訪問看護の請求業務を任されたばかりの頃は、「実績をまとめてから、次に何をすればレセプトが完成するのか」が見えづらく、先輩のやり方を見よう見まねで進めている方も多いのではないでしょうか。医療保険と介護保険で提出先や書類が異なるうえ、月をまたいだスケジュール管理も必要になるため、全体の流れを一度整理しておくことが遠回りに見えて一番の近道です。
この記事では、訪問看護ステーションにおける請求業務を実績集計からレセプト提出・入金確認までの7ステップに分けて整理し、それぞれの段階でつまずきやすいポイントと対策を事務担当者向けに解説します。
この記事でわかること
- 訪問看護の請求業務の全体像(実績集計〜入金確認の7ステップ)
- 医療保険・介護保険で提出先や流れがどう違うか
- レセプトの提出期限とおおまかな入金スケジュール
- 各ステップでつまずきやすいポイントと防ぐための工夫
- 返戻が発生したときの基本的な対応の流れ
目次
訪問看護の請求はなぜ複雑?医療保険・介護保険の基本
利用者さんによって医療保険の請求だったり介護保険の請求だったりするので、正直まだ混乱しています……。そもそも何が違うんでしょうか?
大きな違いは「提出先」と「書式」ですね。医療保険は社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会(国保連)へ「訪問看護療養費明細書」を、介護保険は国保連へ「介護給付費明細書」を提出します。利用者さんが要介護・要支援認定を受けているかどうかなどによって、どちらの保険を使うかが決まります。
訪問看護は、疾患の状態や年齢、要介護認定の有無によって医療保険と介護保険のどちらかを使い分けるという特徴があります。厚生労働大臣が定める疾病等(いわゆる「別表第七」「別表第八」)に該当する場合や、精神科訪問看護の対象となる場合は医療保険が優先されるなど、判断のルールが細かく決まっています。
提出先・書式・提出期限がそれぞれ異なるため、まずは「今どちらの保険で請求する利用者なのか」を正しく把握することが、請求業務全体の出発点になります。
レセプト提出までの流れ全体像
訪問看護の請求業務は、大きく分けると「月内の実績確定」「レセプト作成・点検」「提出」「審査後の対応」という4つの局面に分かれます。まずは全体像をざっくりつかんでおきましょう。
| 局面 | 主な作業 | タイミングの目安 |
| 実績確定 | 訪問実績の集計、指示書・ケアプランとの突合 | サービス提供月の月末 |
| レセプト作成 | 保険区分の判定、加算算定、システム入力 | 月末〜翌月初 |
| 点検・提出 | 自己点検、提出書類の準備、オンライン請求 | 翌月1日〜10日 |
| 審査後の対応 | 返戻確認、再請求、入金確認 | 翌月中旬〜翌々月 |
【ステップ解説】訪問看護請求の7ステップ
ここからは、実際の請求業務を7つのステップに分けて、それぞれのポイントを見ていきます。
- ステップ1:訪問実績の集計訪問看護記録・実施記録をもとに、利用者ごとの訪問日・訪問時間・提供した処置内容を月末に集計します。予定と実績にずれがないか(訪問できなかった日、緊急訪問が入った日など)をここで確認しておくと、後工程での修正が減ります。
- ステップ2:指示書・ケアプランとの整合確認訪問看護指示書の有効期間内であるか、介護保険利用者であればケアプラン・訪問看護計画書の内容と実績が一致しているかを確認します。指示書の期限切れや、計画にない訪問は返戻・査定の原因になりやすいポイントです。
- ステップ3:保険区分の判定利用者ごとに医療保険・介護保険のどちらで請求するかを確定します。厚生労働大臣が定める疾病等に該当する利用者や急性増悪時の特別訪問看護指示書がある場合など、月の途中で保険区分が切り替わるケースもあるため、最新の状態を確認します。
- ステップ4:レセプトコンピュータへの入力・加算算定訪問看護専用のレセプトコンピュータや介護請求ソフトに実績を入力し、緊急訪問看護加算・特別管理加算・24時間対応体制加算など、算定要件を満たす加算を反映させます。
- ステップ5:自己点検(返戻防止チェック)提出前に、利用者基本情報・保険情報・算定日数・加算の算定要件を自事業所内で再確認します。ダブルチェック体制を設けている事業所も多く、ここでの点検の丁寧さが返戻の発生率を大きく左右します。
- ステップ6:審査支払機関への提出医療保険は社会保険診療報酬支払基金または国保連、介護保険は国保連へ、原則として毎月1日から10日までの間に提出します。訪問看護療養費(医療保険)はオンライン請求が原則となっており、やむを得ない事情がある場合に限り経過措置として書面請求が認められています。
- ステップ7:審査結果の確認・入金確認提出後、審査支払機関で内容が審査されます。内容に疑義があれば返戻となり、指摘箇所を修正して再請求します。問題がなければ、サービス提供月からおおむね2ヶ月後を目安に給付費・療養費が入金されます。
POINT
介護保険の請求は、国民健康保険団体連合会(国保連)の公式案内で「毎月1日から10日までが受付期間」と明記されています(10日が土日祝日の場合は取り扱いが調整されます)。医療保険(訪問看護療養費)についても同様に月初め〜10日を提出期限とする運用が一般的とされていますので、事業所ごとの請求ソフト・審査支払機関からの案内で最終確認してください。
提出後のスケジュール|いつ入金される?
