「訪問看護の加算って種類が多くて、どれをどう算定すればいいのか整理できない……」そんな悩みを抱える事務スタッフは少なくありません。介護保険と医療保険とで加算体系が異なるうえ、令和6年・令和8年と立て続けに改定が入り、情報の更新が追いつかないケースも多いのではないでしょうか。
この記事では、訪問看護の加算を介護保険・医療保険ごとに一覧でまとめ、それぞれの算定要件と請求時に注意すべきポイントを解説します。最新の改定内容(令和6年度介護報酬改定・令和8年度診療報酬改定)にも対応していますので、日々の請求業務の確認にぜひ役立ててください。
この記事でわかること
- 介護保険と医療保険で加算体系がどう違うのか
- 介護保険の訪問看護加算の種類・単位数・算定要件(令和6年改定対応)
- 医療保険の訪問看護加算の種類・金額・算定要件(令和8年改定対応)
- 特に算定要件の確認が必要な加算と請求時の注意点
- 加算請求でよくあるミスとその防ぎ方
目次
介護保険と医療保険、訪問看護の加算はどう違う?
訪問看護って、介護保険と医療保険で請求先が違うのはわかるんですが、加算の仕組みも全然違うんですか?
そうなんです。加算の名称も単位・金額の計算方法もまったく別の体系なので、混同しないように整理しておくことが大切ですよ。
訪問看護の報酬は、利用者が介護保険と医療保険のどちらで利用するかによって、適用される報酬体系が異なります。加算も例外ではなく、それぞれ独自の加算項目が設けられています。
| 区分 | 報酬の単位 | 請求先 | 改定タイミング |
| 介護保険 | 単位数(1単位=約10〜11.4円) | 国保連(介護給付費) | 3年ごと(直近:令和6年4月) |
| 医療保険 | 金額(円) | 支払基金・国保連(療養費) | 2年ごと(直近:令和8年6月) |
どちらの保険でサービスを提供しているかは、利用者の主治医が交付する訪問看護指示書の種類で判断します。一般の訪問看護指示書なら介護保険(要介護認定者で特定疾病等を除く)、精神科訪問看護指示書や厚生労働大臣が定める疾病等の利用者は医療保険が優先されます。請求前に必ず保険種別を確認しましょう。
POINT
介護保険の加算は「単位数」で表示され、地域ごとの単価(地域区分)を掛けて金額を計算します。医療保険の加算は最初から「円」で金額が決まっています。請求明細書を作成する際に混同しないよう注意しましょう。
介護保険の訪問看護加算一覧(令和6年改定対応)
令和6年の改定で加算の内容が変わったと聞いたんですが、何が変わったか把握しきれていなくて……。
特に大きいのは、緊急時訪問看護加算がⅠ・Ⅱに区分が分かれたことですね。算定要件が変わっているので、今の加算がどちらに該当するか必ず確認してください。
介護保険の訪問看護加算は、令和6年4月の介護報酬改定で見直されました。以下の表で種類・単位数・算定要件をまとめています。
月単位で算定する加算
| 加算名 | 単位数 | 主な算定要件 |
| 初回加算 | +300単位/月 | 初めて訪問看護を提供した月(または2か月以上の間隔が空いた場合の再開月) |
| 緊急時訪問看護加算(Ⅰ) | +574単位/月 | 24時間連絡体制を確保し、かつ看護業務の負担軽減に資する取組(記録の電子化等)を実施 |
| 緊急時訪問看護加算(Ⅱ) | +315単位/月 | 24時間連絡体制を確保(負担軽減取組なし) |
| 特別管理加算(Ⅰ) | +500単位/月 | 特別な管理が必要な状態(留置カテーテル・気管カニューレ等) |
| 特別管理加算(Ⅱ) | +250単位/月 | 点滴注射を週3日以上、または在宅酸素療法等を実施 |
| 看護体制強化加算(Ⅰ) | +550単位/月 | ターミナルケア実績・重症者割合・特別管理加算算定割合など複数要件を満たす |
| 看護体制強化加算(Ⅱ) | +200単位/月 | 看護体制強化加算Ⅰより要件が緩和された区分 |
| 看護・介護職員連携強化加算 | +250単位/月 | 介護職員等へのたんの吸引等に係る指導・連携を実施 |
1回単位で算定する加算・その他
| 加算名 | 単位数 | 主な算定要件 |
| 退院時共同指導加算 | +600単位/回 | 入院中の利用者に対し、医療機関の職員と共同して退院後の指導を実施(特別管理加算該当者は+2,000単位) |
| 複数名訪問加算(Ⅰ):30分未満 | +254単位/回 | 看護師等2名が同時に訪問(1名が看護補助者の場合はⅡを適用) |
| 複数名訪問加算(Ⅰ):30分以上 | +402単位/回 | 同上 |
| 複数名訪問加算(Ⅱ):30分未満 | +201単位/回 | 看護師等と看護補助者が同時に訪問 |
| 複数名訪問加算(Ⅱ):30分以上 | +317単位/回 | 同上 |
| 夜間・早朝加算 | 所定単位×25/100 | 18時〜22時・6時〜8時の時間帯に訪問 |
