「難病の受給者証と保険証の両方を持っている利用者さん、公費の欄には何を書けばいいの?」「生活保護の方は保険者番号が空欄で大丈夫?」――公費が絡む訪問看護レセプトは、通常のレセプトより確認する書類も記入欄も増えるため、事務担当者がつまずきやすいポイントです。
結論からいうと、公費併用レセプトは「保険種別(単独・2併・3併)を決める」「法別番号の順番で第1公費・第2公費を並べる」「受給者証・医療券の負担額をそのまま転記する」の3点を押さえれば、迷う場面は大きく減ります。この記事では、医療保険の訪問看護療養費明細書を中心に、難病(法別54)と生活保護(法別12)を例にして、明日から使える記入手順と提出前のチェックポイントを解説します。
この記事でわかること
- 公費併用レセプトの「単独・2併・3併」の考え方
- 訪問看護でよく出てくる公費の法別番号と、第1公費・第2公費の並べ方
- 難病医療費助成(法別54)を併用するときの負担額と上限管理の注意点
- 生活保護(法別12)の単独・併用レセプトの書き方と医療券の確認方法
- 提出前に確認したい公費併用レセプトのチェック手順
目次
公費併用の訪問看護レセプトとは?単独・2併・3併の基本
公費併用レセプトとは、医療保険(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療)による訪問看護療養費に、国や自治体の公費負担医療を組み合わせて請求するレセプトのことです。利用者の自己負担の一部または全部を公費が肩代わりするため、レセプト上では「保険でいくら」「公費でいくら」「利用者負担はいくら」を分けて記載します。
訪問看護療養費明細書には「保険種別1」「保険種別2」という欄があり、ここで組み合わせを宣言します。厚生労働省の「訪問看護療養費請求書等の記載要領」では、次のように定められています。
| 欄 | 番号 | 意味 |
| 保険種別1 | 1 社・国 | 健康保険(船員保険を含む)または国民健康保険 |
| 2 公費 | 公費負担医療のみ(医療保険・後期高齢者医療との併用を除く) |
| 3 後期 | 後期高齢者医療 |
| 保険種別2 | 1 単独 | 公費の併用なし(公費のみの場合は公費1種) |
| 2 2併 | 1種の公費負担医療との併用 |
| 3 3併 | 2種以上の公費負担医療との併用 |
たとえば「国保+難病」なら「1 社・国」「2 2併」、「後期高齢者医療+難病+自治体の医療費助成」なら「3 後期」「3 3併」、「生活保護のみ」なら「2 公費」「1 単独」となります。なお記載要領では、ここでいう公費負担医療に地方公共団体が独自に行う医療費助成事業(審査支払機関へ請求するものに限る)も含むとされています。重度心身障害者医療費助成など、自治体の助成を見落として2併と3併を取り違えるケースが多いので注意しましょう。
訪問看護でよく出てくる公費と法別番号
公費負担者番号(8桁)の先頭2桁が「法別番号」で、どの制度の公費かを表します。訪問看護療養費の記載要領の別添2「法別番号及び制度の略称表」から、訪問看護の現場で目にすることが多いものを抜き出すと次のとおりです。
| 法別番号 | 制度 | 訪問看護での主な場面 |
| 21 | 障害者総合支援法の精神通院医療 | 精神科訪問看護の利用者 |
| 15 | 障害者総合支援法の更生医療 | 身体障害のある成人の利用者 |
| 16 | 障害者総合支援法の育成医療 | 身体障害のある児童の利用者 |
| 19 | 原爆被爆者の一般疾病医療費 | 被爆者健康手帳をお持ちの利用者 |
| 52 | 児童福祉法の小児慢性特定疾病医療支援 | 医療的ケア児など小児の利用者 |
| 54 | 難病法の特定医療(指定難病) | ALS・パーキンソン病関連疾患などの利用者 |
