「主治医から特別訪問看護指示書が届いたけれど、何日まで医療保険で請求すればいいの?」「介護保険の利用者さんなのに、今月は医療保険のレセプトも必要?」――特別指示書は毎月出るものではないぶん、届いたときに事務担当者が迷いやすい書類です。
結論から言うと、特別訪問看護指示書は、急性増悪などで一時的に頻回の訪問が必要なときに主治医が出す指示書で、有効期間は最長14日、交付は原則月1回(気管カニューレ使用・真皮を越える褥瘡の方は月2回)です。期間中の訪問看護は医療保険の訪問看護療養費で請求し、レセプトには「特別指示期間」と日付欄の「△」を記載します。この記事では、期間・回数・料金の基本から、介護保険の利用者さんの切り替え、レセプトの書き方、事務の確認手順まで、令和8年度診療報酬改定後の告示・通知に沿って整理します。
この記事でわかること
- 特別訪問看護指示書とは何か(通常の訪問看護指示書との違い)
- 有効期間14日・交付回数(月1回/月2回)のルールと数え方
- 特別指示書の料金(特別訪問看護指示加算)と誰が請求するか
- 介護保険の利用者さんが医療保険に切り替わるときの注意点
- 訪問看護療養費明細書の「特別指示期間」と「△」の書き方
目次
特別訪問看護指示書とは?通常の指示書との違い
特別訪問看護指示書は、利用者さんの急性増悪、終末期、退院直後などの事由により、主治医が「週4回以上の頻回な訪問看護を一時的に行う必要がある」と認めたときに、訪問看護ステーションへ交付する指示書です。医科点数表の留意事項通知では、ここでいう「一時的に頻回の訪問看護が必要」とは、恒常的に頻回の訪問が必要という意味ではなく、状態の変化などで普段の訪問回数では対応できない場合を指すとされています。頻回の訪問が必要な理由は、特別訪問看護指示書に記載することになっています。
通常の訪問看護指示書との比較
事務担当者がまず押さえておきたいのは、特別指示書は通常の指示書の「代わり」ではなく、通常の指示書に上乗せして出る短期間の指示だという点です。主な違いを表にまとめます。
| 項目 | 訪問看護指示書(通常) | 特別訪問看護指示書 |
| 目的 | 継続的な訪問看護の指示 | 急性増悪等による一時的な頻回訪問の指示 |
| 有効期間 | 6か月以内(1か月の指示なら期間記載不要) | 指示の日から14日が限度 |
| 交付の回数 | 医療機関の指示料算定は月1回が限度 | 月1回(厚生労働大臣が定める者は月2回) |
| 医療機関の点数 | 訪問看護指示料 300点 | 特別訪問看護指示加算 100点(指示料に加算) |
| 訪問看護の保険 | 介護保険が優先(別表第七等は医療保険) | 期間中は医療保険(介護保険の利用者さんも) |
| 訪問回数 | 医療保険は原則週3日まで | 期間中は週4日以上・1日複数回も可 |
精神科訪問看護の場合は、服薬中断などで急性増悪したときに精神科の医師が交付する「精神科特別訪問看護指示書」があり、医療機関は精神科特別訪問看護指示加算(100点・月1回)を算定します。本記事では、主に一般の特別訪問看護指示書について解説します。
特別指示書が届いたら、今の訪問看護指示書は使えなくなるんですか?