| 深夜加算 | 所定単位×50/100 | 22時〜6時の時間帯に訪問 |
| 特別地域訪問看護加算 | 所定単位×15/100 | 別に厚生労働大臣が定める地域に居住する利用者へ訪問 |
| 中山間地域等小規模事業所加算 | 所定単位×10/100 | 中山間地域等に所在する小規模な訪問看護ステーション |
| 中山間地域等居住者サービス提供加算 | 所定単位×5/100 | 中山間地域等に居住する利用者への訪問(前2加算との重複不可) |
| サービス提供体制強化加算(Ⅰ) | +6単位/回 | 介護福祉士・勤続7年以上の職員割合などの要件を満たす(訪問看護ステーションの場合) |
| サービス提供体制強化加算(Ⅱ) | +3単位/回 | Ⅰより緩和された要件 |
| ターミナルケア加算 | +2,000単位 | 死亡日および死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを実施(医療機関との連携等の要件あり) |
注意
同一建物減算(同一建物の利用者に同一日に訪問する場合)は加算ではなく減算です。20人以上訪問した日は所定単位×90/100、50人以上は×85/100が適用されます。加算と混同しないよう注意してください。
医療保険の訪問看護加算一覧(令和6年・令和8年改定対応)
医療保険の加算は令和8年の改定で新しいものができたと聞きました。どんな加算が増えたんですか?
令和8年6月から「訪問看護物価対応料」と「訪問看護医療情報連携加算」が新設されました。どちらも請求漏れになりやすいので、算定要件を早めに確認しておきましょう。
医療保険の訪問看護に係る加算は、訪問看護療養費(ステーション分)に対して加算される形になります。令和8年6月施行の診療報酬改定も踏まえた最新情報をまとめています。
月単位・訪問ごとに算定する主な加算
| 加算名 | 金額 | 主な算定要件 |
| 24時間対応体制加算(イ) | 6,800円/月 | 24時間連絡・訪問体制を確保し、看護業務の負担軽減に資する取組を実施 |
| 24時間対応体制加算(ロ) | 6,400円/月 | 24時間連絡・訪問体制を確保(負担軽減取組なし) |
| 特別管理加算(Ⅰ) | 5,000円/月 | 特別な管理が必要な状態(留置カテーテル・気管カニューレ等) |
| 特別管理加算(Ⅱ) | 2,500円/月 | 点滴注射を週3日以上、または在宅酸素療法等を実施 |
| 退院時共同指導加算 | 8,000円/回(特別管理加算対象者は+2,000円) | 入院中の利用者に対し、医療機関職員と共同して退院後の療養指導を実施(退院・退所後1回算定) |
| 退院支援指導加算 | 6,000円/回 | 退院日(または退院翌日)に療養上の指導を実施。特別管理加算対象者に限る |
| 初回加算 | 3,000円/月 | 初めて訪問看護を実施した月(または2か月以上間隔が空いた再開月) |
| 緊急訪問看護加算 | 2,650円/回(週3回まで) | 計画外の緊急訪問を実施した場合(同一日2回目以降は1,325円) |
| 長時間訪問看護加算 | 5,200円/回 | 90分を超える訪問を実施した場合(別に定める状態の利用者に限る) |
| 複数名訪問看護加算(看護師等の場合) | 4,500円/回 | 2名の看護師等が同時に訪問(1回のみ算定可) |
| 複数名訪問看護加算(看護補助者の場合・30分未満) | 3,000円/回 | 看護師等と看護補助者が同時に訪問(30分未満) |
| 複数名訪問看護加算(看護補助者の場合・30分以上) | 4,000円/回 | 同上(30分以上) |
| 夜間・早朝訪問看護加算 | 2,100円/回 | 18時〜22時・6時〜8時の時間帯に訪問 |
| 深夜訪問看護加算 | 4,200円/回 | 22時〜6時の時間帯に訪問 |
| ターミナルケア加算 | 25,000円(在宅死の場合)/10,000円(医療機関死の場合) | 死亡日前14日以内に2日以上のターミナルケアを実施し、在宅で死亡した利用者 |
| 看護体制強化加算(Ⅰ) | 5,500円/月 | ターミナルケア実績・重症者割合・特別管理加算算定割合などの要件を満たす |
| 看護体制強化加算(Ⅱ) | 2,000円/月 | Ⅰより要件が緩和された区分 |
| 専門管理加算 | 2,500円/月 | 専門性の高い看護師(緩和ケア認定看護師・皮膚・排泄ケア認定看護師等)が計画的管理を行う |
| 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ) | 1,050円/月(令和8年改定後) | 賃上げ計画書の提出等の届出要件を満たす |
令和8年6月新設の加算
| 加算名 | 金額 | 主な算定要件 |
