訪問看護ステーションの事務で避けて通れないのが「請求業務」です。月初になると前月分の実績集計やレセプト作成に追われ、「全体の流れがつかめないまま、毎月なんとかこなしている」という事務員さんも少なくありません。請求業務は、ステーションの収入を左右する大切な仕事です。この記事では、訪問看護の請求業務の流れを、月初の集計から入金までの順を追って、事務員の目線でわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 訪問看護の請求業務は「集計→作成→点検→請求→入金」の5ステップ
- 医療保険と介護保険で請求先(支払基金・国保連)が異なる
- レセプトの請求期限は原則「サービス提供の翌月10日まで」
- 入金はサービス提供月からおおむね2か月後
- 返戻・月遅れ請求などつまずきやすいポイントと対策
目次
結論|訪問看護の請求業務は5ステップで進む
はじめに結論からお伝えします。訪問看護の請求業務は、大きく「①実績の集計→②レセプト作成→③点検→④請求→⑤審査・入金」の5つのステップで進みます。
とくに押さえておきたいのは、サービスを提供した月の翌月10日までに請求を行うこと、そして入金はサービス提供月からおおむね2か月後になることです。この大きな流れを把握しておくと、毎月の業務に見通しが立ち、ミスや遅れも防ぎやすくなります。
新人事務
請求業務って毎月バタバタで、正直、全体像がつかめていなくて……。
ベテラン事務
最初は誰でもそうですよ。流れを5つのステップに分けて覚えると、ぐっと整理しやすくなります。順番に見ていきましょう。
そもそも訪問看護の請求業務とは?
流れの解説に入る前に、請求業務がどのような仕事なのかを整理しておきましょう。基本を押さえておくと、各ステップの意味も理解しやすくなります。この章で解説するのは次の3点です。
- 請求業務とはどのような仕事か
- 医療保険と介護保険で請求の系統が分かれること
- 具体的な請求先(支払基金・国保連)
請求業務は「サービスの対価を受け取る」仕事
訪問看護の請求業務とは、利用者さんに提供した訪問看護サービスの対価を、保険者(保険の運営者)に請求し、受け取るための一連の事務作業を指します。その中心となるのが「レセプト」と呼ばれる請求明細書の作成です。
レセプトは、いつ・誰に・どのようなサービスを提供したかをまとめた書類で、これをもとに報酬が支払われます。請求が遅れたり誤ったりすると、ステーションの収入に直接影響するため、正確さとスケジュール管理が欠かせない業務です。
医療保険と介護保険で系統が分かれる
訪問看護の請求でまず押さえたいのが、利用者さんが使う保険によって請求の系統が分かれるという点です。訪問看護は、医療保険と介護保険のどちらかが適用されます。
原則として、要介護・要支援の認定を受けている方は介護保険が優先されますが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合などは医療保険が適用されます。請求業務では、利用者さんごとにどちらの保険が適用されるかを正しく区分することが第一歩になります。
請求先は支払基金と国保連合会
医療保険と介護保険では、レセプトの提出先(審査支払機関)が異なります。下の表で整理しておきましょう。
| 保険の種類 | 主な請求先(審査支払機関) |
| 医療保険(協会けんぽ・健保組合など) | 社会保険診療報酬支払基金 |
| 医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療) | 国民健康保険団体連合会(国保連) |
| 介護保険 | 国民健康保険団体連合会(国保連) |
これらの審査支払機関が、提出されたレセプトの内容を審査したうえで、報酬を支払う仕組みになっています。出典
訪問看護の請求業務の流れ|月初から入金まで
ここからは、この記事の本題である請求業務の流れを、5つのステップに沿って見ていきます。毎月のスケジュール感をつかむために、まずは全体像を確認しましょう。この章のポイントは次の3つです。
- 月初に前月分の実績を集計する
- 翌月10日までにレセプトを請求する
- 入金はサービス提供月からおおむね2か月後
| ステップ | 時期の目安 | 主な作業 |
| ①実績の集計 | 月初 | 前月の訪問記録・実績を集計する |
| ②レセプト作成 | 月初〜上旬 | 医療保険・介護保険の明細書を作成する |
| ③点検 | 上旬 | 記載漏れや算定誤りがないか確認する |
| ④請求(伝送) | 翌月10日まで | 支払基金・国保連へオンライン等で提出する |
| ⑤審査・入金 | 提供月の約2か月後 | 審査を経て入金。返戻があれば再請求する |
新人事務
5ステップで並べて見ると、ぐっとわかりやすいです!
