「訪問看護指示書って、結局だれが主治医に頼むものなんですか?」ケアマネジャーが頼んでくれるケースもあれば、ご家族が受診のついでに頼むケースもあり、事務担当者ほど迷いやすい疑問です。
結論から言うと、指示書を書くのは主治医、指示書を文書で受け取る義務を負うのは訪問看護ステーションです。ケアマネジャーや病院の退院支援担当者、ご家族は「最初の橋渡し役」になることはあっても、依頼の抜け漏れや期限切れの責任を最終的に負うのはステーション側です。この記事では、法令・通知の根拠をもとに、主治医・ケアマネ・病院・ご家族・ステーション内(管理者・看護師・事務)の役割分担を整理し、「誰がやるのか」をはっきりさせるための実務手順まで解説します。
この記事でわかること
- 訪問看護指示書を「書く人」「受け取る責任がある人」の法令上の位置づけ
- 主治医・ケアマネ・病院・利用者家族・ステーションの役割分担表
- 介護保険・医療保険・退院時で「最初に動く人」がどう変わるか
- ステーション内で管理者・看護師・事務が分担すべき範囲
- 「誰が頼んだか分からない」を防ぐ事務の実務手順
目次
訪問看護指示書は誰が依頼する?結論は「受け取る責任はステーション」
新規の利用者さん、ケアマネさんが「指示書は先生に頼んでおきますね」と言っていました。じゃあ、うちは待っているだけでいいんですよね?
頼んでもらえるのは助かるけれど、「待っているだけ」は危ないですね。指示書が届かないまま訪問を始めることはできないので、届いたかどうかを確認するのは、うちの仕事なんです。
「誰が依頼するか」を考える前に、法令と診療報酬のルール上、誰に何の責任があるのかを押さえておきましょう。
指示書を「書く」のは主治医
訪問看護指示書は、在宅療養中の患者さんを診ている主治医が、診療に基づいて訪問看護の必要性を認めたときに作成・交付する書類です。令和8年度診療報酬改定後の医科点数表でも、訪問看護指示料(300点)は、主治医が患者の同意を得て、患者が選んだ訪問看護ステーション等に対して指示書を交付した場合に、患者1人につき月1回算定するものと定められています。
つまり、指示書の発行を決めるのは主治医であり、どのステーションに出すかは患者さんの選択が前提です。ケアマネジャーやステーションが「代わりに書く」ことはできません。
指示書を「文書で受け取る」義務はステーション
介護保険の運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第69条)と、医療保険の運営基準(指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 第16条)には、どちらも「指定訪問看護事業者は、指定訪問看護の提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けなければならない」という趣旨の規定があります。
依頼の窓口が誰であっても、指示書を受け取らないまま訪問を始めた場合に問われるのはステーション側です。だからこそ、ステーションは「誰かが頼んでくれるはず」で終わらせず、依頼状況と到着を自分たちで把握しておく必要があります。
ケアマネジャーは「主治医の指示がある場合に限り」ケアプランに位置づける
介護保険の利用者の場合、ケアマネジャーにも主治医とのやり取りに関するルールがあります。指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準 第13条では、利用者が訪問看護などの医療サービスを希望する場合は、利用者の同意を得て主治の医師等の意見を求めること、そしてケアプランに訪問看護を位置づけるのは主治の医師等の指示がある場合に限ることが定められています。
このため、介護保険のケースではケアマネジャーが主治医へ最初に相談する流れが多くなります。ただし、これはケアマネジャーが「指示書の受け取りまで責任を持つ」という意味ではありません。ケアマネジャーは訪問看護の必要性を主治医に相談する立場で、指示書そのものはステーションに宛てて交付されます。
POINT
「誰が依頼するか」に法令上の決まった答えはありません。決まっているのは、主治医が書くこと、ステーションが文書で受け取ること、の2点です。依頼の入口は状況によって変わってよく、ステーションが最後に責任を持って確認する、と考えると整理しやすくなります。
【一覧表】訪問看護指示書に関わる人の役割分担
関わる人が多すぎて、誰が何をするのか頭がこんがらがります……。
表にすると一気に整理できますよ。ポイントは「判断する人」と「書類を動かす人」を分けて考えることです。
| 関係者 | 主な役割 | 指示書との関わり方 |
