訪問看護ステーションでは、看護師が訪問中に電話がかかってくることが多く、事務職員が対応する機会が頻繁にあります。
しかし、事務職員によって対応にばらつきがあったり、新人職員が戸惑ったりするケースも少なくありません。
そこで役立つのが「電話対応マニュアルの整備」です。
マニュアルがあることで、新人職員の即戦力化が進み、職員間の認識統一が図れ、不適切な対応によるクレームも予防できます。
本記事では、訪問看護ステーションの電話対応マニュアルの内容や活用方法を管理者目線で詳しく解説します。
目次
訪問看護の電話対応に求められる基本スキル
訪問看護ステーションの電話対応には、一般的な事務職とは異なるスキルが求められます。
たとえば、看護師が訪問中に利用者やご家族から緊急の連絡が入ることもあり、そうした場合には状況を瞬時に判断する力が不可欠です。
また、相手の不安や戸惑いに寄り添う共感力や、丁寧で配慮のある応対も重要です。
さらに、電話で得た情報を正確に看護師や管理者に伝える伝達力や、日常的に報告・連絡・相談を徹底する意識も求められます。
加えて、複雑な保険制度や医療・介護の専門用語についても、ある程度の理解が必要です。
このように訪問看護の事務員には、一般的な事務業務の枠を超えた、医療・介護の現場を支えるスキルと判断力が求められます。
訪問看護の電話対応マニュアルに盛り込むべき内容
効果的な電話対応マニュアルを作成するには、以下の4つの要素を盛り込みましょう。
- 電話を受けるときの共通ルール
- 用件・氏名・連絡先の確認項目
- よくある対応パターン別の応答例
- 取り次ぎ判断のフロー図・例外対応の指針
これらの要素を体系的に整理することで、誰が電話対応を行っても一定の品質を保てるマニュアルが完成します。
1.電話を受けるときの共通ルール
電話を受けるときは、以下のように文言や話し方を決め、すべての職員が同じ挨拶をできるようにしましょう。
- 名乗る順番:ステーション名→個人名の順で話す
- 声のトーン:明るく親しみやすい声で話す
- 話すスピード:ゆっくりと聞き取りやすいスピードで話す
また、呼び出し音がなったらは3回以内にとる、受話器は利き手と反対の手で持つなど、細かなマナーも統一しておくのをおすすめします。
2.氏名・用件・連絡先の確認項目
必要な情報を正確に聞き取れるように、用件・氏名・連絡先の3項目を必ず確認することをマニュアルに組み込みましょう。
まず「どちらさまでしょうか」と丁寧にお名前を確認し、利用者さんなのか、ご家族なのか、事業所の方なのかを把握します。
用件については、要点を簡潔に確認するとともに、緊急性の有無も把握できるようにしましょう。
また、折り返しの連絡が必要な場合は、相手の電話番号と、折り返す時間帯も必ず確認してください。
「恐れ入りますが、お電話番号を教えていただけますでしょうか」「何時頃でしたらご都合よろしいでしょうか」といった丁寧な言い回しを統一しておくと安心です。
3.よくある対応パターン別の応答例
事務職員が遭遇しやすい場面ごとに、具体的な応答例を用意しておきましょう。
- 「申し訳ございませんが、担当の○○は現在訪問に出ております」
- 「お急ぎでしたら、別の看護師がおりますが、いかがいたしましょうか」
といったように、定型文を決めておくと慌てずに対応できます。
折り返し対応の際は、「○時頃に戻る予定ですので、その後お電話させていただきます」のように、具体的な時間の目安を伝えておきましょう。
「ちょっとわかりません」「たぶん大丈夫だと思います」
といった曖昧な表現は避けるべき言葉として明記しておきます。
4.取り次ぎ判断のフロー図・例外対応の指針
電話の内容によって、事務職員が対応できるもの、看護師に取り次ぐもの、管理者の判断が必要なものを明確に分類したフローチャートを作成しましょう。
たとえば、以下のように分類します。
- 事務職員がそのまま対応する内容:訪問日程の変更や利用料金に関する質問
- 看護師が対応する内容:利用者さんの体調に関する相談
- 管理者が対応する内容:苦情や契約に関する相談
