「今回の改定で、うちの加算は結局いくらになったの?」——診療報酬改定のたびに、点数表とにらめっこしながらレセコンのマスタを直す作業に追われていませんか。訪問看護は加算の種類が多く、しかも同一建物の利用者数や訪問日数によって金額が細かく分かれるため、事務にとって最も間違えやすいポイントのひとつです。
この記事では、令和8年度診療報酬改定(令和8年6月1日施行)に対応した医療保険の訪問看護療養費における加算を、厚生労働省の告示・資料にもとづいて一覧化しました。点数の早見表としてはもちろん、今回の改定で何が新設・変更されたのかを押さえる用途にも使ってください。
この記事でわかること
- 令和8年度診療報酬改定(令和8年6月施行)で訪問看護療養費に何が変わったか
- 訪問看護基本療養費・訪問看護管理療養費に加算される項目と点数の一覧
- 機能強化型訪問看護管理療養費1〜4の違いと金額
- 今回新設された「包括型訪問看護療養費」「訪問看護遠隔診療補助料」「訪問看護物価対応料」の概要
- 加算の算定・レセプト記載でミスが起きやすいポイント
注意(対象範囲)
この記事は医療保険(訪問看護療養費)における加算を対象としています。介護保険(訪問看護費)の加算とは名称が似ていても点数体系が異なるため、利用者がどちらの保険で訪問看護を受けているかを必ず確認したうえで参照してください。
目次
令和8年度診療報酬改定で訪問看護療養費はどう変わった?
今回の改定、訪問看護にとってはどのくらい大きな内容なんですか?点数表の区分番号が増えている気がして戸惑っています……。
いい着眼点です。令和8年度診療報酬改定は令和8年6月1日施行で、訪問看護療養費の区分そのものが増えました。これまでの「01〜07」に加えて、「04 包括型訪問看護療養費」「06 訪問看護遠隔診療補助料」「08 訪問看護物価対応料」の3つが新設されています。まずは全体像から押さえていきましょう。
厚生労働省の資料によれば、今回の改定の柱は大きく4つです。
- 同一建物(単一建物)居住者への訪問看護について、訪問日数や居住人数に応じたきめ細かな評価への見直し
- 高齢者向け住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーション向けの「包括型訪問看護療養費」の新設
- 訪問看護管理療養費(月の初日)の評価充実と、月2日目以降の区分の細分化
- ICTを用いた医療情報連携やオンライン診療補助(D to P with N)に関する評価の新設
それでは、事務が実務で参照する頻度の高い「基本療養費への加算」「管理療養費への加算」の順に、点数を一覧で見ていきましょう。
【一覧表】訪問看護基本療養費に加算される項目
訪問看護基本療養費(区分01)には、次のような加算が設けられています。同一建物居住者数や訪問日数によってさらに細かく金額が分かれるものが多いため、下表は代表的な条件(同一建物内1〜2人などの基本パターン)で整理しています。
| 加算名 | 点数・単価 | 算定要件の要点 |
| 緊急訪問看護加算 | 2,650円(14日目まで)/2,000円(15日目以降) | 利用者・家族の求めに応じ、主治医の指示で緊急に訪問した場合 |
| 長時間訪問看護加算 | 5,200円 | 厚労大臣が定める長時間訪問を要する利用者。週1日限度(対象者は週3日) |
| 乳幼児加算 | 1,400円(通常)/1,800円(超重症児等) | 6歳未満の乳幼児への訪問看護 |
| 複数名訪問看護加算 | 2,200円〜4,500円(組み合わせ・建物内人数で細分化) | 複数名同時訪問が必要な利用者に、同意を得て複数名で訪問 |
| 難病等複数回訪問加算 | 3,300円〜4,500円(1日2回)/4,800円〜8,000円(1日3回以上) | 別表第七該当者・特別訪問看護指示書交付者への1日複数回訪問 |
| 特別地域訪問看護加算 | 所定額の100分の50 | 離島・山村等の特別地域、移動時間1時間以上等の要件 |
| 夜間・早朝訪問看護加算 | 800円〜2,100円(建物内人数・日数で細分化) | 18時〜22時、6時〜8時の時間帯に訪問 |
| 深夜訪問看護加算 | 4,000円〜4,200円(建物内人数・日数で細分化) | 22時〜6時の時間帯に訪問 |
POINT
複数名訪問看護加算・難病等複数回訪問加算・夜間早朝訪問看護加算・深夜訪問看護加算は、令和8年度改定で「同一建物内の対象人数」と「月の訪問日数」の組み合わせでさらに細分化されました。同一建物(同一敷地内の建物を含む)に住む利用者が多いステーションほど、区分の当てはめミスが起きやすくなっています。
