「令和8年度の診療報酬改定、訪問看護は何がどう変わったの?」「事務として何から手をつければいいのか分からない……」。2026年(令和8年)6月に施行された診療報酬改定を前に、不安を感じている訪問看護の事務担当者さんは多いのではないでしょうか。
今回の改定では、訪問看護療養費に新しい項目が3つ追加され、ベースアップ評価料や訪問看護管理療養費も大きく見直されました。この記事では、厚生労働省の公式資料をもとに、訪問看護の事務員が押さえておくべき改定ポイントと実務対応を、請求業務の目線でわかりやすく整理します。読み終えるころには「6月以降、自分が何を確認すればいいか」が明確になりますよ。
この記事でわかること
- 令和8年度診療報酬改定の施行時期と改定率の全体像
- 新設された「物価対応料」「医療情報連携加算」「包括型訪問看護療養費」などの内容
- 訪問看護管理療養費・同一建物居住者の評価がどう変わったか
- 訪問看護ベースアップ評価料の見直しと事務職員への影響
- 事務員が施行後に確認すべき実務チェックポイント
目次
令和8年度診療報酬改定の全体像|2026年6月施行・本体改定率+3.09%
診療報酬改定って、そもそもいつから適用されているんですか?レセプトにいきなり影響が出るのか不安で……。
本体部分は令和8年6月1日施行です。つまり6月サービス提供分の請求から新しい金額・ルールが適用されています。順番に全体像から見ていきましょう。
令和8年度診療報酬改定は、令和8年(2026年)6月1日に施行されました。診療報酬本体の改定率は、令和8年度・9年度の2年度平均で+3.09%(令和8年度単年では+2.41%、令和9年度は+3.77%)と、賃上げ・物価高への対応を重視した大幅なプラス改定です。
| 項目 | 内容 |
| 施行日(本体) | 令和8年6月1日(薬価は令和8年4月施行) |
| 本体改定率 | +3.09%(令和8・9年度の2年度平均) |
| うち賃上げ分 | +1.70%(2年度平均) |
| うち物価対応分 | +0.76%(2年度平均) |
訪問看護に関しては、賃上げと物価高に対応する新たな評価の創設、ICTを活用した連携の評価、そして同一建物に居住する利用者への訪問看護の評価の細分化(適正化)が大きな柱です。事務担当者にとっては、新しい請求項目の追加と、届出・記録ルールの変更が直接影響するポイントになります。
POINT
今回の改定で新設された訪問看護療養費や、施設基準が改正された項目を令和8年6月1日以降に算定するには、地方厚生局への新規届出または届出の出し直しが必要とされています。自ステーションの届出状況を必ず確認しましょう。
訪問看護療養費の体系はどう変わった?新設は3項目
レセコンの項目に見たことのない名前が増えていました。新しい療養費って何が追加されたんですか?