| 主治医 | 訪問看護の必要性を診療に基づいて判断する | 指示書を作成・交付する(訪問看護指示料を算定) |
| 利用者・家族 | 訪問看護の利用に同意し、ステーションを選ぶ | 受診時に主治医へ相談することがある。主治医が認めれば、指示書を家族経由でステーションへ届けることもできる |
| ケアマネジャー | 介護保険のケアプランを作成する | 利用者の同意を得て主治医に意見を求める。主治医の指示を確認したうえで訪問看護をケアプランに位置づける |
| 病院の退院支援担当(医療ソーシャルワーカー・退院支援看護師など) | 退院後の在宅サービスを調整する | 退院時に入院先の医師が指示書を出す場合、病院側の窓口になることが多い |
| ステーション管理者・看護師 | 訪問看護の必要性や内容について主治医と相談する | 状態変化や特別指示の必要性を主治医に報告・相談する。指示内容を確認し、訪問看護計画書・報告書を主治医に提出する |
| ステーション事務 | 書類の流れと期限を管理する | 依頼書の送付、到着確認、有効期間の台帳管理、更新依頼の発送、請求との突合 |
この表で大事なのは、医学的な判断や指示内容のやり取りは主治医と看護職が行い、事務は「書類の流れと期限」を管理するという線引きです。事務が主治医に「この利用者さんに週何回の訪問が必要か」を相談することはありませんが、「指示書がいつまでに届くか」「有効期間がいつ切れるか」を把握しているのは事務であることが多いはずです。
状況別:最初に主治医へ動くのは誰か(3つの入口)
依頼の「入口」は、利用者さんがどの保険で訪問看護を使うか、どこから在宅療養が始まるかで変わります。ここでは、入口ごとに「最初に動く人」と「その間に事務がやること」を整理します。依頼書の書き方や送付方法そのものは、訪問看護指示書の依頼方法の記事で詳しく解説しています。
入口1:介護保険の利用者(ケアマネジャー経由が多い)
要介護・要支援の認定を受けている利用者さんは、原則として介護保険で訪問看護を利用します。ケアマネジャーが利用者の同意を得て主治医に意見を求め、主治医が必要と判断すれば、利用者さんが選んだステーション宛てに指示書が出ます。
この入口では、ケアマネジャーが主治医に相談してくれることが多い一方で、ステーションから主治医への正式な依頼書の送付が別途必要かどうかが曖昧になりがちです。事務は、ケアマネジャーに「主治医へどこまで伝えているか」「指示書はステーション宛てで依頼済みか」を確認し、必要であればステーションから依頼書を送ります。
入口2:医療保険の利用者(本人・家族やステーションから主治医へ)
要介護認定を受けていない方や、介護保険の利用者でも厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方などは、医療保険で訪問看護を利用します。この場合はケアマネジャーが関わらないことも多く、本人・家族が受診時に主治医へ相談するか、ステーションが利用相談を受けて主治医に依頼する流れになります。どちらの保険が優先されるかの判断は、医療保険と介護保険の優先関係の記事で整理しています。
ご家族が主治医に相談した場合でも、主治医からは「どのステーションに出せばいいか」を聞かれます。ステーション名・住所・FAX番号などの宛先情報をご家族にお渡ししておくと、指示書の出し先の誤りを防げます。
入口3:退院と同時に始まる利用者(病院の退院支援担当経由)
入院中の患者さんが退院後すぐに訪問看護を使う場合、病院の医療ソーシャルワーカーや退院支援看護師が調整役になります。訪問看護指示料は退院時にも1回算定できる仕組みになっており、入院先の医師が退院時に指示書を出すケースがあります。
この入口では、退院後に在宅で診る主治医(かかりつけ医)と入院先の医師が異なることがあります。退院時の指示書を誰が書き、その後の更新を誰が引き継ぐのかを、退院前の段階で病院の窓口に確認しておくと、翌月以降の更新依頼で迷わずに済みます。
| 入口 | 最初に主治医へ動く人 | 事務が確認すること |
| 介護保険 | ケアマネジャー(利用者の同意を得て意見を求める) | ステーション宛ての指示書を依頼済みか/依頼書の追送が必要か |
| 医療保険 | 本人・家族、またはステーション | 主治医にステーションの宛先が伝わっているか/保険区分 |
| 退院時 | 病院の退院支援担当 | 退院時の指示書の発行者と、退院後の主治医(更新の依頼先) |
新規・更新・状態変化で「依頼する人」はどう変わるか
最初はケアマネさんが頼んでくれたなら、更新のときもケアマネさんにお願いすればいいんでしょうか?
