訪問看護ステーションにおけるスケジュール管理は、業務の効率化だけでなく、利用者さんの満足度やトラブル防止にも直結する重要な業務です。
特に事務員には、訪問予定の調整や管理を通じて、ステーション全体を支える役割が求められています。
そこで本記事では、訪問看護のスケジュール管理のコツと、業務に役立つツールを紹介します。
どのようにスケジュールを管理したらよいか困っている事務員は、ぜひ参考にしてください。
目次
訪問看護におけるスケジュール管理の重要性
訪問看護ステーションでは、時間どおりに訪問することが利用者さんからの信頼を得るうえで欠かせません。
約束した時間に訪問できないことが続いてしまうと、ステーションへの信頼低下につながってしまいます。
看護師や利用者さん、関係機関との連携を支える役割として、事務員のスケジュール管理力はステーション全体の運営を左右します。
適切にスケジュール管理できれば、現場の看護師の負担軽減にもつながり、結果的に提供するケアの質も向上するでしょう。
訪問看護のスケジュールはどう組まれている?
訪問看護のスケジュールは、利用者さんの希望や、看護師の勤務時間などを総合的に考慮して組み立てられます。
一例として、午前中に2〜3件、午後に2〜3件程度訪問する形があります。
スケジュールを組む際は、移動時間や急な予定の変更などを考慮し、ある程度の余裕時間を設ける工夫が重要です。
また、定期的な訪問に加えて、緊急時の対応枠も考慮したスケジュール設計が求められます。
事務員はこういった要素を調整しながら、無理のない訪問スケジュールを立てます。
効率的にスケジュールを作成するためには、地域特性や交通事情なども把握しておきましょう。
訪問看護のスケジュールをスムーズに組むコツ
訪問看護のスケジュール管理をスムーズに行うためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 訪問順を効率化する
- 直前キャンセル・変更リスクに備える
- 多職種連携・関係機関との調整も考慮する
これらを押さえることでスケジュール管理の精度が上がり、現場の混乱も防げます。
訪問順を効率化する
訪問ルートは、できるだけ地理的にまとまった順番に組みましょう。
これは移動時間を短縮するためです。
行ったり来たりのルートよりも、円を描くように回るルート設計が効率的です。
交通状況も考慮し、混雑が予想される時間帯や道路を避ける工夫も求められます。
特に朝の通勤ラッシュや夕方の下校時間帯などは、移動に時間がかかることを見越したスケジュール設計をしましょう。
また、エリアごとに担当看護師を固定しておくと、地域に詳しくなるため効率的に移動できるようになります。
直前のキャンセルや変更に備える
訪問看護では、訪問予定の直前キャンセルや予定の変更などが多々あります。
利用者さんの急変や入院、ご家族の都合による変更など、さまざまな理由で発生するため、あらかじめ対応策を考えておきましょう。
スケジュールには多少の余裕をもたせ、重症度が高い利用者さんの訪問前後には、特に意識しておくと安心です。
また、キャンセル時の社内連絡ルールをあらかじめ決めておくことも重要で、「誰に」「どのタイミングで」「どのように」連絡するかを明確にしておきましょう。
キャンセルが発生した際の代替訪問先や業務のリストもあらかじめ用意しておくと、現場の看護師の判断負担を減らせます。
多職種連携・関係機関との調整も考慮する
訪問看護は、ケアマネジャーや医師、リハビリスタッフなど、多くの専門職と連携して進められます。
こうした多職種との連携スケジュールも考慮した調整が必要です。
たとえば、カンファレンスや医師の訪問診療、他のサービス提供時間とうっかり重複してしまわないように注意しなければなりません。
そのため訪問予定を組む際に、事前に利用者様の予定表を確認すること、サービス担当者会議や連絡調整の情報を適宜把握しておくことが重要です。
また、予定に変更が生じた場合にはケアマネジャーや関係機関と速やかに連携し、柔軟に調整する体制を整えておきましょう。
訪問看護のスケジュール管理に使えるツール
訪問看護のスケジュール管理は、さまざまなツールを活用して行えます。
以下では、代表的な3つの管理方法について紹介します。
- ホワイトボードでのスケジュール管理(アナログ型)
- エクセルでのスケジュール管理(手作り型)
- スケジュール管理アプリ・システムの活用(デジタル型)
それぞれのメリット・デメリットを理解し、ステーションに合った方法を選びましょう。