新設は「包括型訪問看護療養費」「訪問看護遠隔診療補助料」「訪問看護物価対応料」の3つです。項目番号も再編されているので、一覧で確認しておきましょう。
令和8年度改定では、訪問看護療養費の告示体系に新しい項目が3つ追加されました。改定後の項目構成は次のとおりです。
| 項目番号 | 名称 | 改定での扱い |
| 01/01-2 | 訪問看護基本療養費/精神科訪問看護基本療養費 | 同一建物関連の評価を細分化 |
| 02 | 訪問看護管理療養費 | 月初日の評価充実・2日目以降を再編 |
| 03 | 訪問看護情報提供療養費 | 継続 |
| 04 | 包括型訪問看護療養費 | 新設 |
| 05 | 訪問看護ターミナルケア療養費 | 継続 |
| 06 | 訪問看護遠隔診療補助料 | 新設 |
| 07 | 訪問看護ベースアップ評価料 | 06から番号変更・評価見直し |
| 08 | 訪問看護物価対応料 | 新設 |
注意
訪問看護ベースアップ評価料は項目番号が「06」から「07」に変わっています。レセコンやマニュアル類に旧番号のまま記載が残っていないか、確認しておくと安心です。
新設された療養費・加算の内容|金額と算定要件を整理
新設された項目って、うちのステーションでも算定できるんでしょうか?要件が難しそうで……。
大丈夫ですよ。たとえば物価対応料は届出不要で全ステーションが対象です。ひとつずつ要件を見ていきましょう。
訪問看護物価対応料|届出不要・全ステーションが対象
令和8・9年度の物価上昇に段階的に対応するため、訪問看護管理療養費または包括型訪問看護療養費の算定に併せて算定できる加算として新設されました。施設基準の届出は不要で、すべての訪問看護ステーションが算定できます。
| 区分 | 令和8年6月〜令和9年5月 | 令和9年6月以降 |
| 物価対応料1(月の初日の訪問) | 60円 | 120円 |
| 物価対応料1(月の2日目以降の訪問) | 20円 | 40円 |
| 物価対応料2(包括型算定の利用者) | 20円 | 40円 |
1件あたりの金額は小さいものの、全利用者・毎訪問日が対象になるため、算定漏れはそのまま損失になります。レセコンで自動算定される設定になっているか、6月請求分から必ず確認しましょう。
訪問看護医療情報連携加算(1,000円・月1回)|ICT連携の新評価
医師やケアマネジャーなど他機関の関係職種がICTで記録した利用者の診療情報等を活用し、訪問看護の計画的な管理を行った場合に月1回算定できる加算です。主な要件は次のとおりです。
- 利用者の診療情報等をICTで共有・常時確認できる体制があること
- 連携機関(特別の関係にあるものを除く)の数が5以上であること
- 過去90日以内に記録された利用者の医療・ケア情報を1つ以上取得していること
- 利用者から情報の取得・共有について同意を得ていること
- ICT連携体制について事業所内に掲示し、原則ウェブサイトにも掲載すること(ウェブサイト掲載は令和8年9月30日まで経過措置あり)
訪問看護遠隔診療補助料|オンライン診療の補助を評価
医師がオンライン診療を行う際に、看護師が利用者宅を訪問して診療の補助を行う、いわゆる「D to P with N」を評価する報酬です。1日につき2,650円とされています。連携する医療機関のオンライン診療体制が前提となるため、算定を検討する場合は主治医側との調整から始めましょう。
包括型訪問看護療養費|高齢者住まい併設型の1日包括払い
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどの高齢者向け住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションが、その住まいに居住する利用者(別表第7・別表第8に該当する者または特別訪問看護指示書の交付を受けた者)に対し、24時間体制で計画的または随時の対応による頻回の訪問看護を行った場合に、1日当たりの包括払いで算定する新しい療養費です。従来の「訪問1回ごとの積み上げ」とは請求の考え方が大きく変わるため、該当するステーションは収益シミュレーションが欠かせません。
機能強化型訪問看護管理療養費4|精神科訪問看護の地域連携を評価
既存の機能強化型1〜3に加えて、新たに「機能強化型訪問看護管理療養費4」(月の初日の訪問の場合9,030円)が新設されました。常勤看護職員4人以上、24時間対応体制加算の届出、重症度の高い利用者や重点的な支援を要する精神障害を有する利用者の受け入れ、地域の関係機関との連携体制などが要件です。なお、機能強化型1は13,760円、2は10,460円、3は9,030円(いずれも月の初日の訪問の場合)に引き上げられています。
訪問看護管理療養費と同一建物居住者の評価見直し
管理療養費の区分が変わったと聞きました。請求のとき、何に気をつければいいですか?
