「医療保険の訪問看護レセプトはなんとなく分かってきたけれど、介護保険の請求はケアマネジャーさんとのやり取りも多くて流れがつかみにくい……」。介護保険の利用者を担当し始めた事務担当者から、よく聞く悩みです。介護保険の訪問看護は、事業所だけで請求が完結せず、ケアマネジャーのサービス提供票や給付管理票と数字が合っていて初めて、正しく支払われる仕組みになっています。
結論からいうと、介護保険の訪問看護の請求は「提供票で予定を受け取る→実績を確定してケアマネへ報告→翌月10日までに国保連へ伝送→給付管理票と突合→入金」という1か月サイクルで回ります。この記事では、介護保険側の実務手順に絞って、誰がいつ何をするのか、給付管理票との突合でつまずきやすいポイントと対処法まで、事務担当者が明日から使える形で整理します。
この記事でわかること
- 介護保険の訪問看護請求に関わる4者(事業所・ケアマネ・国保連・保険者)の役割
- サービス提供票の受け取りから入金までの1か月のスケジュール
- 事務担当者が行う請求実務の7ステップ
- 給付管理票との突合で起きる「査定」「保留」「返戻」の違いと対処法
- 特別訪問看護指示書・負担割合・要支援者など、介護保険請求で確認すべき場面
目次
介護保険の訪問看護の請求は「4者」で回る仕組み
医療保険の訪問看護では、事業所が訪問看護療養費明細書を作成して審査支払機関へ請求するのが基本の流れです。一方、介護保険の訪問看護は、ケアプラン(居宅サービス計画)に組み込まれたサービスとして提供されるため、ケアマネジャーが作る書類と事業所の請求内容がセットで審査されます。まずは登場人物と役割を押さえましょう。
| 関係者 | 主な役割 | 訪問看護事業所との接点 |
| 訪問看護事業所 | サービス提供・実績記録・介護給付費明細書の作成と請求 | ― |
居宅介護支援事業所(ケアマネジャー) ※要支援者は地域包括支援センター等 | ケアプラン作成、サービス提供票の交付、給付管理票の作成・提出 | 月初の提供票受け取り、月末〜翌月初の実績報告 |
| 国民健康保険団体連合会(国保連) | 請求明細書の審査、給付管理票との突合、支払 | 翌月10日までの請求(伝送)、審査結果・支払情報の受け取り |
| 保険者(市町村) | 要介護認定、受給者台帳の管理、国保連への費用の支払 | 資格や負担割合に関する確認・台帳の訂正依頼 |
介護給付費の請求は、事業所の所在地の国保連に対して行います。たとえば宮城県国保連の手引きでは、県外の被保険者にサービスを提供した場合でも、県内の事業所であれば宮城県国保連に請求すると説明されています。利用者の住所地ごとに請求先を変える必要はありません。
給付管理票ってケアマネさんが出す書類ですよね?訪問看護の事務には関係ないと思っていました……。
提出するのはケアマネさんですが、国保連は給付管理票の単位数とうちの請求の単位数を突き合わせて審査します。数字がずれると、うちの請求が減らされたり止まったりするので、実は一番関係が深い書類なんですよ。
医療保険の訪問看護請求と比べて押さえる3つの違い
医療保険と介護保険のどちらで訪問看護を提供するかの判断は、別記事訪問看護の医療保険と介護保険どちらが優先?判断フローと例外を事務向けに解説で詳しく扱っています。ここでは、介護保険で請求すると決まったあとの「手続き面の違い」だけを整理します。
違い1:ケアプランとサービス提供票が前提になる
介護保険の訪問看護は、主治医の訪問看護指示書に加えて、ケアマネジャーが作成したケアプランに位置づけられていることが前提です。ケアマネジャーからは毎月、サービスの予定を記載したサービス提供票(居宅サービス計画書の第6表・第7表にあたる提供票と別表)が届きます。事業所の請求は、この提供票に記載された予定・単位数と整合している必要があります。
違い2:点数ではなく「単位数」で計算し、区分支給限度基準額の管理がある