ベテラン事務
そうなんです。あとは各ステップで気をつける点を押さえれば大丈夫。1つずつ見ていきましょう。
ステップ1・2|実績の集計とレセプト作成
月初になったら、まず前月に行った訪問の実績を集計します。訪問日・訪問時間・提供したサービス内容・加算の有無などを、記録をもとに正確にまとめます。
次に、その実績をもとにレセプト(医療保険は訪問看護療養費明細書、介護保険は介護給付費明細書)を作成します。多くのステーションでは、訪問看護システムや電子カルテを使ってこの作業を行います。ここでの入力ミスは後の返戻につながるため、ていねいさが求められます。
ステップ3|レセプトの点検
レセプトを作成したら、請求の前に必ず点検(チェック)を行います。点検では、利用者情報の誤り、訪問回数の不一致、加算の算定要件の見落とし、保険区分の取り違えなどがないかを確認します。訪問看護指示書の有効期間が切れていないかも要チェックです。
点検のコツ
点検を丁寧に行うほど、後述する「返戻」を減らせます。可能であれば、レセプトの作成者とは別の人がダブルチェックする体制が理想的です。
ステップ4|請求(翌月10日まで)
点検が終わったら、いよいよ請求です。レセプトは、サービスを提供した月の翌月1日から10日までの間に、支払基金または国保連へ提出します。出典
現在はオンライン請求が基本で、インターネット回線を通じてレセプトデータを伝送します。10日が締め切りとなるため、その前に集計・作成・点検を終えられるよう、余裕をもったスケジュールで進めましょう。
ステップ5|審査・入金と返戻対応
提出されたレセプトは、支払基金・国保連で審査されます。内容に問題がなければ報酬が確定し、入金されます。入金の時期は、サービスを提供した月からおおむね2か月後が目安です。出典
たとえば4月に提供したサービスは、5月10日までに請求し、6月下旬ごろに入金される、というイメージです。一方、記載誤りなどがあったレセプトは「返戻(へんれい)」として差し戻されます。返戻が出た場合は、内容を修正して再請求します。
請求業務でつまずきやすい3つの注意点
請求業務の流れがわかったところで、事務担当者がつまずきやすいポイントもあわせて押さえておきましょう。あらかじめ知っておくと、トラブルを未然に防げます。とくに注意したいのは次の3点です。
- 請求期限に間に合わない
- 返戻・査定が発生する
- 月遅れ請求になってしまう
請求期限(翌月10日)に間に合わない
もっとも避けたいのが、翌月10日の請求期限に間に合わないことです。期限に間に合わないと、その月の請求ができず、入金が1か月以上先延ばしになってしまいます。
月初は実績集計とレセプト作成が集中します。訪問記録の提出ルールを決めておく、点検の時間をあらかじめ確保しておくなど、スケジュールに余裕をもたせる工夫が大切です。
返戻・査定が発生する
返戻はレセプトの記載誤りや要件不備によって請求が差し戻されること、査定は審査によって請求額が減額されることを指します。どちらも入金の遅れや減収につながります。
返戻・査定を減らすには、ステップ3の点検をていねいに行うことが何より重要です。返戻が出た場合は、原因を記録しておき、同じミスを繰り返さないようにしましょう。
月遅れ請求になってしまう
何らかの理由で当月に請求できなかった分を、翌月以降にまとめて請求することを「月遅れ請求」といいます。月遅れ請求自体は認められていますが、入金が遅れる、事務作業が翌月に上乗せされるなどの負担があります。月遅れ請求が常態化しないよう、毎月の流れを安定させることが大切です。
よくあるご質問(Q&A)
最後に、訪問看護の請求業務についてよく寄せられる質問を3つ取り上げます。
Q訪問看護の請求はいつまでに行えばよいですか?
A原則として、サービスを提供した月の翌月1日から10日までに、支払基金または国保連へ請求します。期限を過ぎると、その月の請求ができず入金が遅れてしまいます。
Q請求してから入金まではどのくらいかかりますか?
Aサービスを提供した月から、おおむね2か月後が入金の目安です。たとえば4月提供分は、5月に請求し、6月下旬ごろの入金となるのが一般的です。
Q請求内容にミスがあるとどうなりますか?
A「返戻」としてレセプトが差し戻され、修正して再請求することになります。再請求した分の入金はさらに先になるため、請求前の点検が重要です。
まとめ|請求の流れを押さえてミスを防ぐ
今回は、訪問看護の請求業務の流れを解説しました。要点を振り返っておきましょう。
この記事のまとめ
- 請求業務は「①集計→②レセプト作成→③点検→④請求→⑤審査・入金」の5ステップ
- 医療保険と介護保険で請求先(支払基金・国保連)が異なる
- 請求期限は原則、サービス提供の翌月10日まで
- 入金はサービス提供月からおおむね2か月後が目安
全体の流れを把握しておけば、毎月の請求業務に見通しが立ち、返戻や遅れも防ぎやすくなります。
とはいえ、実績の集計からレセプト作成・点検・返戻対応までを毎月こなすのは、決して軽い負担ではありません。請求業務に追われて本来の看護に集中しにくい、ミスが心配というお悩みがある場合は、レセプト請求の代行サービスを活用するのも一つの選択肢として検討してみてください。
※本記事は2026年5月時点の一般的な情報をもとに作成しています。請求の取り扱いや入金時期は、保険の種類・審査支払機関・自治体によって異なる場合があります。最新の情報は各審査支払機関の案内をご確認ください。