訪問看護療養費明細書(レセプト)の「心身の状態」欄は、自由記載の部分があるうえに、該当する場合だけ疾病コードを追記するというルールがあり、初めて担当すると何をどこまで書けばよいのか迷いやすい欄です。書き方があいまいなまま提出してしまい、返戻になってから慌てて調べたという経験がある方も少なくないはずです。
この記事では、訪問看護レセプトの「心身の状態」欄に記載する内容を整理したうえで、記載例のイメージ、該当する場合に記載する疾病等コード(別表7・別表8)の一覧、記載ミスが返戻につながる注意点までをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 「心身の状態」欄に記載する内容の全体像
- ADL部分の記載例(イメージ)と書き方のポイント
- 該当する場合に記載する別表7・別表8の疾病等コード一覧
- 超重症児・準超重症児、GAF欄の記載ルール
- 記載ミスが返戻につながる理由と防ぐためのポイント
目次
訪問看護レセプトの「心身の状態」欄とは
「心身の状態」欄は、訪問看護療養費明細書(様式第四の二・医療保険分のレセプト)にある記載項目のひとつです。国民健康保険団体連合会が公表している請求事務の手引きでは、この欄について次のように説明されています(確度高:千葉県国民健康保険団体連合会「訪問看護療養費請求事務の手引」で確認。様式自体は厚生労働省告示による全国共通の様式です)。
| 記載する内容 | 記載するタイミング |
| 利用者の心身の状態・ADLの状態(自由記載) | すべての利用者について記載 |
| 別表7・別表8の疾病等コード | 該当する疾病・状態がある場合のみ記載 |
| 超重症児・準超重症児のコード(91・92) | 該当する場合のみ記載 |
| GAF(機能の全体的評価尺度)のコードと判定年月日 | 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅲ)を算定する場合のみ記載 |
明細書の様式上は、「基準告示第2の1に規定する疾病等の有無」として「1 別表7」「2 別表8」「3 無」のいずれかを選ぶ欄も設けられており、該当する場合は該当コードとあわせて記載する仕組みになっています。
「心身の状態」欄(ADL部分)の記載例
「心身の状態を具体的に記載」と言われても、何をどのくらい詳しく書けばいいのか分かりません……。
ポイントは、看護師の訪問記録に書かれているADL(日常生活動作)の状態を、そのまま簡潔にまとめることです。いくつかイメージ例を見てみましょう。
手引きには「利用者の状態やADLの状態を具体的に記載する」とだけ示されており、決まった文例があるわけではありません。以下は、実務でよく使われる書き方のイメージ例です(実際の記載は、必ず訪問記録・看護計画に基づいた利用者本人の状態を記載してください)。
| 状態の例 | 記載イメージ |
| 寝たきりに近い状態 | 寝たきり状態。全介助で体位変換・清拭を実施。褥瘡予防のため2時間毎の体位変換を指導。 |
| 認知症で見守りが必要 | 認知症あり。移動時は見守りが必要。服薬管理は訪問時に声かけ・確認を実施。 |
| 在宅酸素療法を利用 | 在宅酸素療法を実施中。労作時の呼吸状態を観察し、機器の使用状況を確認。 |
| 精神疾患で生活リズムが不安定 | 精神症状により生活リズムが不安定。服薬状況・症状の変化を確認し、生活指導を実施。 |
POINT
ADL部分は、看護師個人の主観的な感想ではなく、訪問看護記録・訪問看護計画書に記載されている客観的な状態(できること・できないこと、介助の程度、症状の変化)をベースにまとめるのが基本です。記載内容が記録と食い違っていると、審査で疑義照会の対象になることがあります。
該当する場合に記載する疾病等コード|別表7・別表8一覧
利用者が特定の疾病・状態に該当する場合は、ADLの記載に加えて、下記の別表7・別表8のコードを記載します(確度高:千葉県国民健康保険団体連合会の手引きに掲載の別表2「心身の状態欄 別表7及び別表8 疾病等コード表」で確認)。これらのコードは、特別管理加算や医療保険での算定可否の判断にも関わる重要な項目です。
別表7(コード01〜20)
| コード | 疾病・状態 |
| 01 | 末期の悪性腫瘍 |
| 02 | 多発性硬化症 |
| 03 | 重症筋無力症 |
| 04 | スモン |
| 05 | 筋萎縮性側索硬化症 |
| 06 | 脊髄小脳変性症 |
| 07 | ハンチントン病 |
| 08 | 進行性筋ジストロフィー症 |
| 09 | パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病〔ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る〕) |
| 10 | 多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群) |
| 11 | プリオン病 |
| 12 | 亜急性硬化性全脳炎 |
| 13 | ライソゾーム病 |
| 14 | 副腎白質ジストロフィー |
| 15 | 脊髄性筋萎縮症 |
| 16 | 球脊髄性筋萎縮症 |
| 17 | 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 |
| 18 | 後天性免疫不全症候群 |
| 19 | 頸髄損傷 |
| 20 | 人工呼吸器を使用している状態の者 |
別表8(コード41〜57)
| コード | 疾病・状態 |
| 41 | 在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態にある者 |
| 42 | 在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者 |
| 43 | 気管カニューレを使用している状態にある者 |
| 44 | 留置カテーテルを使用している状態にある者 |
| 45 | 在宅自己腹膜灌流指導管理を受けている状態にある者 |
| 46 | 在宅血液透析指導管理を受けている状態にある者 |
| 47 | 在宅酸素療法指導管理を受けている状態にある者 |
| 48 | 在宅中心静脈栄養法指導管理を受けている状態にある者 |