ただし、上記以外の内容で判断に迷った場合は、「わからない場合は必ず上司に確認する」と明記しておきましょう。
実用性の高いマニュアルにするための工夫
せっかくマニュアルを作成しても、現場で活用されなければ意味がありません。
実用性の高いマニュアルにするには、以下の4つの工夫が効果的です。
- 現場の失敗事例から逆算してルール化する
- 文字だけでなく図解・テンプレートを活用する
- 研修やOJTで活用しやすい構成にする
- 改訂しやすいフォーマットで運用する
それぞれ見ていきましょう。
現場の失敗事例から逆算してルール化する
実用的なマニュアルは、実際に現場で起きた問題や失敗から学んで作られたものです。
過去に発生したクレームや混乱した事例を振り返り、「なぜそれが起こったのか」「どうすれば防げたのか」を分析してルールに反映させましょう。
たとえば、「利用者さんの体調悪化の連絡を受けたが、緊急性の判断を誤って対応が遅れた」という事例があれば、緊急度判断の基準を具体的に示すページを追加します。
ルールを守る理由や背景も併せて説明することで、職員の納得度が高まり、マニュアルの定着率も向上します。
「ありがちな誤解や対応ミス」を想定した記述にすることで、同じ失敗の再発防止につながるでしょう。
文字だけでなく図解・テンプレートを活用する
文字だけのマニュアルは読みにくく、忙しい現場では敬遠されがちです。
フローチャートやイラストを活用して、視覚的に理解しやすい構成にしましょう。
「電話対応の流れ」を図解で示したり、「緊急度判断チャート」をフローチャート形式で作成したりすると、瞬時に必要な情報を把握できます。
忙しい現場でも「パッと見て、すぐわかる」工夫を随所に盛り込むことが、マニュアル活用には重要です。
研修やOJTで活用しやすい構成にする
マニュアルは、研修資料や新人教育の教材としても活用できるように設計しましょう。
ロールプレイの台本として使えるように、実際の会話例を豊富に掲載します。
また、「良い対応例」と「避けるべき対応例」を並べて掲載すれば違いが明確になり、教育効果も高まります。
「このような場合はどう対応しますか?」といった問いかけ形式のページを設けることで、職員同士のディスカッションも促進されるでしょう。
新人職員が段階的にスキルアップできるように、基礎編・応用編・上級編のような構成にするのも効果的です。
改訂しやすいフォーマットで運用する
マニュアルは一度作って終わりではなく、現場の変化に合わせて継続的に更新する必要があります。
WordやExcelなど、複数の職員が編集・共有しやすいデジタル形式で作成しましょう。
更新履歴を残して、いつ・誰が・どの部分を変更したかを把握できるようにしておくと、変更点の確認や職員への周知もスムーズに行えます。
定期的な見直しのタイミング(四半期ごと、年2回など)を決めて、現場の声を反映させる仕組みも整えておきましょう。
職員から「この部分がわかりにくい」「こんなケースが追加で必要」といった意見を収集し、継続的に改善していくのが重要です。
まとめ
訪問看護の電話対応マニュアルを作成することで、教育の効率化と対応品質の均質化が図れます。
誰が電話をとっても相手に安心してもらえる体制を整えておくと、訪問看護ステーション全体の信頼向上につながります。
管理者にとっては、マニュアルの作成だけでなく、運用・更新まで見据えた「使えるマニュアル」を目指すことが重要です。
現場の職員の声を積極的に反映させながら、実践的な人材育成と仕組み化の両立を図り、より良い訪問看護サービスの提供を実現していきましょう。
電話対応の基本を押さえたい方は、「訪問看護の電話対応!流れやよくあるミス・対応力を高めるコツ」も参考にしてください。
ビジケア訪問看護事務マガジン
訪問看護の電話対応!流れやよくあるミス・対応力を高めるコツ | ビジケア訪問看護事務マガジン
「訪問看護の電話対応にはどんな内容があるのだろうか?」 「電話対応の流れやミスをしないコツを知りたい」 このような悩みを抱えている訪問看護の事務職員に役立つ記事で…