「提出したレセプトに誤りが見つかった。取下げ依頼書を出したいけれど、どの欄に何を書けばいいのかわからない……」。取下げは毎月発生するものではないため、いざ書類を前にすると手が止まってしまう事務担当者は少なくありません。
結論からお伝えすると、取下げ依頼書の書き方で迷わないためのポイントは「どこに出すか(提出先)」を先に決め、その提出先の様式どおりに「請求時の情報」と「取下げ理由」を1件ずつ書くことです。この記事では、医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(旧:社会保険診療報酬支払基金)の「再審査等請求書(取下げ)」と、国保連の「取下げ依頼書」の記入例を項目ごとに解説し、そのまま使える取下げ理由の例文も紹介します。
この記事でわかること
- 訪問看護レセプトの取下げ依頼書を「どこに・どの様式で」出すかの判断方法
- DX審査支払機構(旧:支払基金)「再審査等請求書(取下げ)」の項目別の記入例
- 国保連の「取下げ依頼書」の書き方と、都道府県ごとの違い
- 介護保険の訪問看護で使う「過誤申立書」と申立事由コードの考え方
- そのまま使える取下げ理由の例文と、提出前後の実務ステップ
目次
レセプト取下げ依頼書は「提出先」で様式が変わる
取下げ依頼書の書き方を調べると、様式も記入項目もばらばらで混乱しがちです。これは、レセプトを請求した先(審査支払機関・保険者)によって、使う様式と出し先が違うためです。訪問看護ステーションの場合、まず次の3つのどれに当たるかを確認しましょう。
| 請求の種類 | 提出先 | 使う様式 |
| 医療保険(協会けんぽ・健保組合・共済など) | 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構) | 再審査等請求書(「取下げ」に○) |
| 医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療) | 都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)。過去月分は保険者へ連絡する場合もある | 各国保連の取下げ依頼書(名称・様式は都道府県ごとに異なる) |
| 介護保険(訪問看護・介護予防訪問看護) | 保険者(市区町村) | 介護給付費過誤申立書(名称は市区町村ごとに異なる) |
なお、社会保険診療報酬支払基金は2026年10月から「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」(略称:DX審査支払機構)に名称が変わっています。公式サイトの様式もこの新名称で掲載されているため、古い様式を使い回している場合は宛名に注意してください。以下、本記事では「DX審査支払機構」と表記します。
取下げしたい利用者さんが国保なのか社保なのか、レセプトを見ないとすぐにはわからないです……。
保険者番号を見れば判断できますよ。国保は6桁、後期高齢者医療は「39」から始まる8桁、それ以外の8桁は社保が基本です。迷ったら請求ソフトの請求先区分も確認しましょう。
DX審査支払機構(旧:支払基金)「再審査等請求書(取下げ)」の書き方・記入例
社保分の取下げでは、DX審査支払機構の「再審査等請求書」を使います。この様式は再審査請求と取下げで共通になっており、冒頭の「再審査」「取下げ」のうち「取下げ」に○を付けて使うのが最初のポイントです。作成要領では、対象となるレセプト1件ごとに1枚作成することとされています。
様式上部(宛先・事業所情報)の書き方
- 日付:提出日を「令和〇年〇月〇日」で記入します。
- 宛先:様式にあらかじめ「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構 御中」と印字されています。旧様式(支払基金宛て)の控えを使い回さないようにします。
- 保険医療機関等の所在地及び名称・開設者氏名・電話番号:訪問看護ステーションの所在地・名称、開設者(法人名と代表者名)、問い合わせに対応できる電話番号を書きます。
- 「再審査」「取下げ」:「取下げ」に○を付けます。
項目別の記入例(訪問看護の場合)
様式の番号欄(1〜8)と、訪問看護ステーションが書く内容を整理すると次のとおりです。記入例は架空の内容です。
| 欄 | 書く内容 | 記入例 |