介護保険では、サービス費用を単位数で計算し、地域区分ごとの単価を掛けて金額にします。さらに、要介護度ごとに決まった区分支給限度基準額の範囲内かどうかを、ケアマネジャーが給付管理票で管理します。介護給付費明細書には「計画単位数」「限度額管理対象単位数」「限度額管理対象外単位数」などを記載し、給付単位数は「計画単位数」と「限度額管理対象単位数」のいずれか低いほうに、限度額管理対象外単位数を加えたものになります。
違い3:国保連で給付管理票と突合される
介護保険の審査では、事業所の届出情報や利用者の資格との突合に加えて、ケアマネジャーが提出した給付管理票と事業所の請求明細書の単位数の突合が行われます。事業所の請求が正しくても、給付管理票側の単位数が少なければ請求が減らされるのが、医療保険にはない介護保険特有の仕組みです。
介護保険の訪問看護 請求の1か月スケジュール
続いて、サービス提供月から入金までを日付軸で見てみましょう。国保連への請求期限は全国共通で「サービス提供月の翌月10日まで」ですが、審査や支払の細かな日程は都道府県の国保連ごとに異なります。下の表は、宮城県国保連の手引きに示された日程を例にした目安です。
| 時期 | 訪問看護事業所 | ケアマネジャー・国保連 |
| サービス提供月の前月末〜月初 | サービス提供票を受け取り、訪問予定と照合する | ケアマネ:提供票(予定)を交付 |
| サービス提供月の期間中 | 訪問・記録。予定変更はその都度ケアマネへ連絡 | ケアマネ:変更に応じて提供票を修正 |
| 月末〜翌月初旬 | 実績を確定し、ケアマネへ実績報告 | ケアマネ:実績をもとに給付管理票を作成 |
| 翌月1日〜10日 | 介護給付費請求書・明細書を国保連へ伝送 | ケアマネ:給付管理票を国保連へ提出 |
| 翌月中旬〜下旬 | ― | 国保連:審査・給付管理票との突合(保険者による確認を含む) |
| 翌月末〜翌々月初旬 | 返戻(保留)一覧表などの審査結果を確認する | 国保連:審査結果を通知 |
| 請求した月の翌月末 | 入金を確認し、支払決定額通知書と照合する | 国保連:事業所へ振込 |
つまり、5月に提供したサービスは6月10日までに請求し、7月末に入金されるのが標準的な流れです。サービス提供から入金までおよそ2か月かかるため、請求が1か月遅れるとその分入金も後ろにずれます。10日を過ぎて受け付けられた分は翌月請求分として扱われるので、締め切りは必ず守りましょう。提出期限の考え方は訪問看護レセプトの締め日・提出期限一覧でも整理しています。
事務担当者が行う請求実務の7ステップ
ここからは、訪問看護事業所の事務担当者が実際に手を動かす手順です。請求ソフトの画面名は製品ごとに違いますが、確認すべき中身は共通しています。
- サービス提供票を受け取り、内容を確認する利用者名・被保険者番号・要介護度・認定有効期間・サービス内容(訪問看護の種類や時間区分)・回数・計画単位数を確認します。訪問看護の予定表や看護師のスケジュールと食い違いがあれば、月が始まる前にケアマネジャーへ問い合わせます。
- 月中の予定変更をケアマネジャーへ連絡する利用者の体調不良によるキャンセル、追加訪問、時間区分の変更などは、その都度ケアマネジャーに連絡し、提供票の修正を依頼します。変更を伝え忘れると、月末に実績と予定がずれて給付管理票との不一致につながります。
- 訪問記録をもとに実績を確定する看護記録の訪問日・訪問時間・訪問した職種と、請求ソフトの入力内容が一致しているかを確認します。加算(緊急時訪問看護加算・特別管理加算など)を算定する場合は、届出や同意書など算定要件の根拠がそろっているかもこの段階で確認します。
- ケアマネジャーへ実績を報告する確定した実績を、提供票(実績)としてケアマネジャーへ送ります。報告の期限は地域や事業所間の取り決めによって異なりますが、ケアマネジャーは実績をもとに給付管理票を作るため、翌月初旬の早い時期に届けることが大切です。
- 介護給付費明細書を作成する請求ソフトで介護給付費明細書を作成し、提供票の計画単位数と請求単位数、限度額管理対象かどうかの区分、利用者負担割合、公費の有無を確認します。前月までの返戻分を再請求する場合も、このタイミングで一緒に準備します。
- 翌月10日までに国保連へ伝送するインターネット等による伝送で国保連に請求します。受付状況はソフトや受付システムの画面で必ず確認し、受付エラーが出ていればその場で修正して再送します。