「月初日」と「2日目以降」で考え方が変わりました。2日目以降は訪問日数と単一建物の利用者数で金額が細かく分かれるので、利用者情報の管理がより重要になりますよ。
訪問看護管理療養費は、月の初日の評価を充実させる一方、月の2日目以降は従来の管理療養費1と2を統合し、施設基準の届出を不要とした上で、1月当たりの訪問日数と単一建物に居住する利用者数に応じて評価を細分化する見直しが行われました。
また、同一建物居住者への訪問看護については、次のようなルールの明確化・見直しが行われています。
- 同一敷地内の建物も「同一建物」として扱うことが明確化された
- 訪問看護基本療養費(Ⅱ)等を算定する場合の訪問時間は30分以上が標準とされ、20分を下回る訪問は算定できない
- 訪問看護基本療養費(Ⅱ)等やその加算は、1月当たりの訪問日数や建物内の訪問看護実施人数等に応じたきめ細かな評価に見直された
注意
サ高住や有料老人ホームへの訪問が多いステーションでは、訪問人数・日数によって従来より単価が下がるケースがあります。「同一日の建物内訪問人数×月当たり訪問日数」を実績データで集計し、収益への影響を早めに把握しておきましょう。請求時には利用者の居住建物の情報を正確に登録しておくことが、返戻防止の第一歩です。
訪問看護ベースアップ評価料の見直し|事務職員も賃上げの対象に
ベースアップ評価料って看護師さんのための制度ですよね?事務の私には関係ないのかなって……。
それが今回の改定で変わったんです。対象が「ステーションに勤務する職員」に広がったので、事務職員の賃上げにも使えるようになりました。私たちにも直接関係する見直しですよ。
訪問看護ベースアップ評価料は、今回の改定で大きく拡充されました。事務担当者にとって特に重要なのは、対象職員の範囲です。従来は「主として医療に従事する職員」が対象でしたが、改定後は「当該訪問看護ステーションに勤務する職員」へと対象が拡大され、事務職員も賃上げの対象に含められるようになりました。
ベースアップ評価料(Ⅰ)の金額
| 期間 | 新たに賃上げを行うステーション | 継続的に賃上げを実施してきたステーション |
| 令和8年6月〜令和9年5月 | 1,050円 | 1,830円 |
| 令和9年6月以降 | 2,100円 | 2,880円 |
改定前の780円から大きく引き上げられたうえ、令和7年度以前から継続的に賃上げを実施してきたステーションには、より高い評価が設定されています。
ベースアップ評価料(Ⅱ)は18区分から36区分へ
ベースアップ評価料(Ⅱ)は、従来の18区分(10〜500円)から36区分(30〜1,080円)へと拡大されました。ただし、上位の区分(19〜36)は令和9年6月以降に算定する扱いです。区分は「賃金改善算定基礎額」をもとに決定されるため、届出時には対象職員の月額賃金総額などの資料準備が必要です。
届出・報告の手続きも簡素化
手続き面では、事務負担を軽減する見直しが行われました。
- 届出時の「賃金改善計画書」の作成・提出が不要になった(届出書添付書類のみでよい)
- 区分変更の届出は、対象職員数や算定回数が1割以上変動して区分が変わる場合のみに緩和された
- 算定年度の8月に「賃金改善中間報告書」、翌年度の8月に「賃金改善実績報告書」を提出する流れに整理された
- 同一法人内の複数事業所について、賃金改善算定基礎額の算出や報告書の作成を通算で行えるようになった
事務員がやるべき実務対応|施行後のチェックリスト
変更点が多くて頭がパンクしそうです……。結局、事務として何から手をつければいいですか?
