- 「訪問看護のスケジュールをホワイトボードで管理するメリット・デメリットとは?」
- 「ホワイトボードを効果的に運用するコツも知りたい」
このような悩みにお答えします。
訪問看護には、今もホワイトボードでスケジュールを管理している事業所もあります。
ICTツールと比べてアナログな方法ではありますが、視認性・即時性・共有性に優れており、特に小規模なステーションでは有効な管理方法です。
一方で、情報の更新漏れや履歴が残らないといったデメリットもあるため、適切な工夫とルール作りが欠かせません。
本記事では、日々のスケジュール管理を担っている事務職員へ向けて、訪問看護のスケジュールをホワイトボードで管理するメリットやデメリットを解説します。
また、効果的に運用するコツもみていきましょう。
目次
訪問看護のスケジュールをホワイトボードで管理するメリット
ホワイトボードによるスケジュール管理には、デジタルツールにはない独特のメリットがあります。
メリットを活かすことで、効率的な業務運営が可能になるでしょう。
以下でメリットを解説します。
ひと目で状況がわかり確認しやすい
ホワイトボードの強みは、ステーション内の「見える化」にあります。
訪問順序や担当看護師、急変対応の状況などが一目で把握でき、スタッフ全員が同じ情報を瞬時に共有可能です。
パソコンやタブレットの操作に不慣れなスタッフでも、文字を読むだけで必要な情報を得られ、年齢層の幅広いチームでも安心して活用できるでしょう。
また、朝礼時や申し送りの際にも、全員でボードを見ながら情報共有できるため、伝達漏れを防ぐ効果もあります。
即時の修正・更新が可能
急な予定変更やキャンセルが発生した際、ホワイトボードなら即座に書き換えられます。
システムへのログインや画面の読み込みを待つ必要がなく、マーカー一本で情報を更新できる手軽さは大きな魅力でしょう。
色分けされたマーカーや記号、マグネットを使って視認性を高めれば、緊急度や重要度の表現も可能です。
今この場の情報共有ができる
出勤直後や訪問から戻った際、ホワイトボードを確認すれば最新の状況を即座に把握できます。
ICTツールのように通知を見逃したり、アプリを開く手間がかかったりしないため、情報伝達の抜け漏れを防止する効果があります。
チーム全員が共通の認識をもてる安心感も、ホワイトボード管理の大きなメリットです。
特に緊急時や混乱した状況でも、みなでボードを囲んで状況を確認すれば、冷静に判断したうえで迅速に対応できます。
ホワイトボード運用のデメリットと注意点
ホワイトボードでスケジュールを管理する場合、デメリットも把握しておきましょう。
以下で解説します。
記入方法のバラつきで見づらくなる
事務職員以外のスタッフもホワイトボードに記載する場合、記入方法が統一されていないとボード全体が見づらくなってしまいます。
記号や略語の統一、文字の大きさや書き方のルールを決めておかないと、情報の混乱や誤解の原因となってしまいます。
たとえば、「訪問済み」を表す記号が人によって「✓」だったり「○」だったりすると、事務職員が一目で状況を把握しにくくなるかもしれません。
また、文字が小さすぎて遠くから見えない、消し忘れで古い情報が残っているといった問題も発生しがちです。
こういったトラブルを防ぐには、基本的には事務職員が記入する形をとりつつ、看護師も手を加える場合は記入のルールを明文化しておくことが大切です。
履歴が残らずトラブル時に確認できない
ホワイトボードの情報は常に上書きされるため、過去の記録が残りません。
「誰が・いつ・何を書いたか」が不明になってしまうため、後日トラブルが発生した際の確認作業が困難になります。
利用者さんやご家族からの問い合わせがあった場合、証拠となる記録がないことで対応に苦慮することがあります。
重要な情報を消す場合は、写真や紙ベースでのバックアップも併用しておくとよいでしょう。
ステーション外では確認できない
訪問中のスタッフには、ホワイトボードの情報をリアルタイムで伝えられません。
外部との連携や情報共有も難しく、他の事業所や医療機関との調整時に不便を感じることがあります。
緊急時の連絡や急な予定変更があった場合、訪問先にいるスタッフに情報を伝達する手段が限られてしまいます。
そのため、携帯電話やメッセージアプリなどの補助的なツールも併用しておいたほうが安心です。
ホワイトボードを効果的に運用するコツ