ホワイトボードでのスケジュール管理(アナログ型)
ステーション内にホワイトボードを設置し、訪問予定を一覧で管理する方法です。
曜日や時間帯ごとに区切ったボードに、マグネットや付箋などで訪問先を表示するため、視覚的に把握できるのがメリットです。
またリアルタイムに情報を共有できるだけでなく、パソコンが苦手なスタッフでも扱いやすい点も挙げられます。
ボードの前で朝礼やミーティングを行うことで、チーム全体での情報共有ツールとしても活用できるでしょう。
デジタル化が進む中でも、アナログ型の管理方法としては依然として有効なツールといえます。
一方で、消し間違いや記入漏れのリスク、情報漏洩への配慮が必要になる点を押さえておきましょう。
エクセルでのスケジュール管理(手作り型)
エクセルを使ったスケジュール表は、カスタマイズが自由でコストもかかりません。
職員の名前や時間帯ごとに色分けしたり、条件付き書式を使って自動で色が変わるようにしたりと、工夫次第で使いやすい表が作成できます。
基本的なフォーマットを用意しておき、それを毎週・毎月コピーして使うことで、誰でも更新しやすくなります。
また、関連情報(利用者さんの連絡先や特記事項など)もリンクさせて管理できる点も便利です。
ただし、更新ミスや共有方法については注意が必要です。
特に複数人で編集する場合は、意図せず上書きしてしまう場合もあります。
そのためエクセルで管理する場合は、バックアップをとるなどの工夫もしましょう。
スケジュール管理アプリ・システムの活用(デジタル型)
近年は、訪問スケジュール管理専用のアプリやシステムも増えています。
専用システムのメリットは、外出先からでもスマートフォンで確認・更新ができることや、電子カルテと連携できるものが多い点です。
初期費用や月額利用料がかかるものもありますが、無料で利用できるカレンダーアプリもあるため、事業所の規模やニーズに応じて導入を検討してみましょう。
デジタル化によって業務効率化が図れる一方で、スタッフの習熟度や端末の準備など、導入時の課題も考慮する必要があります。
訪問看護のスケジュールミス・トラブルを防ぐコツ
訪問予定のミスは、単なる業務効率の問題だけでなく、利用者さんの健康や安全にも影響する可能性があります。
特に訪問漏れやダブルブッキングなどは、ステーションへの信頼低下を招く深刻なミスといえます。
こうしたトラブルを未然に防ぐためにも、以下の対策をとっておきましょう。
スケジュール作成後に必ずダブルチェックする
スケジュール表が完成したら、必ず複数人でチェックしましょう。
チェックの際は、特に利用者さんの名前や訪問時間、担当者の配置などの基本情報を重点的に確認します。
前週や前月のスケジュールとの比較もしておくと、定期訪問の漏れも発見しやすくなるでしょう。
また、チェックリストを作成しておくと確認漏れを防げ、誰が確認しても同じ水準でチェックが可能です。
- すべての時間枠に担当者が入っているか
- 利用者さんの希望時間帯は守られているか
このように具体的な項目を設定しておきましょう。
変更点は必ず共有する
スケジュールに変更が生じた場合は、関係者全員に確実に伝わるようにしましょう。
口頭での情報共有はもちろん、記録に残す工夫も欠かせません。
- 所定の連絡ノートなどに記録する
- 変更箇所に色をつける
- 変更連絡用のグループチャットを活用する
このように、職場の状況に合った方法を取り入れましょう。
また特に重要な変更については、朝礼や終礼などの全体ミーティングを通じて全体へ確実に伝えることが大切です。
万が一のミスに備える
どれだけ対策をしても、ミスが完全になくなることはありません。
万が一ミスが発生した場合に備えたマニュアル(緊急連絡先リストや謝罪のしかたなど)を用意しておくと安心です。
特に謝罪については、想定されるミスごとに対応手順を決めておきましょう。
マニュアルには以下の内容を記載しておきます。
- 連絡すべき相手(利用者さん、ご家族、ケアマネジャー、医師など)のリスト
- 状況別の謝罪のしかた
- 代替案の提示方法
トラブルを完全になくすことは難しくても、発生時の影響を最小限に抑える準備をしておくことが、事業所の信頼維持につながるでしょう。
まとめ
訪問看護のスケジュール管理は、事務員・看護師・管理者などチーム全体で支え合うことが大切です。
事務員が日々行っている調整作業は、利用者さんの安心やステーション全体の信頼につながる重要な業務です。
小さな工夫や意識の積み重ねが、大きな成果につながることを忘れず、スムーズなスケジュール管理を目指していきましょう。