やることは5つに整理できます。順番にチェックしていけば大丈夫ですよ。
- 届出状況の確認新設項目や施設基準が改正された項目を算定するには、新規届出または届出の出し直しが必要です。管理者と一緒に、算定中・算定予定の項目と届出の対応状況を棚卸ししましょう。間に合わなかった項目も、受理されれば翌月以降から算定を始められます。
- レセコンの改定対応チェック物価対応料などの新コードが正しく設定され、自動算定されるかをテスト請求で確認します。ベースアップ評価料の項目番号変更(06→07)にも注意してください。
- 記録様式の見直し訪問看護記録書等に実際の訪問開始時刻と終了時刻を記載することが明確化されました。紙様式の場合は時刻欄を追加し、電子記録の場合はタイムスタンプの運用を確認しましょう。記録は2年間の保存が義務付けられています。
- 押印運用の整理訪問看護計画書・報告書は書面の場合でも署名・押印を求めないこととされ、様式例から押印欄が削除されました。訪問看護指示書も押印欄を削除した様式に変更されています(従前の様式も引き続き使用可能)。院内・事業所内の運用ルールを更新しましょう。
- 6月以降のレセプト点検強化改定直後は算定誤りによる返戻・査定が増えやすい時期です。新単価・新項目が正しく反映されているか、請求前の点検をいつもより丁寧に行いましょう。
改定直後は確認事項が一気に増え、通常の月次業務と並行して進めるのは大変です。請求業務の負担が大きい場合は、レセプト請求代行のような外部の力を借りて乗り切るのもひとつの選択肢です。
令和8年度診療報酬改定に関するよくある質問
令和8年度診療報酬改定はいつから適用されていますか?
診療報酬本体は令和8年6月1日に施行されており、6月サービス提供分の請求から新しい金額・ルールが適用されています。なお、薬価は令和8年4月に先行して改定されています。
訪問看護物価対応料の算定に届出は必要ですか?
施設基準の届出は不要で、すべての訪問看護ステーションが算定できます。訪問看護管理療養費の算定者には月の初日60円・2日目以降20円、包括型訪問看護療養費の算定者には1日20円が算定でき、令和9年6月以降はそれぞれ2倍の額になります。
訪問看護ベースアップ評価料は事務職員も対象になりますか?
はい。令和8年度改定で対象が「主として医療に従事する職員」から「当該訪問看護ステーションに勤務する職員」へ拡大され、事務職員も賃上げの対象に含められるようになりました。
改定前から算定していた項目も届出の出し直しが必要ですか?
新設された訪問看護療養費や基準が改正された項目については、令和8年6月1日以降の算定にあたり新規届出または届出の出し直しが必要とされています。対象項目は管轄の地方厚生局の案内で確認してください。
訪問看護計画書や指示書の押印は不要になったのですか?
訪問看護計画書・報告書は書面の場合でも署名・押印を求めないこととされ、様式例から押印欄が削除されました。訪問看護指示書についても押印欄を削除した様式への変更が行われていますが、従前の様式も引き続き使用できます。
あわせて読んでおきたい関連記事
改定直後は算定ルールの変更による返戻が増えやすい時期です。返戻の原因と対策を事前に押さえておくと、6月以降の請求業務がぐっと楽になります。
返戻の原因と対策の記事を読む
まとめ|改定対応は「届出・レセコン・記録」の3点確認から
令和8年度診療報酬改定は、訪問看護にとって新設項目の多い大きな改定です。事務員としては、変更点の全体像をつかんだうえで、自分のステーションに関係する項目から優先的に対応していきましょう。
この記事のまとめ
- 令和8年度診療報酬改定は令和8年6月1日施行。本体改定率は2年度平均で+3.09%のプラス改定
- 「包括型訪問看護療養費」「訪問看護遠隔診療補助料」「訪問看護物価対応料」の3項目が新設。物価対応料は届出不要で全ステーションが対象
- 訪問看護管理療養費は月初日の評価を充実し、2日目以降は訪問日数・単一建物の利用者数で細分化。同一敷地内も同一建物扱いに
- ベースアップ評価料は(Ⅰ)が1,050円〜に引き上げられ、対象が事務職員にも拡大
- 事務の実務対応は「届出状況」「レセコン設定」「記録・押印の運用」の確認が最優先
改定への対応は一度に完璧を目指さず、チェックリストをひとつずつ潰していくことが確実な近道です。この記事をブックマークして、確認作業にお役立てください。
次に読むべき関連記事
改定対応で請求業務の負担が増えたと感じたら、レセプト請求代行の活用も検討してみませんか?導入のメリットと失敗しない選び方を解説しています。
レセプト代行のメリットの記事を読む