【一覧表】訪問看護管理療養費に加算される項目
訪問看護管理療養費(区分02)にも、月1回や退院時に限定して算定できる加算が数多くあります。
| 加算名 | 点数・単価 | 算定要件の要点 |
| 24時間対応体制加算 | 6,800円(負担軽減の取組あり)/6,520円(それ以外) | 24時間対応体制の届出と利用者の同意。月1回限度 |
| 特別管理加算 | 2,500円(通常)/5,000円(重症度等の高い状態) | 特別な管理を要する状態の利用者への計画的管理。月1回限度 |
| 退院時共同指導加算 | 8,000円(別に定める疾病等は2回まで) | 退院・退所時に医療機関等と共同で在宅療養の指導 |
| 特別管理指導加算 | 2,000円 | 退院時共同指導加算の対象者が特別管理加算の対象状態にある場合に加算 |
| 退院支援指導加算 | 6,000円(通常)/8,400円(長時間の指導) | 退院日に保険医療機関以外の場所で療養上必要な指導 |
| 在宅患者連携指導加算 | 3,000円 | 歯科訪問診療・訪問薬剤管理指導と情報共有し指導。月1回限度 |
| 在宅患者緊急時等カンファレンス加算 | 2,000円 | 状態急変時に主治医等と共同でカンファレンス実施。月2回限度 |
| 精神科重症患者支援管理連携加算 | 8,400円/5,800円 | 精神科在宅患者支援管理料2を算定する利用者との連携。月1回限度 |
| 看護・介護職員連携強化加算 | 2,500円 | 喀痰吸引等を行う介護職員への支援。月1回限度 |
| 専門管理加算 | 2,500円(イ・ロともに) | 緩和ケア等の専門研修を受けた看護師、または特定行為研修修了看護師による計画的管理。月1回限度 |
| 訪問看護医療DX情報活用加算 | 50円 | 電子資格確認で利用者の診療情報を取得したうえで管理。月1回限度 |
| 訪問看護医療情報連携加算(新設) | 1,000円 | 連携する医療機関等とICTで診療情報等を共有し管理。月1回限度 |
「特別管理加算」と「特別管理指導加算」、名前が似ていて混同しそうです……。
そこは事務でも間違えやすいところですね。特別管理加算は月1回・単独で算定できる加算ですが、特別管理指導加算は退院時共同指導加算とセットで、かつ利用者が特別管理加算の対象状態にある場合にのみ上乗せされる加算です。算定条件が別物だと覚えておいてください。
機能強化型訪問看護管理療養費1〜4の違いと金額
訪問看護管理療養費の「月の初日」評価には、体制の手厚さに応じた機能強化型の区分があります。令和8年度改定では、地域と連携して精神科訪問看護を提供するステーションを評価する機能強化型4が新設されました。
| 区分 | 月の初日の点数 | 主な評価対象 |
| 機能強化型1 | 13,760円 | 常勤看護職員7人以上等、ターミナルケア・重症児受け入れの実績が手厚い体制 |
| 機能強化型2 | 10,460円 | 常勤看護職員5人以上等、地域の人材育成等の役割も担う体制 |
| 機能強化型3 | 9,030円 | 常勤看護職員4人以上等、重症度の高い利用者受け入れの体制 |
| 機能強化型4(新設) | 9,030円 | 地域と連携して精神科訪問看護を提供する体制 |
| 上記以外 | 7,710円 | – |
月の2日目以降の訪問看護管理療養費についても、これまでの「1・2」という届出区分が統合され、単一建物居住利用者の人数と訪問日数によって3,010円〜2,010円の範囲で細分化されています。
令和8年度改定で新設された療養費・加算
今回の改定で新設された主な項目は次の3つです。
| 新設項目 | 点数・単価 | 概要 |
| 包括型訪問看護療養費(区分04) | 7,010円〜15,510円(訪問看護時間・単一建物居住者数で変動) | 高齢者向け住まい等に併設・隣接するステーションが、24時間体制で頻回の訪問看護を行った場合に1日単位で算定 |
| 訪問看護遠隔診療補助料(区分06) | 2,650円(訪問看護ステーションの看護師等) | D to P with N(オンライン診療に看護師等が同席)における訪問・補助の評価 |
| 訪問看護物価対応料(区分08) | 1:60円(月の初日)/20円(2日目以降) 2:20円 | 物価上昇に段階的に対応するための評価。令和9年6月以降は所定額の200%に引き上げ |
ターミナルケア療養費・情報提供療養費・ベースアップ評価料もあわせて確認
加算とあわせて算定機会の多い療養費も一覧にしておきます。
| 項目 | 点数・単価 | 概要 |