| 訪問看護物価対応料 | 月初日:60円/月2日目以降:20円/回 | 訪問看護ステーションが訪問看護療養費を算定している利用者に対して訪問看護を実施した場合(令和8年6月1日より算定可) |
| 訪問看護医療情報連携加算 | 1,000円/月(月1回) | 電子処方箋等の医療情報を活用して利用者の薬剤情報等を確認し、主治医等と連携を行った場合 |
POINT
訪問看護物価対応料は令和8年6月以降のすべての訪問日に算定できる新設加算です。算定漏れが発生しやすいため、レセプトシステムの設定を早めに確認してください。また、訪問看護医療情報連携加算は「電子処方箋等を活用して情報確認を行った月」に1回算定できます。
算定要件で特に注意が必要な加算
一覧を見ると加算がたくさんあって……どれから重点的に確認すればいいですか?
返戻や過誤につながりやすいのは「届出が必要な加算」と「実績要件がある加算」です。これらは特に注意して確認しておきましょう。
①緊急時訪問看護加算(介護保険)/24時間対応体制加算(医療保険)
令和6年改定で、介護保険の緊急時訪問看護加算はⅠとⅡの2区分に改められました。区分Ⅰ(574単位)を算定するには、24時間連絡体制の確保に加え、「看護業務の負担軽減に資する取組」(記録の電子化・ICT活用等)を実施していることが要件です。以前の緊急時訪問看護加算(315単位相当)のままで届出を更新していない場合はⅡ(315単位)の算定になります。医療保険の24時間対応体制加算も同様にイ(6,800円)とロ(6,400円)に区分されており、取組の有無で加算額が異なります。
注意
緊急時訪問看護加算(介護保険)および24時間対応体制加算(医療保険)は、あらかじめ都道府県(または地方厚生局)への届出が必要です。届出なしに算定すると返戻・指導の対象になります。令和6年改定後にⅠへの区分変更を行う場合も、届出内容の変更が必要です。
②特別管理加算(介護保険・医療保険)
特別管理加算は、毎月の訪問看護記録に「特別な管理が必要な状態であること」の記録が必要です。留置カテーテル・気管カニューレ・胃瘻等の状態はⅠ(500単位・5,000円)、点滴注射の週3日以上や在宅酸素療法等はⅡ(250単位・2,500円)が適用されます。月の途中で状態が変わった場合も、記録を根拠に算定区分を判断してください。
③看護体制強化加算(介護保険・医療保険)
看護体制強化加算の算定には、ターミナルケア実績・重症者割合・特別管理加算算定割合など複数の実績要件があります。算定する月の前6か月間の実績をもとに要件を満たしているか確認し、地方厚生局への届出が必要です。要件を満たさなくなった月から翌月には速やかに届出を変更し、加算の算定を停止してください。
④ターミナルケア加算
ターミナルケア加算は、死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを実施した記録が算定の根拠となります。医療機関で亡くなった場合と在宅(自宅・特養等)で亡くなった場合で金額が異なります(医療保険:25,000円と10,000円)。記録の記載と死亡日・場所の確認を請求前に必ず行いましょう。
加算の請求時によくあるミスと注意点
加算の算定漏れや誤りは、返戻・過誤・監査指導の原因になります。よくあるミスとその対策を整理しました。
- 届出が必要な加算の届出漏れ:緊急時訪問看護加算・24時間対応体制加算・看護体制強化加算などは届出が前提。未届出のまま算定しないよう、管理者と事務で定期的に届出状況を確認する。
- 改定後の区分変更を更新していない:令和6年改定以降、緊急時訪問看護加算がⅠ・Ⅱに分かれた。取組状況に応じた正しい区分で届出・算定されているかを確認する。
- 特別管理加算の根拠記録が不十分:訪問看護記録に状態の記載がないと、加算の根拠書類が不足する。ケア記録と請求内容が一致しているか毎月確認する。
- 複数名訪問加算の区分(Ⅰ・Ⅱ)の誤り:2名目が看護師等か看護補助者かで区分が異なる。訪問スタッフの職種を請求前に確認する。
- 夜間・深夜加算の時間区分のミス:18〜22時が早朝・夜間加算、22〜6時が深夜加算。システムへの時間入力誤りによる区分ミスが発生しやすい。
- 令和8年新設加算の算定開始忘れ:訪問看護物価対応料(令和8年6月〜)は算定開始月を見逃すと請求漏れになる。システム設定と算定開始日を要確認。
POINT
加算の請求ミスを防ぐには、月初のチェックリストを作成し、算定対象者と加算区分を一覧化することが有効です。訪問看護記録・指示書・届出書類の3点を毎月照合する習慣をつけましょう。レセプト代行を利用している場合も、事業所側の記録・情報提供が正確であることが前提です。
訪問看護の加算に関するよくある質問(FAQ)
介護保険と医療保険の両方の加算を同じ利用者に算定できますか?