ホワイトボードを効果的に運用するコツを以下で解説します。
色や記号で視覚的に整理する
以下のように、担当の看護師ごとに色分けすれば一目で識別しやすくなります。
といった具合に、担当者ごとに決まった色を使用します。
さらに、急変の対応中や休日なども表現可能です。
- 「!」マークで急変対応中を表示
- 「休」マークで休日を表示
このように一目でわかる記号を統一しておくと、誰が何をしている状況かがわかりやすくなります。
更新タイミングを明確にする
情報の更新漏れを防ぐため、事務職員が更新するタイミングを明確に決めておきます。
朝礼後と業務終了後の2回更新する、看護師からの報告を受けた際は随時更新するなど、ルールを以下のように具体的に設定するとよいでしょう。
- 朝礼後:看護師の当日訪問スケジュールと担当の利用者さん名を確認
- 昼休み:午前中の訪問状況や急な予定変更を追記
- 業務終了前:当日の訪問実績と翌日の看護師スケジュールを記入
このように更新タイミングを明確にすることで、看護師のスケジュール情報の更新漏れを防ぎ、常に最新の状況を把握できます。
看護師から訪問状況や予定変更の報告を受けた際は、事務職員が速やかにボードのスケジュールを更新するという流れを作ることで、リアルタイムでの情報共有も可能になります。
サブツールを併用する
ホワイトボードの弱点を補うため、ICTツールとの併用も検討しましょう。
朝礼後にホワイトボードの写真を撮影してグループチャットで共有し、重要な変更があった際は随時写真を更新します。さらに、週末には1週間分の写真をフォルダにまとめて保存しておきましょう。
これにより、履歴の確認やステーション外での情報確認も可能になり、ホワイトボードの弱点をカバーできます。
スケジュール管理にホワイトボードが向いているステーションの特徴
ホワイトボードによるスケジュール管理が特に効果的なステーションには、共通した特徴があります。
自事業所の状況と照らし合わせて、導入の参考にしてください。
小規模の事業所
スタッフ数が10名程度までの小規模なステーションでは、ホワイトボード管理が非常に効果的です。
出勤・退勤時に自然とホワイトボードを確認する習慣が身につきやすく、全員が同じタイミングで情報を共有できます。
対面でのコミュニケーションと相性がよく、ボードを見ながらの打ち合わせや相談も自然に行えます。
朝礼時にボードを囲んでの情報共有は、チームの一体感を高める効果もあり、即時性のある連携が可能です。
ICTツールの導入が難しい事業所
高齢のスタッフが多い事業所や、デジタル管理に慣れていないチームでは、ホワイトボードが適しています。
初期費用や複雑な設定作業が不要で、誰でも簡単に始められる手軽さが大きな魅力です。
パソコンやタブレットの操作が不安なスタッフでも、文字を書く・読むという基本的なスキルがあれば十分に活用できます。
段階的にデジタル化を進める前段階として、まずはホワイトボードで情報共有の基盤を作っておくとよいでしょう。
新人が多く「見える形」で慣れてもらいたい事業所
経験の浅い事務職員や新人看護師には、視覚的に情報を確認できるホワイトボードが有効です。
事務職員がボードにスケジュールを記入する様子を見ることで、訪問看護の業務の流れやスケジュール管理のポイントが自然に身につきます。
新人事務職員は、先輩事務職員がボードを使ってスケジュールを管理する様子を観察し、重要なポイントや注意事項を学習でき、OJTの一環としても機能するでしょう。
新人研修の際にも、事務職員が実際のホワイトボードを使って看護師の訪問パターンや業務の流れを説明することで、より実践的な教育ができます。
新人看護師にとっても、事務職員が管理するスケジュールボードを見ることで、自分の訪問予定や他の看護師の動きを把握しやすくなり、業務に慣れるまでの不安が和らぐでしょう。
まとめ
訪問看護のスケジュール管理をホワイトボードで行うのは、一見アナログで古臭いと感じる方がいるかもしれません。
しかし、実用性は高いといえます。
視認性・即時性・共有性という優れた特徴を活かし、運用ルールの明確化や補助ツールの活用で弱点をカバーすることでうまく運用できるでしょう。
完璧なシステムを求めるよりも、自事業所の規模やICT活用状況に合わせた「ちょうどいい仕組み」を整えていくことが重要です。
ぜひ自事業所に最適なホワイトボードによる管理方法を見つけてください。