訪問看護ステーションの事務業務において、自分たちに落ち度がないのに理不尽なクレームを受けると、どう対応していいか悩みますよね。
「相手を怒らせずに、こちらの正当性を主張するにはどうすればいいのでしょうか?」
このような悩みにお答えします。
クレーム対応において「非がない場合」の対処法は、通常の謝罪中心の対応とは全く異なります。
安易に謝ることで責任を問われたり、理不尽な要求がエスカレートしたりするリスクがあるためです。
本記事では、クレーム対応においてこちらに非がない場合に、謝罪なしで相手を納得させる具体的な5つのステップと、そのまま使えるフレーズを解説します。
この記事を読めば、理不尽なクレームにも毅然とした態度で対応できるようになり、自分とステーションを守るための正しい知識が身につくでしょう。
目次
クレーム対応で非がない場合は安易な全面謝罪はNG!
「とりあえず謝ってその場を収めよう」
と考えがちですが、自分たちに非がないクレームの場合、その対応は危険です。
なぜなら、安易な謝罪はかえって状況を悪化させる原因になるからです。
安易な全面謝罪を避けるべき主な理由は以下の3つです。
- 非がないのに過失を認めたことになるから
- 現場スタッフのモチベーションが低下するから
- 要求がエスカレートするから
それぞれ詳しく解説します。
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非がないのに過失を認めたことになるから
非がないにもかかわらず「申し訳ございません」と全面的に謝罪することは、自社の過失(ミスや不手際)を認めたと解釈される恐れがあります。
もし相手が訴訟を起こした場合、「あの時、事務員は謝ったじゃないか」と言質をとられ、不利な状況に追い込まれる可能性があります。
特に医療・介護の現場では、利用者さんの健康や生命に関わる問題も多いため、責任の所在は明確にしておかなければなりません。
不快な思いをさせたことへの配慮は必要ですが、「こちらのミスでした」という意味を含む謝罪は絶対に避けましょう。
現場スタッフのモチベーションが低下するから
事実確認をせずに事務方が安易に謝罪してしまうと、現場で正しい対応をしていた看護師の信頼を損なうことになります。
- 「自分はルール通りに対応したのに、なぜ事務が謝るのか?」
- 「自分が悪かったことになるのか?」
とスタッフが感じれば、組織への不信感が募ります。
結果として、現場のモチベーション低下や離職につながるリスクも生じるでしょう。
事務職の役割は、単にクレームを処理することではなく、正しい手順で業務を行った仲間を守ることでもあります。
要求がエスカレートするから
理不尽な主張に対して一度でも折れてしまうと、相手は「強く言えば要望が通る」と思ってしまいます。
これを繰り返すと要求は次第にエスカレートし、「特別扱い」を強要されるようになります。
いわゆる「カスハラ(カスタマーハラスメント)」を助長することになりかねません。
他の利用者さんとの公平性を保つためにも、できないことはできないと毅然とした態度を示し、トラブルを回避しましょう。
こちらに非がない場合のクレーム対応5つのステップ
非がない場合のクレーム対応は、感情的に対立するのではなく、事実に基づいて冷静に対処することが重要です。
以下の手順で対処しましょう。
- 傾聴と部分謝罪をする
- 事実確認をする
- 説明と提示をする
- 毅然とした態度をとる
- クロージングする
それぞれ解説します。
1.傾聴と部分謝罪をする
最初のステップは、相手の言い分を遮らずに最後まで聴く「傾聴」です。
相手は感情的になっていることが多いため、まずはガス抜きが必要です。
「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません」
という部分謝罪(限定的謝罪)を用いましょう。
これは「こちらのミスを認める謝罪」ではなく、「相手の心情(不快感)に寄り添う言葉」です。
「大変な思いをされたのですね」と共感を示すことで、相手の怒りを鎮め、話し合いができる状態を作ります。
2.事実確認をする
相手の話から、何が起きたのかという「事実」と、相手がどう感じたかという「主観」を切り分けます。
これらを具体的に質問し、メモをとります。
訪問看護の場合、看護記録や担当看護師へのヒアリングと照らし合わせましょう。
たとえば、「態度が悪かった」というのは主観ですが、「挨拶がなかった」「言葉遣いが乱暴だった」というのは確認可能な事実レベルの話になります。
ここで認識のズレがないかを確認することが、大切です。
3.説明と提示をする
こちらの正当性を主張する際は、感情的にならず、客観的な事実やルールに基づいて淡々と説明します。
「でも」「だって」といった逆接の言葉は、言い訳に聞こえるため使いません。