| 訪問看護ターミナルケア療養費1 | 25,000円 | 在宅または特養等(看取り介護加算等の算定者を除く)で死亡した利用者へのターミナルケア |
| 訪問看護ターミナルケア療養費2 | 10,000円 | 特養等で死亡した利用者(看取り介護加算等の算定者)へのターミナルケア |
| 訪問看護情報提供療養費1〜3 | 各1,500円 | 市町村・学校・入院先医療機関等への情報提供。利用者1人につき月1回等 |
| 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ) | 1,050円(令和9年6月以降は2,100円) | 賃金改善に取り組む届出ステーションが月1回算定 |
| 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ) | 30円〜1,080円(賃金改善の実施状況で段階的に設定) | ベースアップ評価料(Ⅰ)の算定者について、さらに細分化した区分で月1回算定 |
加算の算定・レセプト記載でよくあるミスと防止のポイント
- 改定日をまたぐ請求の混在に注意令和8年6月1日の施行日をまたぐ月は、旧点数と新点数が混在しないよう、レセコンのマスタ更新日と実際の訪問日を突き合わせて確認する。
- 「同一建物」の範囲の見直しを反映する令和8年度改定で、同一建物の判定に同一敷地内の建物も含まれるよう見直されている。同一敷地内に複数の建物がある利用者について、加算の単価区分が変わっていないか確認する。
- 複数名訪問看護加算・難病等複数回訪問加算の人数区分を確認する同一建物内の該当人数(1〜2人/3〜9人/10〜19人/20〜49人/50人以上)を月ごとに数え直し、区分がずれていないか確認する。
- 特別管理加算・専門管理加算の対象疾患・状態を裏付ける記録を残す算定の根拠となる主治医の指示内容や利用者の状態を訪問看護記録書・報告書に明記し、算定要件を満たしていることを説明できるようにしておく。
- 新設項目の届出状況を確認する包括型訪問看護療養費や訪問看護医療情報連携加算など、地方厚生局長等への届出が算定要件になっている項目は、届出済みかどうかを算定前に必ず確認する。
よくある質問
令和8年度診療報酬改定はいつから適用されますか?
令和8年6月1日から適用されています。改定率は診療報酬全体でプラス3.09%(令和8・9年度の2年度平均)とされ、訪問看護療養費についても令和8年6月1日から新しい点数・区分が適用されます。
訪問看護療養費の加算は介護保険の訪問看護費の加算と同じですか?
いいえ、異なります。この記事で扱っている加算は医療保険の訪問看護療養費に関するものです。介護保険の訪問看護費には、名称が似ていても点数体系や算定要件が異なる加算があるため、利用者がどちらの保険制度で訪問看護を利用しているかを必ず確認してください。
「包括型訪問看護療養費」とはどのような場合に算定できますか?
高齢者向け住まい等に併設または隣接する訪問看護ステーションが、その住まいに居住する利用者に対して、24時間体制で計画的または随時の対応による頻回の訪問看護を行った場合に、1日当たりの訪問時間と単一建物居住利用者数に応じて算定する療養費です。令和8年度診療報酬改定で新設されました。
加算の算定漏れや誤りに気づいた場合はどうすればいいですか?
提出前であれば請求内容を訂正し、提出後に誤りが判明した場合は取下げや再請求などの手続きが必要になります。レセプト返戻再請求の手続きや、返戻・査定として戻ってきた場合の対応の流れは、別記事で詳しく解説しています。
まとめ|令和8年度改定は「同一建物区分の細分化」と「3つの新設項目」がカギ
訪問看護療養費の加算は種類が多く、令和8年度改定でさらに細分化されました。まずは自分のステーションでよく算定する加算から、新しい点数・区分に置き換わっているかを確認しましょう。
この記事のまとめ
- 令和8年度診療報酬改定は令和8年6月1日施行。訪問看護療養費に「04包括型」「06遠隔診療補助料」「08物価対応料」が新設された
- 複数名訪問看護加算・難病等複数回訪問加算・夜間早朝/深夜訪問看護加算は、同一建物内の対象人数と訪問日数でさらに細分化されている
- 訪問看護管理療養費には24時間対応体制加算・特別管理加算など12種類前後の加算があり、それぞれ算定要件・上限回数が異なる
- 機能強化型訪問看護管理療養費は1〜4の4区分。今回、地域と連携する精神科訪問看護を評価する機能強化型4が新設された
点数の思い込みによる誤請求を防ぐには、厚生労働省の告示・通知を都度確認する習慣が最も確実です。