| 49 | 在宅成分栄養経管栄養法指導管理を受けている状態にある者 |
| 50 | 在宅自己導尿指導管理を受けている状態にある者 |
| 51 | 在宅人工呼吸指導管理を受けている状態にある者 |
| 52 | 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理を受けている状態にある者 |
| 53 | 在宅自己疼痛管理指導管理を受けている状態にある者 |
| 54 | 在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者 |
| 55 | 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者 |
| 56 | 真皮を越える褥瘡の状態にある者 |
| 57 | 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者 |
注意
特別管理加算については、疾病コード41〜44に該当する場合は5,000円、45〜57に該当する場合は2,500円が算定可能とされています(確度高:千葉県国民健康保険団体連合会の手引きで確認)。ただし特別管理加算の算定には別途、厚生局への届出が必要です。算定額の詳細や最新の取り扱いは、必ず自事業所が提出先とする国保連の案内・厚生局の届出要件を確認してください。
超重症児・準超重症児、GAF欄の記載ルール
次のようなケースでは、追加の記載が必要になります。
- 超重症児に該当する場合:コード「91」を記載
- 準超重症児に該当する場合:コード「92」を記載
- 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅲ)を算定する場合:月の初日の訪問看護時に判定したGAF(機能の全体的評価尺度)のコードと、判定した年月日を記載
GAF尺度は、成人の社会的・職業的・心理的機能を1〜100の数値で評価する尺度です。精神科の訪問看護に関わる場合は、この欄の記載漏れがないよう特に注意が必要です。
記載ミスがあるとどうなるか|返戻の注意点
「心身の状態」欄は、記載ミスが返戻に直結しやすい項目として、審査支払機関の手引きでも名指しで注意喚起されています。オンライン請求の場合、一部負担金・指示期間・心身の状態等の記載内容に誤りがあると、審査支払機関側では修正ができず、そのまま返戻の扱いになるとされています(確度高:千葉県国民健康保険団体連合会の手引きで確認)。
返戻された場合は、内容を確認したうえで修正し、再請求する必要があります。返戻・再請求の具体的な流れはレセプト返戻再請求とは?手続きの必要性や流れを解説!で詳しく解説しています。
「心身の状態」欄を記載するときのチェックポイント
- ADL部分は、訪問看護記録・訪問看護計画書に基づいた客観的な状態を記載しているか
- 別表7・別表8に該当する疾病・状態がある場合、コードの記載漏れがないか
- 超重症児・準超重症児に該当する場合、コード91・92を記載しているか
- 精神科基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)を算定する場合、GAFのコード・判定年月日を記載しているか
- 特別管理加算を算定する場合、該当コードと加算額が一致しているか
レセコンでの入力そのものに不安がある方は、レセコン入力は未経験でもできる?習得のコツ4つを解説!もあわせて参考にしてください。
「心身の状態」欄には何を書けばいいですか?
利用者のADL(日常生活動作)の状態を、訪問看護記録・訪問看護計画書に基づいて具体的に記載します。該当する場合は、別表7・別表8の疾病等コードや、超重症児・準超重症児のコード、GAFのコードもあわせて記載します。
別表7・別表8にはどんな決まった書き方がありますか?
別表7・別表8は、該当する疾病・状態ごとにコードが定められた一覧表です。該当する場合はコードそのものをレセプトに記載します。文章での説明ではなく、定められたコードを正確に記載することが求められます。
GAF欄はどんな場合に記載しますか?
精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅲ)を算定する場合に記載します。月の初日の訪問看護時に判定したGAF(機能の全体的評価尺度)のコードと、判定した年月日を記載します。
「心身の状態」欄の記載ミスは返戻の原因になりますか?
なりやすい項目のひとつです。特にオンライン請求では、一部負担金・指示期間・心身の状態等の記載内容に誤りがあると、審査支払機関側で修正ができず返戻になるとされています。請求前の確認が重要です。
ADL部分の記載に決まった文例はありますか?
公式に定められた文例はありません。利用者ごとの実際の状態を、訪問記録に基づいて具体的にまとめる必要があります。記事内の記載イメージはあくまで書き方の参考としてご覧ください。
あわせて読んでおきたい関連記事
細かい記載ルールの多いレセプト業務を専門会社に任せるという選択肢について、まずは仕組みから知っておきたい方はこちらをご覧ください。
関連記事を読む
まとめ|「心身の状態」欄は記録との整合性がすべて
「心身の状態」欄は、ADLの具体的な記載に加えて、該当する場合のみ疾病等コード・超重症児コード・GAFを記載するという構造になっています。書き方に迷ったときは、訪問看護記録・計画書の内容から離れずにまとめることが、正確な記載への一番の近道です。
この記事のまとめ
- ADL部分は訪問看護記録・計画書に基づいて具体的に記載する
- 別表7(コード01〜20)・別表8(コード41〜57)に該当する場合はコードを記載する
- 超重症児・準超重症児はコード91・92、精神科算定時はGAFのコード・判定日を記載する
- 心身の状態の記載ミスは返戻に直結しやすいため、提出前の確認が重要
- 特別管理加算の算定額はコードごとに異なるため、コードと金額の一致も確認する
次にレセプトを作成するときは、この記事のコード一覧を手元に置きながら記載内容を見直してみてください。
次に読むべき関連記事
レセプト業務を外部委託した場合の具体的なメリットを知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
関連記事を読む