いいえ、通常の指示書はそのまま生きています。特別指示書は「14日間だけ回数を増やしていい」という追加の指示だと考えてください。だからレセプトにも、通常の「指示期間」と「特別指示期間」の両方を書くんですよ。
特別訪問看護指示書の期間と回数のルール
特別指示書で一番ミスが起きやすいのが「いつからいつまで」と「月に何回まで」です。告示と通知の表現をもとに、事務の目線で整理します。
有効期間は「指示の日から起算して14日」が限度
訪問看護療養費の告示では、特別訪問看護指示書に基づく訪問看護は、当該指示があった日から起算して14日を限度として算定するとされています。「起算して」なので、指示日を1日目として数えます。たとえば11月5日が指示日なら、14日目は11月18日です。
注意したいのは、14日は「上限」だという点です。主治医が7日間の指示を出した場合は、その7日間が特別指示期間になります。実際の期間は、指示書に書かれた開始日・終了日で確認しましょう。
交付は原則月1回、気管カニューレ・重度の褥瘡の方は月2回
特別訪問看護指示書は、原則として月1回です。ただし、厚生労働大臣が定める者に該当する利用者さんは月2回まで交付を受けられます。医科点数表の留意事項通知で示されている対象は次のとおりです。
- 気管カニューレを使用している状態にある者
- 真皮を越える褥瘡の状態にある者(NPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度、DESIGN-R2020分類のD3・D4・D5のいずれか)
月2回の対象者であれば、14日間の特別指示を2回受けることで、月に最大28日程度の頻回訪問が可能になります。一方、対象外の利用者さんで同じ月に2枚目の特別指示書が届いた場合、そのままでは算定要件を満たさない可能性があります。2枚目が届いたら、対象者に該当するかを看護師に必ず確認しましょう。
別表第七の利用者さんは「特別指示がなくても」医療保険で頻回訪問ができる
末期の悪性腫瘍や神経難病など、いわゆる別表第七(厚生労働大臣が定める疾病等)に該当する利用者さんは、もともと週4日以上の訪問や1日複数回の訪問が認められています。訪問看護療養費の留意事項通知でも、特別訪問看護指示書による14日間の算定ルールの対象は「別表第七の疾病等の利用者を除く」と書かれています。特別指示書の効果が大きいのは、別表第七・別表第八に該当しない利用者さんだと覚えておくと整理しやすくなります。
特別指示期間が週をまたぐときの「週3日」の数え方
医療保険の訪問看護基本療養費は、別表第七などに該当しない利用者さんの場合、原則として週3日が上限です。特別指示期間中はこの上限を超えて訪問できますが、期間の始まりの週と終わりの週は扱いが少し複雑です。
訪問看護療養費の留意事項通知では、特別訪問看護指示書の交付日の属する週と、交付日から起算して14日目の日の属する週については、その週のうち特別指示期間中に算定した日を除いて週3日を限度として算定するとされています。つまり、期間の前後にはみ出した日は、通常の「週3日」の枠で数えます。
具体例
水曜日に特別指示が出た場合、その週の日〜火曜日は特別指示期間外です。この週は、水曜以降の特別指示期間中の訪問は別枠で算定でき、期間外の日〜火曜日の訪問は「週3日まで」の枠に収める必要があります。14日目が属する週も同じ考え方で、期間終了後の日は週3日の枠で数えます。
特別訪問看護指示書の料金は?誰が請求するのか
「特別指示書の料金」で検索する方の多くは、利用者さんやご家族から「書類代はいくら?」と聞かれた事務担当者ではないでしょうか。ポイントは、特別指示書の費用を請求するのは主治医の医療機関であり、訪問看護ステーションではないということです。
医療機関が算定する「特別訪問看護指示加算」は100点
医科点数表では、主治医が急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護が必要と認め、その旨を記載した訪問看護指示書を交付した場合、特別訪問看護指示加算として、患者1人につき月1回(厚生労働大臣が定める者は月2回)に限り100点を訪問看護指示料(300点)の所定点数に加算するとされています。1点10円で計算すると100点は1,000円で、利用者さんの窓口負担はこのうち保険の負担割合分(1割なら100円、3割なら300円)です。
指示料本体と加算がその月にどう請求されるかは、医療機関側の算定の判断になります。利用者さんから医療機関の請求額について詳しく聞かれたときは、ステーションで金額を断定せず、主治医の医療機関の窓口で確認していただくのが安全です。指示書全体の料金の考え方は「訪問看護指示書の料金はいくら?支払い先やよくある質問を解説!」で詳しく解説しています。
ステーション側は「訪問看護療養費」で請求する
ステーションにとっての特別指示書は、「頻回訪問を医療保険で算定できるようになる根拠」です。期間中に行った訪問は、訪問看護基本療養費・訪問看護管理療養費などの訪問看護療養費として、医療保険で請求します。また、特別指示書の交付を受けた利用者さんに1日2回以上訪問した場合は、難病等複数回訪問加算の対象になります(告示で、別表第七の利用者または特別訪問看護指示書の交付を受けた利用者が対象と定められています)。
さらに、特別指示書の交付を受け週4日以上の訪問が計画されている利用者さんは、他の1つの訪問看護ステーションと併用して訪問看護を受けることも認められています。ただし通知では、2か所のステーションが訪問できるのは「特別指示期間中で、週4日以上の訪問が計画されている週」に限られ、同一日にそれぞれのステーションで訪問看護療養費は算定できない(専門研修を受けた看護師との同行訪問などの例外を除く)とされています。他のステーションと併用している利用者さんは、訪問日の重複がないかを事前にすり合わせましょう。
ご家族から「特別な指示書って高いんですか?」と聞かれたら、どう答えればいいでしょう?