- 審査結果を確認し、入金と照合する月末ごろに届く「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」「介護保険審査増減単位数通知書」「介護給付費等支払決定額通知書」などで、返戻・保留・査定の有無を確認します。入金額が支払決定額と一致しているかを照合し、利用者負担分の請求とあわせて記録します。
提供票のやり取りって、今もFAXや郵送が多いですよね。数字の転記ミスが怖いです……。
国保中央会の「ケアプランデータ連携システム」を使えば、提供票の予定と実績をデータでやり取りできます。取引先のケアマネさんが使っているかどうか、一度確認してみるといいですよ。紙のままなら、受け取った提供票と入力内容を2人で読み合わせるだけでもミスは減らせます。
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で、サービス提供票(予定・実績)を標準仕様のデータで送受信する仕組みです。国保中央会の説明資料では、手書きや手入力による転記誤りを減らし、返戻リスクの削減にもつながるとされています。介護分野の情報連携の動きについては介護情報基盤とは?訪問看護事務が知っておくべき準備も参考にしてください。
給付管理票との突合で起きる「査定・保留・返戻」と対処法
介護保険の請求で事務担当者が一番戸惑うのが、給付管理票との突合結果です。似た言葉が並ぶので、違いを表で整理します。
| 結果 | 起きる状況 | 事業所の対応 |
| 査定(単位数の減額) | 給付管理票の単位数が請求明細書より少ない。給付管理票の単位数に合わせて減らされて決定される | 給付管理票の誤りなら、ケアマネに給付管理票(修正)の提出を依頼する。明細書の再請求は原則不要 |
| 0単位で決定 | 給付管理票に自事業所の記載がない | 「0単位で決定済み」の扱い。明細書を再請求すると重複エラーになるため、給付管理票の修正で対応する |
| 保留 | 給付管理票が提出漏れ・返戻で、突合できない | ケアマネに給付管理票の提出状況を確認する。一定期間内に提出されなければ返戻になる |
| 返戻 | 明細書の記載誤り、資格・届出情報との不一致など | 原因を確認・修正し、翌月以降の10日までに再請求する |
査定されたときは「給付管理票の修正」で取り戻す
給付管理票の単位数が誤っていたために査定された場合、事業所側で明細書を出し直すのではなく、居宅介護支援事業所に給付管理票(修正)を国保連へ提出してもらいます。宮城県国保連の手引きでは、修正が提出された月に再審査(給付管理票との再突合)が行われ、正しい単位数で突合されれば、審査の翌月の支払時に査定分が支払われると説明されています。結果は「介護給付費再審査決定通知書」などで確認します。
注意
0単位で決定された明細書は「返戻」ではありません。実績(0円の支払)として決定済みのため、未決定だと思い込んで同じ明細書を再請求すると、重複エラーで返戻されます。審査結果の帳票で「返戻」なのか「査定」なのかを必ず見分けてから対応しましょう。
保留は「ケアマネの給付管理票待ち」の状態
給付管理票が提出漏れだったり、給付管理票自体が返戻になったりして突合できない場合、明細書はすぐに返戻されず、国保連で一定期間保留されます。宮城県国保連の手引きでは保留期間を受付月から3か月間としていますが、取り扱いは国保連によって異なる場合があります。保留の通知を見たら、まずケアマネジャーに給付管理票の提出状況を確認しましょう。
返戻は原因を確認して翌月以降に再請求する
返戻された明細書は審査決定されておらず、支払もされません。返戻理由を確認して誤りを訂正し、翌月以降の通常請求と一緒に10日までに再請求します。返戻の理由が保険者から国保連に送られる受給者台帳の内容による場合は、先に保険者(市町村)へ台帳の訂正を依頼してから再請求します。返戻・再請求の全体像は訪問看護レセプトの返戻・再請求とは?で解説しています。
査定の通知が来たら、まず何を見ればいいんでしょう?