| 51 | 特定疾患治療研究事業など | スモンなど旧制度から継続している利用者 |
| 12 | 生活保護法の医療扶助 | 生活保護を受給している利用者 |
受給者証を見ても、どの制度の公費なのかすぐにわからないことがあります……。
まず公費負担者番号の先頭2桁を見てください。「54」なら難病、「12」なら生活保護、というように法別番号で制度がわかります。利用者台帳に法別番号と有効期間を一緒に控えておくと、毎月の確認がぐっと楽になりますよ。
明細書の番号欄の書き方|保険者番号・公費負担者番号・受給者番号
公費併用レセプトで記入ミスが起きやすいのが番号欄です。記載要領で定められているルールを整理すると、次のようになります。
| 欄 | 記載する内容 | 注意点 |
| 保険者番号 | 保険者番号8桁(国保は6桁) | 公費単独・公費と公費の併用(公費のみの場合)は記載しない |
| 公費負担者番号 | 医療券・受給者証に記入されている8桁 | 法別番号の順で第1公費・第2公費に振り分ける |
| 公費負担医療の受給者番号 | 医療券・受給者証に記入されている7桁 | 第1公費・第2公費と同じ並びで記載する |
| 実日数 | 保険・公費①・公費②それぞれの訪問実日数 | 公費分が保険分と同じなら省略可。同日に複数回訪問しても1日 |
| 負担金額(公費欄) | 医療券・受給者証に記入されている利用者負担額 | 難病・精神通院などは端数処理のルールが別に定められている |
記載要領では、請求ソフト等の電子計算機から出力する明細書(様式第四)には「公①」〜「公④」の4枠まで、それ以外の明細書(様式第四の二)には「公費負担者番号①」「公費負担者番号②」の2枠が用意されています。オンライン請求であれば請求ソフトが枠を自動で割り当てることが多いですが、どの公費を第1公費にするかの判断は事務担当者が理解しておく必要があります。ソフトの公費マスタ登録を誤ると、毎月同じ順番の誤りが続いてしまうためです。
また、公費負担医療単独の利用者で、月の途中に公費負担者番号や受給者番号が変わった場合は、番号ごとに別の明細書を作成します。一方、同じ種類の公費で住所変更により公費負担者番号だけが変わった場合は、変更前を第1公費、変更後を第2公費として1枚で扱うとされています。転居の多い利用者は、月初に受給者証の写しを取り直すと安心です。
第1公費・第2公費の順番の決め方
公費が2種類以上ある場合、どちらを第1公費にするかは事務担当者の判断で決めるものではありません。記載要領では、別添2「法別番号及び制度の略称表」に示す順番により、先順位の公費負担者番号を第1公費、後順位を第2公費として記載すると定められています。
実務で特に押さえておきたいのは、生活保護(法別12)は表の最後に置かれているという点です。つまり、生活保護とほかの公費を併用する場合、生活保護はほぼ必ず後順位になります。これは、生活保護法の「他の法律に定める扶助は生活保護に優先して行われなければならない」という補足性の原理とも一致します。
POINT
よくある組み合わせの並び方の例:「難病(54)+生活保護(12)」は第1公費が54、第2公費が12。「精神通院(21)+生活保護(12)」は第1公費が21、第2公費が12。迷ったら別添2の表で上にある制度が先、と覚えておきましょう。
なお、生活保護による医療扶助・感染症法による結核患者の適正医療・障害者総合支援法による精神通院医療等の3種を併用する場合は特例があり、法別番号順によらず、生活保護の公費負担者番号を「保険者番号」欄に、受給者番号を「被保険者資格に係る記号・番号」欄に記載するとされています。該当する利用者はまれですが、もし出てきたら記載要領の該当箇所(「その他」の項)を確認してから入力しましょう。
請求ソフトが自動で順番を決めてくれるなら、自分で覚えなくても大丈夫じゃないですか?