「書類の費用は病院・クリニックからのご請求になります。目安は加算分100点で、保険の負担割合に応じた額です。詳しくは病院の窓口でご確認ください」と伝えるのが無難です。うちからの請求は、増えた訪問回数分の利用料だと補足しておくと、ご家族も安心されますよ。
介護保険の利用者さんに特別指示書が出たときの扱い
事務担当者が一番注意したいのが、普段は介護保険で訪問看護を利用している利用者さんに特別指示書が出たケースです。
特別指示期間中は医療保険に切り替わる
医療保険と介護保険の給付調整に関する通知では、要介護被保険者等の利用者さんについて、訪問看護療養費は原則として算定できないものの、特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を行う場合には算定できるとされています。つまり、介護保険の利用者さんでも、特別指示期間中の訪問看護は医療保険の訪問看護療養費で請求し、期間外の日は通常どおり介護保険で請求する、という「同じ月に2つの保険が並ぶ」状態になります。
この月は、介護保険の請求(国保連)と医療保険の訪問看護療養費の請求が両方発生します。同じ日を両方の保険で請求していないか、記録の日付と照らし合わせて確認しましょう。保険の優先関係の基本は「訪問看護の医療保険と介護保険どちらが優先?判断フローと例外を事務向けに解説」も参考になります。
同じ月に算定できない加算に注意
同じ通知では、医療保険と介護保険の両方で訪問看護を行う月に、併算定できない加算の組み合わせも示されています。代表的なものは次のとおりです。
- 介護保険で緊急時訪問看護加算を算定している月は、医療保険の24時間対応体制加算は算定できない
- 介護保険で特別管理加算を算定している月は、医療保険の特別管理加算は算定できない
- 介護保険で専門管理加算・看護・介護職員連携強化加算を算定している月は、医療保険の同名の加算は算定できない
- 要介護被保険者等については、医療保険の在宅患者連携指導加算は算定できない
「月単位の加算はどちらの保険で取るか」を、特別指示が出た時点で看護師・管理者と決めておくと、月末の請求で迷わずに済みます。加算の全体像は「訪問看護の加算の種類一覧|算定要件と請求時の注意点【令和6・8年改定対応】」で確認できます。
ケアマネジャーへの連絡も忘れずに
介護保険の利用者さんの場合、特別指示期間中は介護保険の訪問看護の予定が医療保険の訪問に置き換わるため、ケアマネジャーが作成するサービス提供票の内容にも影響します。特別指示の期間(開始日・終了日)は、決まった時点でケアマネジャーに共有し、介護保険側の予定と実績の調整をお願いしておきましょう。月末に実績を送る段階で初めて伝えると、給付管理の修正が必要になりやすくなります。
レセプト(訪問看護療養費明細書)での書き方
特別指示による訪問を請求するときは、訪問看護療養費明細書に「特別指示期間」と日付欄の「△」を記載します。訪問看護療養費請求書等の記載要領に沿って、ポイントを確認しましょう。
「特別指示期間」欄に有効期間を記載する
記載要領では、主治医から急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護が必要である旨の特別訪問看護指示書の交付を受けた場合、「特別指示期間」欄に特別指示の有効期間を示す年月日を記載するとされています。通常の訪問看護指示書の「指示期間」(最新の指示書の有効期間)とは別に書く点に注意しましょう。
月をまたぐ特別指示は「前月の指示日」も書く
たとえば10月25日に特別指示が出て11月7日まで続く場合、11月分のレセプトにも特別指示期間を記載します。記載要領では、請求月の前月に特別訪問看護指示書の交付を受け、請求月も引き続きその特別指示による訪問看護を行った場合は、特別指示があった前月の年月日も記載するとされています。一方、請求月にかからない指示期間は記載しません。
特別指示で訪問した日は日付欄に「△」
特別訪問看護指示書(または精神科特別訪問看護指示書)に基づいて訪問看護を行った日は、明細書の日付欄に「△」を記載します。長時間訪問看護加算を算定した日の「□」など、ほかの記号と取り違えないよう、ソフトの入力画面で記号の意味を確認しておくと安心です。記載要領全体のポイントは「訪問看護レセプトの記載要領と請求ミス防止について解説」でまとめています。
返戻を招きやすいミス
特別指示期間の記載漏れ、期間外の日に「△」を付けてしまう、14日を超えた日まで週4日以上で請求してしまう、といったミスは、審査で疑義が出る原因になります。指示書のコピーとレセプトの日付を1日ずつ突き合わせるのが確実です。
特別指示期間の記録って、看護師さんは何か書く必要があるんですか?
