの記事もあわせてご確認ください。
関連記事を読む
査定に納得できないときは?再審査請求という選択肢
査定・減点の内容に疑義がある場合、返戻のように「修正して再請求」するのではなく、再審査請求という手続きで審査結果に異議を申し立てることができます。社会保険診療報酬支払基金の案内では、次の点が確認できます(確度高:社会保険診療報酬支払基金「再審査請求(取下げ)の方法」で確認)。
- 訪問看護ステーションは、オンライン請求システムでの再審査請求の対象外となっており、紙の「再審査等請求書」を郵送で提出する
- 取下げ期限日までに提出する必要があり、期限は都道府県ごとに異なる
- 資料を添付して請求する場合は、郵送での提出が必須となる
注意
再審査請求の受付締切日は都道府県・審査支払機関によって異なります。査定内容に疑義がある場合は、増減点連絡書を受け取ったらできるだけ早く該当の国民健康保険団体連合会・社会保険診療報酬支払基金の案内で締切日を確認し、必要な根拠資料(訪問看護記録・指示書の写し等)を準備しておくことをおすすめします。
「査定」と「返戻」はどう違いますか?
返戻は記載内容の不備などにより審査前に差し戻され、修正のうえ再請求できる手続きです。一方、査定は審査の結果、算定要件を満たさないと判断された点数が減点される手続きで、原則として再請求ではなく再審査請求で対応します。介護保険では「査定」という用語は使わず、「返戻」「過誤」「保留」の3つで整理されています。
介護保険の訪問看護でも「査定」されることはありますか?
介護保険の請求では、医療保険のような「査定」という用語・手続きは使われません。介護保険で不備が見つかった場合は「返戻」(審査確定前)または「過誤」(支払い確定後)として扱われ、いずれも修正のうえ再請求する形になります。
増減点連絡書に書かれているA・B・C・Dなどの記号は何を意味しますか?
社会保険診療報酬支払基金が発行する増減点連絡書に記載される増減点事由の記号で、A(医学的に保険診療上適応とならないもの)、B(医学的に過剰・重複)、C(A・B以外で医学的に適当でないもの)、D(告示・通知の算定要件に合致していないもの)、F・G・H(事務上の誤り)、K(その他)などに分類されています。
査定された点数に納得できない場合はどうすればよいですか?
審査結果に異議がある場合は「再審査請求」という手続きで異議を申し立てることができます。訪問看護ステーションの場合はオンライン請求システムの対象外となっており、紙の再審査等請求書を郵送で提出する必要があります。取下げ期限日は都道府県によって異なるため、早めに確認して対応することが大切です。
査定・減点を防ぐために日常的にできることはありますか?
レセコン入力前に訪問看護指示書の有効期間や算定要件を確認するダブルチェック体制を作ること、医療保険と介護保険どちらが優先されるかを利用者ごとに確認しておくこと、過去の増減点連絡書の内容をチームで共有し同じ理由での査定を繰り返さないようにすることが効果的です。
まとめ|査定・減点は「原因の特定」と「事前チェック」で防げる
訪問看護レセプトの査定・減点は、返戻とは異なる制度・手続きであり、医療保険特有の概念であることをまず押さえておく必要があります。そのうえで、優先関係の誤りや算定要件の不一致など、事務担当者の事前確認で防げる原因も多くあります。
この記事のまとめ
- 査定・減点は医療保険特有の概念で、介護保険では「返戻・過誤・保留」として扱われる
- 増減点連絡書のA〜K記号のうち、Dの「算定要件不一致」は事務チェックで防げる余地が大きい
- よくある事例は、医療保険・介護保険の優先関係の誤りと、指示書・加算要件の記載不一致
- 査定に納得できない場合は、返戻の再請求とは別の「再審査請求」(紙の郵送・都道府県ごとの締切)で対応する
日々のダブルチェック体制と、過去の査定理由の振り返りを仕組み化することが、査定・減点を減らす一番の近道です。
次に読むべき関連記事
請求業務そのものの負担を減らす方法として、レセプト代行の活用を検討したい方はこちらもご覧ください。
関連記事を読む