| 1 点数表 | 「6 訪問」に○ | 6 訪問 に○ |
| 1 医療機関等コード | 訪問看護ステーションのコード | レセプトに記載したステーションコード |
| 2 診療年月 | 取り下げたいレセプトの診療年月(訪問した月) | 令和8年9月 |
| 2 請求(調整)年月 | 当初に請求した年月(通常は診療年月の翌月) | 令和8年10月 |
| 2 明細書区分 | 該当する番号に○ | 医療保険単独なら「1 単独」など |
| 4 保険者番号・記号番号 | レセプトに記載した医療保険の番号 | 保険証の保険者番号と記号・番号 |
| 5 公費負担者番号・受給者番号 | 公費がある場合のみ(2種以上は第1公費) | 難病の医療費助成の番号など |
| 6 患者氏名・生年月日 | フリガナ・氏名・元号・生年月日 | レセプトと同じ表記で記入 |
| 6 写の有無 | レセプトの写しを添付するかどうか | 添付する場合は「1 有」 |
| 7 請求点数(金額) | DX審査支払機構に請求した合計額 | 訪問看護療養費は金額(円)で記入 |
| 7 一部負担金 | レセプトに記載した一部負担金額 | レセプトの記載額どおり |
| 請求理由 | 取下げの理由 | 「保険者番号の記載誤りのため」など |
欄「2」の「再審査等対象種別」や欄「3」「8」(突合再審査・減点内容)は、作成要領上、再審査請求のときに使う欄です。取下げで書く必要があるかどうかは様式からは読み取りにくいため、迷ったら提出先の審査事務担当者に確認しておくと確実です。
取り違えやすいポイント
様式の欄「7」の右下に「※取下げ理由」という欄がありますが、ここは機構が使う欄なので記入しません。作成要領には「※取下げ理由」欄・「※備考」欄・「※機構使用欄」は何も記入しないよう明記されています。取下げの理由は、様式下部の「請求理由」欄に書きます。
提出方法と期限
DX審査支払機構の案内では、当月に請求したレセプトの取下げは、毎月の取下げ期限日までに再審査等請求書(取下げ)を提出することとされています。期限日は都道府県ごとの「DX審査支払機構からのご案内」で毎月お知らせされ、間に合わない場合は翌々月以降に返戻される扱いです。
前月以前に請求したレセプトの取下げも同じ様式を使います。オンライン請求の医療機関等は原則オンライン請求システムで提出しますが、訪問看護ステーションはこのオンライン提出の対象から除かれており、紙の「再審査等請求書」を郵送で提出するよう案内されています。また、FAXでの受信は廃止されています。提出先は都道府県により審査委員会事務局、または審査事務センター・分室の審査事務担当者宛てです。
国保連「取下げ依頼書」の書き方・記入例
国民健康保険・後期高齢者医療の利用者分は、都道府県の国保連に取下げを依頼します。国保連の様式は全国統一ではなく、名称・記入欄・期限・提出方法が都道府県ごとに異なります。ここでは、群馬県国民健康保険団体連合会が公開している「診療報酬明細書の返戻(取下)依頼書」の記載例をもとに、書き方の考え方を紹介します。
記入する項目(群馬県国保連の例)
- 宛先・日付:「〇〇県国民健康保険団体連合会 あて」と提出日
- 事業所情報:保険医療機関等コード(7桁)、名称、所在地、電話番号、担当者氏名
- 利用者ごとの明細:保険者番号(国保6桁、退職・後期8桁)、被保険者証の記号・番号、診療年月、被保険者名(カナ・漢字)、請求点数、生年月日、性別
- 理由:記載例では「記載事由の不備のため。」
群馬県国保連の様式は1枚に複数件を書ける一覧形式で、記載例には「入院・外来」の欄もあります。訪問看護ステーションが使う場合に該当しない欄の扱いや、金額で請求している訪問看護療養費を「請求点数」欄にどう書くかは、提出先の国保連に確認しておきましょう。記入欄に共通しているのは、「請求時の情報をそのまま書く」という点です。群馬県国保連の案内でも、取下げ依頼書には請求時の情報を記載するよう求めています。
当月分と過去分で窓口が変わる場合がある
群馬県国保連の案内では、国保連から返せるのは当月請求分のみで、当月分は電話または取下げ依頼書の郵送で受け付けています。一方、それより前に請求した分は、県内の保険者分は保険者に直接連絡し、県外の保険者分は取下げ依頼書を国保連へ郵送する扱いです。当月請求分の期日も、県外保険者分は毎月15日頃、県内保険者分は毎月20日頃とされ、処理状況によっては受け付けられない場合があるため早めの連絡が求められています。
