利用者さんやご家族からのクレーム電話に対して、以下の悩みはないでしょうか。
「どうやって電話を切ればいいの……」
長引く電話で他の業務が滞り、精神的に疲弊してしまうことも少なくありません。
今回は、訪問看護の事務職員向けに、クレーム対応の上手な電話の切り方を紹介します。
自信をもって対応を終え、心穏やかに日々の業務に集中できるためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
クレーム対応における電話の切り方で大切なのはゴール設定
目的は論破ではなく、問題を解決し話を着地させる「ゴール設定」です。
クレーム対応の目的は、相手を言い負かすことや論破することでは決してありません。
相手の言い分が理不尽に感じたとしても、感情的に反論しては対立が深まるだけです。
私たちの目的はただ一つ、問題を解決し、話を穏便に着地させることです。
電話の冒頭で「今日の電話のゴールは、お話を伺い、今後の対応をお約束すること」と自分の中で設定しましょう。
ゴールが明確であれば、相手のことばに一喜一憂せず、常に冷静に対応を進められます。
クレーム電話の切り方に使えるフレーズ7選
とはいえ、実際にクレーム対応をする場合、ことばが出てこないものです。
ここでは、遭遇しがちな7つのシチュエーション別に、そのまま使える具体的なフレーズを紹介します。
いざというときに冷静に対応できるお守りになりますので、状況に合わせて少しアレンジして使ってみてください。
電話対応で使える敬語を広く押さえておきたい方は、「電話対応で使える敬語を網羅!訪問看護ステーションで使える例文つき」も参考にしてください。
ビジケア訪問看護事務マガジン
電話対応で使える敬語を網羅!訪問看護ステーションで使える例文つき | ビジケア訪問看護事務マガジン
「電話のときに使っている敬語、本当に合っているかな」 訪問看護ステーションの事務職員として働いていてこのように思う方もいるでしょう。 利用者さんやご家族、ケアマネ…
1.話が堂々巡りで長電話を切り上げたいときのフレーズ
同じ話を何度も繰り返す方には、一度話を区切り、今後のアクションを明確に示すとよいでしょう。
「〇〇様のおっしゃりたいことは、〇〇ということでございますね。その点も含めて、一度上長と相談のうえで、明日改めてご連絡を差し上げます」
このフレーズは、相手の話を理解したことを示したうえで、次のステップに進むことを宣言する効果があります。
2.ただただ興奮している相手をなだめるフレーズ
相手が興奮して話が通じない状態のときは、まず感情を受け止めることばを使い、クールダウンを促します。
「大変おつらいお気持ちだったこと、お察しいたします。まずは落ち着いてお話をお伺いしてもよろしいでしょうか。私どもとしましても、問題を解決するために全力で対応させていただきます」
正論をぶつけるのではなく、まず相手の感情に寄り添うことが重要です。
解決への協力的な姿勢を示すことで、「敵ではない」と認識してもらい、冷静に対話してもらうようにことを運びます。
3.無理難題を断るためのフレーズ
規則や法律上、どうしても応えられない要求をされた場合は、謝罪しつつもはっきりと断る勇気が必要です。
「大変申し訳ございませんが、そのご要望にお応えすることは当事業所の規則上、致しかねます。皆様に公平なサービスを提供するためですので、何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます」
ただ「できません」と突き放すのではなく、「なぜできないのか」という理由(規則、公平性など)を添えるのがポイントです。
これにより、相手も個人的に拒絶されたわけではないと理解しやすくなります。
4.罵詈雑言や人格攻撃を受けたときのフレーズ
担当者個人への暴言や威圧的な言動が続く場合は、毅然とした対応が求められます。
「〇〇様のお話は真摯に伺いますが、職員個人への暴言や威圧的な言動がこれ以上続かれますようでしたら、誠に不本意ではございますが、お電話を切らせていただく場合がございます。どうか冷静にお話しいただけますでしょうか」
これは、職員の安全と尊厳を守るために必要なフレーズです。
感情的にならずあくまで冷静に、組織としての方針として伝えることが重要です。
5.「上司を出せ」と言われたときのフレーズ
すぐに上司に代わるのではなく、まずは自分で対応する姿勢を見せることが大切です。
「申し訳ございません、あいにく〇〇(上長)はただいま他の対応に入っております。よろしければ、まずは私がご用件を承り、〇〇に申し伝えますがいかがでしょうか」
このフレーズで、自分が最初の窓口として対応するという意思を示します。
それでも相手が納得しない場合は、上長のスケジュールを確認し「〇時以降でしたら対応可能です」と具体的な時間を提示しましょう。
6.他の利用者さんの個人情報に関わる質問をされたときのフレーズ
個人情報の保護は、医療・介護現場における絶対的なルールです。
毅然として態度で、丁寧に断る必要があります。
「大変申し訳ございませんが、他の利用者様に関わることは一切お答えすることができません。個人情報保護の観点から、法律で固く禁じられておりますので、何卒ご了承ください」
「個人的な判断」ではなく、「法律」や「規則」を理由にすることで、相手もそれ以上追及しにくくなります。
「あなただから教えない」のではなく、誰に対しても同じ対応であることを明確に伝えるのがポイントです。
7.事実と異なる主張をされたときの対応フレーズ
相手の勘違いや記憶違いで、事実と異なる内容を主張された場合、正面から否定すると感情的な対立を招きます。
「左様でございますか。ただ、当方で保管しております記録によりますと、〇〇という状況でございました。もしよろしければ、その記録を基に、改めて状況をご説明させていただいてもよろしいでしょうか」
相手の主張を一度受け止めたうえで、「記録」という客観的な事実を提示します。
「あなたが間違っている」と指摘するのではなく、「記録と照らし合わせましょう」というスタンスで話を進め、相手の面子を保ちながら事実確認をしましょう。
クレーム対応の電話の切り方に関するよくある質問
ここからは、クレーム対応の電話の切り方に関する質問とその回答をまとめました。
- 相手が納得しないまま切ってしまっても大丈夫ですか?
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A.無理に納得させようとする必要はありませんが、一方的に切るのはNGです。
相手が納得しない場合でも、「これ以上お話が平行線であれば、一度持ち帰らせていただきます」と伝え、今後のアクション(例:上長と相談して後日連絡する)を提示したうえで終話するのが適切です。
目的は「納得させること」ではなく、「話を一度着地させること」と割り切りましょう。
- 「録音させてもらいます」と伝えてもよいのでしょうか?
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職員を守るために有効な場合があります。
「今後のサービス向上のため、また、正確な対応をさせていただくために、この通話は録音させていただきます」と、電話の冒頭で冷静に伝えましょう。
これにより、相手の過度な言動を抑制する効果が期待できますし、言った言わないのトラブルを防ぐための客観的な証拠にもなりえます。
- すぐに回答できない場合、どうやって電話を終えればいいですか?
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「確認して折り返します」という約束をして終話するのが基本です。
その場で分からないことを、憶測で答えるのが最も危険です。
「その件につきましては、正確にお答えするため、担当者に確認のうえ、本日〇時までに、私〇〇から折り返しお電話いたします」
というように、「保留(確認)」ではなく「折り返し」を提案しましょう。
まとめ
今回は、訪問看護の現場で役立つ、クレーム対応における電話の切り方について具体的なフレーズを交えて解説しました。
クレーム対応で大切なのは、話を着地させるというゴールを明確にもつことです。
上手な電話の切り方を身につけることは、あなた自身の心を守るだけでなく、他の利用者さんへのサービス品質を維持するためにも不可欠です。
クレーム対応において電話の切り方に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。