うちが送った実績報告と、ケアマネさんの給付管理票のどちらがずれているかを先に確かめます。うちの実績報告が正しければ給付管理票の修正をお願いし、うちの入力が間違っていたなら、取り下げや再請求の手続きを考えます。原因の切り分けが先ですね。
介護保険の訪問看護請求で確認が必要な場面
最後に、介護保険の請求で事務担当者が特に注意したい場面をまとめます。いずれも、看護師やケアマネジャーとの情報共有が遅れるとミスにつながりやすいところです。
特別訪問看護指示書が出たとき
介護保険で訪問看護を受けている利用者に、主治医から特別訪問看護指示書が交付されると、その指示期間中の訪問看護は医療保険で算定します。期間中の訪問を介護保険の明細書に含めないよう、指示期間を看護師から早めに共有してもらいましょう。介護給付費明細書の記載要領でも、利用者が月の一部の期間に医療保険の給付対象となった場合(特別訪問看護指示書の場合を含む)の取り扱いが定められています。
負担割合・認定内容が変わったとき
介護保険の利用者負担は1割〜3割で、負担割合証の内容は毎年見直されます。区分変更や更新で要介護度・認定有効期間が変わることもあります。提供票の記載と、利用者から預かった被保険者証・負担割合証の写しが一致しているかを確認し、変更があった月は特に注意して請求内容を見直しましょう。
要支援の利用者(介護予防訪問看護)のとき
要支援の利用者は介護予防訪問看護として請求し、介護予防サービス計画を作成した地域包括支援センターや介護予防支援事業者が給付管理票を提出します。提供票の送り主と給付管理票の提出元を取り違えないよう、利用者ごとに担当窓口を整理しておくと安心です。
生活保護など公費が併用されるとき
生活保護受給者など公費の対象となる利用者は、介護保険分に加えて公費分の請求が必要です。宮城県国保連の手引きでは、介護保険分だけを請求して公費分を請求していなかった場合が、過誤調整(取り下げ)が必要になる例の一つとして挙げられています。受給者証の内容を請求ソフトに正しく登録しておきましょう。
よくある質問
介護保険の訪問看護の請求期限はいつですか?
サービスを提供した月の翌月10日までに、事業所所在地の国保連へ請求します。10日を過ぎて受け付けられた分は翌月請求分として扱われ、入金もその分遅れます。
介護保険の訪問看護の入金はいつになりますか?
国保連に請求した月の翌月末に振り込まれるのが一般的です。たとえば5月提供分を6月10日までに請求すると、7月末ごろに入金されます。細かな日程は都道府県の国保連によって異なります。
給付管理票の単位数と請求が合わないとどうなりますか?
給付管理票の単位数が少ない場合は、給付管理票の単位数に合わせて請求が減額(査定)されます。給付管理票が誤っていた場合は、ケアマネジャーに給付管理票(修正)を国保連へ提出してもらうことで、再審査を経て査定分が支払われます。
「保留」と「返戻」は何が違いますか?
保留は、給付管理票が未提出などで突合できないため、国保連で一時的に止めている状態です。返戻は、明細書に誤りなどがあり差し戻された状態で、事業所が修正して再請求する必要があります。保留のまま一定期間が過ぎると返戻になります。
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返戻や保留で請求が翌月以降にずれ込んだときの手順は、月遅れ請求の記事で詳しく解説しています。
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まとめ|介護保険の請求は「提供票と給付管理票との整合」がカギ
介護保険の訪問看護の請求は、事業所の入力だけでなく、ケアマネジャーの提供票・給付管理票と数字がそろって初めて正しく支払われます。月初の提供票確認と、月末の実績報告を丁寧に行うことが、返戻や査定を防ぐいちばんの近道です。
この記事のまとめ
- 請求は事業所・ケアマネ・国保連・保険者の4者で回り、請求先は事業所所在地の国保連
- 請求期限はサービス提供月の翌月10日、入金は請求した月の翌月末が目安
- 提供票の確認、予定変更の連絡、実績報告の3つが請求ミス防止の土台
- 給付管理票の単位数が少ないと査定され、修正は給付管理票(修正)の提出で行う
- 0単位決定は返戻ではないため、明細書を再請求すると重複エラーになる
- 特別訪問看護指示書・負担割合の変更・要支援・公費併用の月は特に確認する
まずは今月届いた提供票と、看護師の訪問予定を照らし合わせるところから始めてみましょう。