ソフトは登録された公費の情報をもとに並べるだけなので、最初の登録を間違えると毎月そのまま出てしまいます。新規利用者の登録時に、プレビュー画面で第1公費・第2公費の並びを一度目で確認する習慣をつけておくと安心ですよ。
難病(法別54)を併用するときのポイント
指定難病の利用者は、訪問看護の頻度が高く医療保険での訪問になることも多いため、事業所にとって公費併用の代表例です。難病医療費助成を使うときに事務担当者が押さえておきたいのは、次の4点です。
1. 事業所が「指定医療機関」の指定を受けているか
難病情報センターの案内では、指定医療機関は都道府県・指定都市から指定を受けた病院・診療所、薬局、訪問看護ステーション等であり、指定難病の医療費の給付を受けられるのは原則として指定医療機関で行われた医療に限られるとされています。新規の難病利用者を受け入れる前に、自事業所が利用者の住所地の都道府県(指定都市)で指定を受けているかを確認しておきましょう。
2. 負担額は「2割(または1割)」と「月額上限」の低いほう
指定医療機関では、受診のつど自己負担上限月額の範囲内で医療費の2割(または1割)を徴収するとされています。上限月額は所得に応じて受給者証に記載されており、人工呼吸器等を装着している場合は所得階層にかかわらず月額1,000円とされています。レセプトの公費欄の「負担金額」には、受給者証に記載された負担額をもとに記載しますが、高齢受給者の一般所得者・低所得者については、給付対象額の2割相当額が受給者証の負担額を下回る場合はその2割相当額を記載する、という特別なルールがあります。
3. 自己負担上限額管理票の記入
自己負担上限月額は、受診した複数の指定医療機関の負担額を合算して適用され、受給者証とともに交付される「自己負担上限額管理票」で管理されます。訪問看護ステーションも、訪問のたびに(または月ごとに)利用者から管理票を見せてもらい、徴収額を記入します。他の医療機関や薬局ですでに上限に達している月は、その月はそれ以上の徴収を行わないため、管理票を確認しないまま請求・集金すると、利用者からの過徴収につながります。
4. 特記事項の所得区分コード
特定医療費受給者証に適用区分が記載されている場合、明細書の「特記」欄に「区ア」「区イ」「区ウ」「区エ」「区オ」などのコードと略称を記載します。70歳以上の場合は受給者証の適用区分(Ⅰ〜Ⅵ)に応じたコードになります。受給者証の適用区分と特記コードの対応は記載要領の表で確認できますので、新規登録時に一度照らし合わせておきましょう。
注意
難病医療費助成は介護保険の訪問看護も対象になります。大阪府の案内では、医療費助成の対象となる介護保険サービスとして、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・介護予防訪問看護などが挙げられています。介護保険で訪問している難病の利用者でも、受給者証の有無を必ず確認しましょう。
生活保護(法別12)のレセプトのポイント
生活保護の利用者は、レセプトが「生活保護単独」になるか「医療保険との併用」になるかで書き方が変わります。
単独か併用かは「医療保険の資格」で決まる
生活保護が開始されると、国民健康保険や後期高齢者医療の資格は保護開始日から喪失します(久留米市福祉事務所「生活保護法 指定医療機関のしおり」)。そのため、国保・後期の加入者だった人は、保護開始後は生活保護単独(保険種別1「2 公費」、保険種別2「1 単独」)になるのが一般的です。一方、勤務先の健康保険(社保)に加入している人は資格が残るため、社保と生活保護の併用(「1 社・国」「2 2併」)になり、生活保護は自己負担分を受け持つ形になります。
医療券は暦月単位で届く
生活保護の訪問看護は、福祉事務所が訪問看護の要否を判断したうえで医療券を交付する仕組みです。医療券は暦月単位で発行され、指定医療機関は医療券に記載された公費負担者番号・受給者番号などを明細書に転記して請求します。医療券が届いていない月の請求は、福祉事務所の個別指導でも改善を求められる例として挙げられています。月末の請求締め前に「今月分の医療券が全員分そろっているか」を一覧で確認することが、返戻を防ぐ一番の近道です。
また、世帯の収入によっては本人支払額が生じる場合があり、その額は医療券の自己負担額欄に記載されています。この場合は明細書に本人支払額を記載し、本人から徴収します。
介護保険・他の公費が優先される場合がある
同じしおりでは、40歳以上で要支援・要介護状態にある場合は介護保険(介護扶助)の訪問看護が優先し、末期の悪性腫瘍の患者その他厚生労働大臣が定める患者については医療扶助で対応する、と説明されています。また、難病法による医療費助成は生活保護受給者にも医療扶助に優先して適用されるとされています。生活保護の利用者で難病の受給者証がある場合は、先に難病(54)を第1公費として適用し、生活保護(12)を第2公費とする形になります。
医療券がまだ届いていないのに、訪問は始まっている利用者さんがいます。どうしたらいいですか?