このように運用は都道府県で大きく違うため、自事業所が請求している国保連のホームページで「取下げ」「返戻依頼」「過誤」などの案内ページと様式を一度確認し、事業所内のマニュアルに保存しておくことをおすすめします。
それは避けましょう。国保連ごとに欄の並びも宛先も違うので、受け付けてもらえなかったり、処理が遅れたりする原因になります。必ず自分の県の国保連が公開している最新の様式を使ってくださいね。
介護保険の訪問看護は「過誤申立書」で取り下げる
介護保険で請求した訪問看護(介護予防訪問看護を含む)は、医療保険の取下げとは手続きの流れが異なります。介護給付費は国保連が審査・支払を行いますが、一度決定した請求を取り下げるには、保険者(市区町村)に「過誤申立書」を提出するのが一般的です。様式名や提出期限は市区町村ごとに異なります。
申立事由コードの書き方
過誤申立書では、取下げの理由を4桁の「申立事由コード」で記入します。いわき市が公開しているコード一覧では、前2桁が「様式番号」、後2桁が「申立理由番号」という組み合わせになっています。
| 区分 | コード | 意味 |
| 前2桁(様式番号) | 10 | 様式第二(居宅サービス:訪問看護など) |
| 前2桁(様式番号) | 11 | 様式第二の二(介護予防サービス:介護予防訪問看護など) |
| 後2桁(申立理由番号) | 02 | 請求誤りによる実績取下げ(通常過誤) |
| 後2桁(申立理由番号) | 12 | 請求誤りによる実績取下げ(同月過誤) |
たとえば、訪問看護の請求誤りを通常過誤で取り下げる場合は「1002」、介護予防訪問看護なら「1102」となります。同月過誤(取下げと再請求を同じ月に処理する方法)を受け付けているかどうかは保険者によって異なるため、事前に確認しましょう。
申立事由の文章欄がある様式では、浜松市の案内にある「初回加算算定誤り(実地指導の返還指導によるもの)」のように、何を誤ったのかと、取り下げに至った経緯がわかるように書きます。
再請求のタイミングに注意
浜松市の案内では、国保連から届く決定通知書で取下げを確認してから再請求するよう求めており、決定前に再請求すると重複請求エラーとなり返戻されるとされています。取下げの反映を確認する前に正しいレセプトを送ってしまうのは、よくある失敗です。
取下げ理由の書き方と例文(訪問看護でよくあるケース)
取下げ理由は長く書く必要はありません。DX審査支払機構の「請求理由」欄、国保連の「理由」欄ともに、「何を誤ったのか」が1行で伝われば十分です。書き方のコツは次の3つです。
- 誤った項目名を具体的に書く:「記載誤り」だけでなく「保険者番号の記載誤り」「訪問日数の誤り」のように項目を示す
- 文末は「〜のため。」でそろえる:記載例と同じ形にすると、審査側も読み取りやすい
- 再請求の予定がわかる場合は添える:「〜のため。訂正のうえ再請求予定。」のように書くと、問い合わせが減る
| よくあるケース | 取下げ理由の例文 |
| 保険証情報の誤り | 保険者番号(記号・番号)の記載誤りのため。 |
| 資格の変更 | 資格喪失後の期間を請求していたため(保険者変更)。 |
| 負担割合の誤り | 一部負担金の割合の記載誤りのため。 |
| 公費の記載漏れ | 公費負担者番号・受給者番号の記載漏れのため。 |
| 訪問日数・回数の誤り | 訪問日数の誤りのため。訂正のうえ再請求予定。 |
| 加算の誤り | 特別管理加算の算定誤りのため。 |
| 保険の種類の誤り | 介護保険での請求対象であったため。 |
| 労災などへの切り替え | 労災保険の対象であることが判明したため。 |
| 二重請求 | 同一月の請求を重複して提出したため。 |
DX審査支払機構の案内では、保険請求した後に労災などへ資格が変わった場合も取下げの対象として挙げられています。また、査定(減点)に納得できない場合は取下げではなく「再審査請求」になるため、同じ様式でも○を付ける位置を間違えないようにしましょう。査定の考え方は「訪問看護レセプトの査定・減点はなぜ起きる?」で解説しています。
理由を詳しく書きすぎると、かえってミスを目立たせてしまいそうで不安です。
取下げは正しく請求し直すための手続きなので、事実を簡潔に書けば大丈夫です。むしろ理由があいまいだと確認の電話がかかってきて、処理が遅れることもありますよ。