原則として、1か月に介護保険と医療保険の両方で訪問看護を算定することはできません。利用者が要介護認定を受けており、特定疾病等に該当しない場合は介護保険の訪問看護となります。ただし、主治医が「特別訪問看護指示書」を交付した期間中や、厚生労働大臣が定める疾病等の利用者は医療保険が優先されます。保険種別の判断は毎月確認するようにしましょう。
緊急時訪問看護加算(介護保険)はⅠとⅡのどちらを算定すればよいですか?
令和6年4月改定以降、「看護業務の負担軽減に資する取組」(記録の電子化・ICT活用等)を実施している場合はⅠ(574単位)、実施していない場合はⅡ(315単位)を算定します。どちらを算定するかは都道府県への届出内容と一致させる必要があります。取組を始めた場合は届出を変更してください。
特別管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは何ですか?
特別管理加算Ⅰ(介護保険500単位・医療保険5,000円)は、留置カテーテル・気管カニューレ・胃瘻・在宅中心静脈栄養法等、より高度な管理が必要な状態の利用者に算定します。特別管理加算Ⅱ(介護保険250単位・医療保険2,500円)は、週3日以上の点滴注射・在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法などを実施している利用者が対象です。状態によってどちらが該当するかを、訪問看護指示書や記録をもとに毎月確認してください。
訪問看護物価対応料(令和8年新設)はどう算定すればよいですか?
訪問看護物価対応料は、令和8年6月1日以降に訪問看護療養費を算定している利用者への訪問に対して算定できます。月初日の訪問に60円、月2日目以降の訪問ごとに20円が加算されます。特別な届出は不要ですが、レセプトシステムへの設定が必要です。算定開始月のシステム設定を早めに確認しましょう。
ターミナルケア加算を算定するために、どんな記録が必要ですか?
ターミナルケア加算を算定するには、死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを実施した旨が訪問看護記録に記載されていることが必要です。具体的には、ターミナルケアを実施した日付・内容・利用者の状態の記録が求められます。また、主治医との連携内容や家族への説明記録も整備しておくと、万が一の指導・監査時にも対応しやすくなります。医療保険の場合は、在宅死か医療機関での死亡かによって加算額が異なりますので、死亡場所も必ず確認してください。
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加算の算定が正しくできていても、請求フロー全体でミスが発生することがあります。月初から入金までの請求業務の流れを確認しておくと、加算の算定タイミングや必要書類の準備もスムーズになります。
訪問看護の請求業務の流れを確認する
まとめ|加算の種類・算定要件を正しく把握して請求漏れをなくそう
訪問看護の加算は介護保険・医療保険の2体系があり、令和6年・令和8年の改定でも変更点があります。それぞれの要件をしっかり把握して、算定漏れ・誤りのない請求を目指しましょう。
この記事のまとめ
- 訪問看護の加算は介護保険(単位数)と医療保険(円)で体系が異なり、混同しないことが大切
- 令和6年改定で緊急時訪問看護加算(介護)がⅠ・Ⅱに区分化。取組状況に応じた届出変更が必要
- 令和8年6月から訪問看護物価対応料・訪問看護医療情報連携加算が新設。システム設定の確認を忘れずに
- 届出要件がある加算(緊急時・体制強化加算等)は、届出なしの算定が返戻・指導の原因になる
- 特別管理加算・ターミナルケア加算は記録の整備が算定根拠。毎月の記録と請求内容の照合が重要
加算の種類が多く管理が大変な場合は、レセプト請求代行の活用も選択肢のひとつです。まずは月次の請求フローと加算チェックリストを整備するところから始めてみましょう。