「記録を確認いたしましたところ、〇〇という対応を行っておりました」
と事実を伝えます。
また、訪問看護の制度や契約内容に基づき、「当ステーションの規定では、このような対応となっております」と根拠を示すことで、個人の判断ではなく組織としてのルールであることを強調しましょう。
4.毅然とした態度をとる
理不尽な要求や、制度上不可能な要望に対しては、曖昧な返事をせず明確に断りましょう。
「検討します」や「持ち帰ります」と言ってしまうと、相手に期待を持たせ、問題が長期化する原因になります。
「申し訳ございませんが、そのご要望にはお応えできかねます」
とはっきり伝えましょう。
この際、冷たく突き放すのではなく、「誠に残念ですが」といったクッション言葉を添えることがポイントです。
5.クロージング
話が平行線になり、これ以上議論しても進展がないと判断したら、会話を終了させるクロージングに入ります。
「私どもとしての回答は以上でございます」
と伝え、同じ話を繰り返さないようにします。
電話であれば、「これ以上お話ししても同じ回答になりますので、失礼させていただきます」と告げて電話を切ることも必要です。
対応後は、日時、内容、相手の様子などを詳細に記録に残しましょう。
これは万が一、法的トラブルや行政への相談が必要になった際の重要な証拠となります。
シーン別「非がない」時のフレーズ集
頭では分かっていても、いざその場になると言葉が出てこないものです。
ここでは、明日から使える具体的な対応フレーズを紹介します。
以下の4つのシーン別に見ていきましょう。
- 相手の勘違い・誤解だった場合
- 制度やルール上、要望に応えられない場合
- 理不尽な要求をされた場合
- 暴言・威嚇を受けた場合
相手の勘違い・誤解だった場合
相手の間違いを指摘する際は、相手のプライドを傷つけないよう配慮しましょう。
直接的に「間違っています」と言わず、確認という形をとります。
- 「私の認識不足かもしれませんので確認させてください。〇〇ということでお間違いないでしょうか?」
- 「恐れ入りますが、当方の記録では〇〇となっております。再度ご確認いただけますでしょうか?」
- 「もしかすると、〇〇という点で行き違いがあったのかもしれません」
このように、あえて「こちら側の確認不足かもしれない」という姿勢を見せることで、相手も振り上げた拳を下ろしやすくなります。
制度やルール上どうしても要望に応えられない場合
個人の意思ではなく、制度や組織のルールであることを強調しましょう。
訪問看護は医療保険や介護保険の厳格なルールの下で運営されているため、それを理由にすると納得が得やすい場合があります。
- 「大変心苦しいのですが、介護保険の規定により、そのようなサービスは提供できかねます」
- 「ステーションの運営規定に基づき、対応いたしかねます」
- 「私個人の判断では変更することができない決まりとなっております」
「法律」「規定」「決まり」という言葉を使うことで、交渉の余地がないことを伝えます。
「誠意を見せろ」「上の者を出せ」と理不尽な要求をされた場合
「誠意」という曖昧な言葉には具体的な定義を求め、「上司」への安易な交代は避けます。
金銭や土下座などを要求された場合は、断固として拒否しましょう。
- 「お客様のおっしゃる誠意とは、具体的にどのようなことでしょうか?」
- 「管理者(上司)に代わりましても、同様の回答となりますので、私が責任を持ってご説明いたします」
- 「不当な要求には応じられません」
上司に代わる場合も、「代わります」と即答せず、「私が伝えます」と一旦引きとる姿勢が重要です。
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暴言・威嚇・長時間の拘束を受けた場合
恐怖を感じるような言動があった場合は、対話を打ち切る警告をします。
我慢して聞き続ける必要はありません。組織としてスタッフを守るための行動をとります。
- 「そのような大声を出されますと、冷静なお話し合いができません」
- 「これ以上、暴言が続くようでしたら、電話を切らせていただきます」
- 「業務に支障が出ますので、本日の対応はこれにて終了させていただきます」
これらを伝えても収まらない場合は、予告通りに通話を終了したり、場合によっては警察へ通報したりします。
まとめ
本記事では、非がない場合のクレーム対応について解説しました。
理不尽なクレームに直面すると、心が折れそうになることもあるでしょう。
しかし、非がないのであれば、堂々としていて良いのです。
プロとして冷静で毅然とした対応が、ステーションの信頼を守り、あなた自身の心を守ることにつながります。
ぜひ本記事のフレーズやステップを活用し、自信を持って業務にとり組んでください。