取下げ依頼書を出す前後の実務ステップ
依頼書の記入だけでなく、前後の流れまで決めておくと、取下げのたびに迷わずに済みます。
- 誤りの内容と対象レセプトを特定する利用者名・診療年月・請求年月・請求額を控え、何を誤ったのかを記録します。看護師の記録や指示書と照らし合わせ、取下げが本当に必要か(月遅れ請求で足りるものではないか)も確認します。
- 提出先と期限を確認する社保・国保・後期・介護のどれに当たるかを判断し、提出先のお知らせで今月の取下げ期限日を確認します。期限が近い場合は、電話受付の有無も確認しておきます。
- 提出先の最新様式に記入するレセプトの控えを横に置き、保険者番号・記号番号・氏名・金額を請求時のとおりに書き写します。DX審査支払機構の様式は1件につき1枚です。
- ダブルチェックして控えを保存する作成者以外の職員が、レセプトの控えと依頼書を照合します。提出前に依頼書のコピーを取り、提出日と送付方法を記録します。
- 取下げの反映を確認してから再請求する返戻や決定通知書で取下げが反映されたことを確認してから、訂正したレセプトを再請求します。利用者の自己負担額に差が出る場合は、精算方法も決めておきます。
事業所内に「取下げ管理表」(利用者名・診療年月・理由・提出日・反映確認日・再請求月)を一枚用意しておくと、再請求漏れを防げます。再請求の流れや期限は「訪問看護レセプトの返戻・再請求とは?」もあわせて確認してください。
まとめ|取下げ依頼書は「提出先の様式」と「請求時の情報」で迷わず書ける
レセプトの取下げ依頼書は、提出先によって様式も期限も異なります。ただし、どの様式でも求められているのは「どのレセプトを」「なぜ取り下げるのか」という2点です。提出先を先に判断し、請求時の情報をそのまま書き写せば、記入で迷う場面はかなり減らせます。
この記事のまとめ
- 社保はDX審査支払機構、国保・後期は国保連、介護保険は市区町村と、提出先で様式が変わる
- DX審査支払機構の再審査等請求書は「取下げ」に○を付け、レセプト1件ごとに1枚作成する
- 取下げ理由は「請求理由」欄に書き、「※取下げ理由」欄は記入しない
- 訪問看護ステーションは、再審査等請求書を紙で郵送する(FAXは不可)
- 国保連・市区町村の様式と期限は地域ごとに違うため、必ず最新の案内で確認する
- 再請求は、取下げの反映を確認してから行う
まずは自事業所の提出先3か所の様式と期限を集め、事業所内のマニュアルにまとめておきましょう。
取下げを減らすために
取下げの多くは、提出前の点検で防げます。チェックポイントを整理しておきましょう。
レセプトの点検方法を読む
よくある質問
取下げ依頼書はレセプト1件ごとに作成が必要ですか?
DX審査支払機構(旧:支払基金)の再審査等請求書は、作成要領で対象となるレセプト1件ごとに作成することとされています。国保連の取下げ依頼書は、群馬県国保連のように1枚に複数件を書ける一覧形式の様式もあるため、提出先の様式に従ってください。
再審査等請求書の「※取下げ理由」欄には何を書けばよいですか?
何も書きません。「※取下げ理由」欄・「※備考」欄・「※機構使用欄」は機構が使う欄とされています。取下げの理由は、様式下部の「請求理由」欄に記入します。
訪問看護ステーションは取下げをオンラインで提出できますか?
DX審査支払機構の案内では、オンライン請求システムでの提出の対象から訪問看護ステーションが除かれており、紙の再審査等請求書を郵送で提出するよう案内されています。FAXでの受信は廃止されています。
介護保険で請求した訪問看護を取り下げるにはどうすればよいですか?
保険者(市区町村)に過誤申立書を提出するのが一般的です。申立事由コードは前2桁が様式番号、後2桁が申立理由番号で、訪問看護の請求誤りによる取下げ(通常過誤)なら「1002」となる例が多くみられます。様式や期限は市区町村ごとに異なるため、保険者の案内を確認してください。
取下げ期限日を過ぎてしまった場合はどうなりますか?
DX審査支払機構の案内では、当月請求分の取下げが期限日に間に合わない場合は、翌々月以降に返戻する扱いとされています。国保連は都道府県によって扱いが異なるため、提出先に確認してください。
出典・参考
様式・提出方法・期限は、審査支払機関や保険者ごとに異なり、変更されることがあります。実際の手続きにあたっては、提出先の最新の案内をご確認ください。