担当のケースワーカーさんに早めに連絡して、発行状況を確認しましょう。締め日までに届かない場合は、無理に請求せず、医療券が届いてから請求する(月遅れ請求にする)ほうが返戻の手間がかかりません。連絡した日付と相手の名前は記録に残しておいてくださいね。
請求先と請求書の件数の数え方
公費併用レセプトは、医療保険側の保険者によって提出先が分かれます。
- 国民健康保険・後期高齢者医療と公費の併用:国民健康保険団体連合会(国保連)へ請求
- 社保(健康保険など)と公費の併用、生活保護単独などの公費単独:医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(旧:社会保険診療報酬支払基金)へ請求
社会保険診療報酬支払基金は2026年10月に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」(DX審査支払機構)となっています。請求ソフトや帳票の表記が旧名称のままでも提出の仕組み自体は変わりませんが、事業所内のマニュアルや請求先一覧の名称は順次更新しておきましょう。
訪問看護療養費請求書(総括表)では、公費の件数を公費負担医療制度ごとに数えます。記載要領では、医療保険と2種の公費を併用している場合、1枚の明細書であっても公費負担医療に係る件数は2件になると説明されています。明細書の枚数と請求書の公費件数が一致しないのは正常な状態なので、慌てずに制度ごとの集計を確認しましょう。
公費併用レセプトの提出前チェック手順
最後に、公費併用の利用者について、毎月の請求前に確認したい手順をまとめます。チェックリストとして印刷して使うのもおすすめです。
- 受給者証・医療券の有効期間を確認する難病・小児慢性・精神通院などの受給者証は有効期間があり、更新されると受給者番号や上限月額が変わることがあります。生活保護は当月分の医療券がそろっているかを一覧で確認します。
- 保険種別1・保険種別2を確認する医療保険の種別(社・国/公費/後期)と、公費の数(単独/2併/3併)が利用者の実態と合っているかを見ます。自治体独自の医療費助成の漏れに注意します。
- 第1公費・第2公費の並びを確認する別添2の表の順番どおりか、生活保護が後順位になっているかを確認します。
- 番号の桁数と転記ミスを確認する公費負担者番号は8桁、受給者番号は7桁です。受給者証の写しと画面を指差しで照合します。
- 負担額と上限管理票を確認する難病などは上限額管理票の累積額、生活保護は医療券の本人支払額を確認し、明細書の負担金額と利用者からの徴収額が一致しているかを見ます。
提出前点検の全体像は「訪問看護レセプトの点検方法|返戻を未然に防ぐチェックポイント」でも解説しています。公費以外の項目もあわせて確認しておきましょう。
よくある質問
公費が2つある場合、どちらを第1公費にすればよいですか?
厚生労働省の記載要領の別添2「法別番号及び制度の略称表」に示す順番で、先順位の公費を第1公費、後順位の公費を第2公費として記載します。生活保護(法別12)は表の最後に置かれているため、ほかの公費と併用する場合は通常、生活保護が後順位になります。
生活保護単独の利用者は、保険者番号欄に何を書けばよいですか?
公費負担医療単独の場合、保険者番号欄は記載しません。保険種別1は「2 公費」、保険種別2は「1 単独」とし、医療券に記載された公費負担者番号(8桁)と受給者番号(7桁)を公費欄に記載します。
難病の自己負担上限額管理票は訪問看護ステーションでも記入が必要ですか?
はい。自己負担上限月額は、受診した複数の指定医療機関の負担額を合算して適用され、受給者証とともに交付される自己負担上限額管理票で管理されます。指定医療機関である訪問看護ステーションも、徴収した負担額を記入し、上限に達している月はそれ以上の徴収を行わないようにします。
自治体の医療費助成も「公費」として数えますか?
記載要領では、保険種別2の判断に用いる公費負担医療には、地方公共団体が独自に行う医療費助成事業(審査支払機関へ請求するものに限る)も含むとされています。審査支払機関に請求する自治体の助成がある場合は、2併・3併の判断に含めて記載します。
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公費の順番や番号の誤りは、返戻の原因になりやすいポイントです。返戻がなぜ起こるのか、よくある原因と防ぎ方もあわせて確認しておきましょう。
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出典・参考(公的機関)
公費負担医療の取扱いや医療券の発行方法は、制度改正や自治体によって異なる場合があります。実際の請求にあたっては、最新の通知および受給者証・医療券の発行元の案内をご確認ください。
まとめ|公費併用は「種別・順番・負担額」の3点で迷わない
公費併用の訪問看護レセプトは、記入欄が増えるぶん難しく見えますが、確認すべきポイントは決まっています。保険種別で組み合わせを宣言し、法別番号の順番で公費を並べ、受給者証や医療券の内容を正確に転記する。この流れを毎月同じ手順で回すことが、返戻を防ぐ一番の近道です。
この記事のまとめ
- 保険種別1(社・国/公費/後期)と保険種別2(単独/2併/3併)で組み合わせを記載する
- 自治体独自の医療費助成も、審査支払機関に請求するものは公費として数える
- 第1公費・第2公費は別添2の法別番号表の順番で決まり、生活保護(12)は通常後順位になる
- 難病(54)は指定医療機関の確認と、自己負担上限額管理票の記入・確認が欠かせない
- 生活保護は医療券が暦月単位で届くため、締め前に全員分そろっているかを確認する
まずは自事業所の公費併用利用者を一覧にして、法別番号・有効期間・負担上限を整理するところから始めてみましょう。
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