社会保険診療報酬支払基金が公表している令和8年度の支払予定日によれば、2月診療分の訪問看護療養費(医療保険)は4月21日に支払われる予定とされており、サービス提供月から数えておおむね2ヶ月後に入金されるスケジュールになっています。介護保険についても、複数の審査支払機関・事業者向け資料で「サービス提供の翌々月に給付費が振り込まれる」という運用が案内されています。
つまり、4月に提供したサービスの入金は6月頃になるのが一般的な目安です。この2ヶ月のタイムラグを前提に、資金繰りやレセプト代行費用の支払いタイミングを計画しておくと安心です。
注意
提出期限・支払予定日は年度や審査支払機関、返戻の有無によって変動します。正確な日付は、社会保険診療報酬支払基金・所在地の国保連合会が公表する最新の年間スケジュールを必ず確認してください。
請求ミスを防ぐための工夫・チェックポイント
先月、返戻が来てしまって修正に時間がかかりました。同じミスを繰り返さないために、何を意識すればいいですか?
返戻の多くは、指示書の期限切れ・加算の算定要件不備・保険情報の相違など、パターンが決まっています。チェックリストを作って毎月同じ手順で点検すれば、防げるミスがぐっと減りますよ。
- 訪問看護指示書・特別訪問看護指示書の有効期間内かどうか
- 利用者の保険証・被保険者証の記号番号や有効期限に変更がないか
- 加算の算定要件(回数制限・対象条件)を満たしているか
- 介護保険利用者の場合、ケアプラン・サービス提供票と実績が一致しているか
- 前月に返戻・保留となった分の再請求を忘れていないか
提出前の点検を効率化する具体的な視点は、関連記事「訪問看護レセプトの点検方法」でも詳しく解説していますので、あわせて確認してみてください。
よくある質問
医療保険と介護保険、どちらで請求するかはどう判断すればいいですか?
要介護・要支援認定を受けている利用者は原則として介護保険が優先されますが、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第七・第八)に該当する場合や、急性増悪等により特別訪問看護指示書が交付されている場合などは、認定の有無にかかわらず医療保険での請求となります。判断に迷う場合は、指示書の内容と利用者の認定状況を必ずセットで確認してください。
レセプトの提出期限はいつまでですか?
介護保険については、国民健康保険団体連合会の公式案内で「毎月1日から10日まで」と明記されています。医療保険(訪問看護療養費)についても同様に月初め〜10日を提出期限とする運用が一般的とされています。土日祝日と重なる場合の扱いは審査支払機関ごとに案内されるため、最新の年間スケジュールを確認しましょう。
訪問看護療養費(医療保険)の請求はオンラインでないといけませんか?
訪問看護療養費のオンライン請求は既に開始されており、原則としてオンラインでの請求が求められています。ただし、やむを得ない事情があるとして届出を行った訪問看護ステーションについては、期限付きの経過措置として書面による請求が認められる場合があります。詳細は所在地の国民健康保険団体連合会・支払基金の案内で確認してください。
提供したサービスの入金はいつ頃になりますか?
審査に問題がなければ、サービス提供月からおおむね2ヶ月後を目安に入金されます。例えば2月に提供したサービスの訪問看護療養費(医療保険)は、社会保険診療報酬支払基金の公表スケジュールでは4月21日が支払予定日とされています。返戻が発生した場合は、再請求から審査・入金までさらに1ヶ月以上ずれ込むことがあります。
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ステップ5・ステップ7で紹介した点検・返戻対応は、実際の作業ではより細かい確認が必要になります。返戻の主な原因と対策を先に押さえておくと、日々の点検の精度が上がります。
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まとめ|7ステップを押さえれば請求業務の見通しがよくなる
訪問看護の請求業務は、実績集計から入金確認まで複数のステップにまたがる作業ですが、全体の流れとタイミングを一度理解してしまえば、月ごとの見通しが立てやすくなります。
この記事のまとめ
- 訪問看護の請求は「実績確定→レセプト作成→点検・提出→審査後の対応」の7ステップで進む
- 医療保険・介護保険で提出先・書式が異なるため、保険区分の判定が最初の重要ポイント
- 提出期限は原則毎月1日〜10日、入金はサービス提供月からおおむね2ヶ月後が目安
- 返戻の多くは指示書期限・加算要件・保険情報の不備が原因。チェックリスト化で防止できる
スケジュール感をチームで共有しておくことが、月次の請求業務を安定させる一番の近道です。
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