通知では、一時的に頻回の訪問が必要な理由を訪問看護記録書に書き、主治医と密に連携することが求められています。事務としては、記録書に理由が書かれているかを請求前に確認しておくと、運営指導のときも安心ですよ。
特別指示書が届いたときの事務の確認手順
最後に、特別訪問看護指示書を受け取ってから請求までに、事務担当者が確認したいことを順番にまとめます。
- 指示書の記載内容を確認する利用者名、主治医・医療機関名、指示日、特別指示期間(開始日・終了日)、頻回訪問が必要な理由が書かれているかを確認します。期間が14日を超えていないかもチェックします。
- その月の交付回数を確認する同じ月に2枚目の特別指示書が届いた場合は、気管カニューレ使用・真皮を越える褥瘡の対象者かを看護師に確認します。対象外なら主治医への確認が必要です。
- 保険の切り替えを登録する介護保険の利用者さんの場合、特別指示期間を医療保険の訪問として請求ソフトに登録し、ケアマネジャーへ期間を連絡します。医療保険の保険証・負担割合も確認しておきます。
- 月単位の加算をどちらで取るか決める緊急時訪問看護加算と24時間対応体制加算、特別管理加算など、同じ月に両保険で算定できない加算の扱いを看護師・管理者と決めます。
- レセプトの記載を突き合わせる「特別指示期間」の記載、前月からの継続分の記載、日付欄の「△」、週3日ルールが適用される前後の週の日数を、訪問記録と照合します。
- 指示書を保管し台帳を更新する特別指示書は通常の指示書とセットで保管し、指示書台帳に特別指示の期間を記録しておきます。翌月にまたがる場合は、翌月の請求時に参照できるようにメモを残します。
指示書の受け取り・管理の流れ全体は「訪問看護指示書の有効期間は最大何ヶ月?更新時期と請求への影響を解説」も参考にしてください。
まとめ|特別指示書は「14日・月1回・医療保険・△」で押さえる
特別訪問看護指示書は、急性増悪などで一時的に頻回の訪問が必要なときに出る、短期間の上乗せの指示です。期間と回数のルール、保険の切り替え、レセプトの記載をセットで押さえておけば、届いたときに慌てずに対応できます。
この記事のまとめ
- 特別指示書の有効期間は指示日から起算して14日が限度
- 交付は原則月1回、気管カニューレ使用・真皮を越える褥瘡の方は月2回
- 料金は医療機関が算定する特別訪問看護指示加算100点(指示料に加算)
- 介護保険の利用者さんも、特別指示期間中の訪問は医療保険で請求する
- 同じ月に両保険で算定できない加算と、ケアマネへの期間連絡に注意
- レセプトには「特別指示期間」と日付欄の「△」を記載する
特別指示が出た月は請求が複雑になりがちです。指示書の受け取り時に期間と保険を確定させておくことが、月末の請求ミスを防ぐ近道です。
よくある質問
特別訪問看護指示書の有効期間は何日ですか?
指示があった日から起算して14日が限度です。指示日を1日目として数えます。14日は上限なので、主治医が14日より短い期間を指示した場合は、指示書に書かれた期間が特別指示期間になります。
特別訪問看護指示書は月に何回まで出してもらえますか?
原則として月1回です。気管カニューレを使用している状態にある方、真皮を越える褥瘡の状態にある方は月2回まで交付を受けられます。
特別訪問看護指示書の料金はいくらですか?
主治医の医療機関が、訪問看護指示料に特別訪問看護指示加算として100点を加算して算定します。1点10円で1,000円となり、利用者さんの負担は保険の負担割合分です。請求するのは医療機関で、訪問看護ステーションではありません。
介護保険で訪問看護を利用している人に特別指示書が出たらどうなりますか?
特別指示期間中の訪問看護は医療保険の訪問看護療養費で請求し、期間外の日は介護保険で請求します。同じ月に両方の請求が発生するため、同じ日を二重に請求していないか、同じ月に両保険で算定できない加算がないかを確認します。
レセプトには特別指示について何を書けばよいですか?
訪問看護療養費明細書の「特別指示期間」欄に特別指示の有効期間を記載し、特別指示に基づいて訪問した日の日付欄に「△」を記載します。前月に出た特別指示が請求月まで続いている場合は、前月の指示の年月日も記載します。
出典・参考(公的機関)
算定要件や記載要領は改定・訂正により変更されることがあります。実際の請求にあたっては、最新の告示・通知および審査支払機関の案内をご確認ください。