更新は、有効期間を一番正確に把握しているステーションから依頼するのが確実ですね。新規の入口と、継続中の依頼は分けて考えましょう。
新規:入口によって変わる(前章のとおり)
新規の場合は、介護保険ならケアマネジャー、退院時なら病院、医療保険なら本人・家族やステーションが最初に動くことが多くなります。ステーションの役割は、入口が誰であっても「ステーション宛ての指示書が出る段取りになっているか」を確認することです。
更新:ステーションが主体になるのが基本
訪問看護指示書の有効期間は、主治医が指示書に記載する仕組みで、最長6か月以内とされています(1か月の指示であれば有効期間の記載は不要)。有効期間を台帳で管理しているのは通常ステーションなので、更新の依頼はステーション(事務)が期限から逆算して行うのが最も確実です。ケアマネジャーには、更新を依頼した旨を共有しておけば十分なケースが多いでしょう。有効期間の考え方と更新時期の目安は指示書の有効期間の記事で解説しています。
状態変化・特別指示:看護師が主治医へ報告し、主治医が判断する
急性増悪や終末期、退院直後などで一時的に頻回の訪問が必要になった場合、主治医は特別訪問看護指示書を交付できます。令和8年度改定後の留意事項通知では、週4回以上の頻回の訪問看護を一時的に行う必要がある場合に、診療の日から14日以内に限って実施するもので、交付は原則月1回(気管カニューレを使用している状態の方や真皮を越える褥瘡の状態の方は月2回)までとされています。
このケースで主治医に状態を伝えて相談するのは、利用者さんを訪問している看護師や管理者です。事務が医学的な内容を代わりに主治医へ伝えることは避けましょう。事務の役割は、特別指示書が届いたら期間(開始日・終了日)を台帳に登録し、請求時に訪問回数や期間と突き合わせることです。
ステーション内の分担:管理者・看護師・事務の線引き
ステーションが「受け取る責任」を負うといっても、全部を事務がやる必要はありません。むしろ、判断を伴う部分まで事務が抱え込むと、主治医とのやり取りで行き違いが起きやすくなります。小規模なステーションでは管理者が事務を兼ねることもありますが、その場合も「どの帽子をかぶって動いているか」を意識しておくと整理しやすくなります。
| 担当 | 任せる業務 | 任せない業務 |
| 管理者 | 新規受け入れの可否判断、主治医との関係づくり、分担ルールの決定 | 日々の到着確認や台帳入力(事務に任せる) |
| 看護師 | 状態変化の報告、特別指示の相談、指示内容の確認、計画書・報告書の作成 | 依頼書の発送や期限の台帳管理(事務に任せる) |
| 事務 | 依頼書の作成・送付、到着確認、有効期間の台帳管理、更新依頼、請求との突合 | 主治医への医学的な相談、指示内容の解釈 |
注意
指示書の記載内容(傷病名、指示期間、特別指示の期間など)に不明点がある場合、事務が独自に判断して請求するのは避け、看護師や管理者に確認したうえで、必要に応じて看護職から主治医に問い合わせてもらいましょう。
なお、留意事項通知では、指示書は患者さんの求めに応じて、患者さんやご家族を介してステーションに届けることもできるとされています。ご家族が持参してくれる場合は、受け取った日と受け取った人を台帳に記録し、原本の保管場所を決めておくと、監査や請求の確認のときに困りません。
「誰が頼んだか分からない」ときに起きるトラブルと防ぎ方
役割分担が曖昧なままだと、次のようなトラブルが起きやすくなります。どれも「自分以外の誰かがやっているはず」という思い込みが原因です。
トラブル1:依頼の二重送付・依頼漏れ
ケアマネジャーとステーションの両方が主治医に依頼し、医療機関側に同じ依頼が2回届くことがあります。逆に、お互いに相手が頼んだと思い込み、誰も依頼していなかったということも起こります。防ぐには、新規受け入れ時に「依頼者」欄を設けた受付票を作り、誰がいつ依頼したかを1行で記録することです。
トラブル2:更新の期限切れ
新規時にケアマネジャーが依頼してくれたため、更新のタイミングも誰かがやってくれると思い込み、有効期間が切れてしまうケースです。指示書の有効期間外の訪問は請求の根拠を欠くことになり、返戻や返還の原因になりえます。更新は事務が期限の1か月程度前から依頼する、とルール化しておくと安全です。
トラブル3:主治医が複数いて依頼先が分からない
内科と整形外科など、複数の医療機関を受診している利用者さんもいます。留意事項通知では、指示は主として診療を行う保険医療機関が行うことが原則とされています。どの医師に依頼するかは、利用者さんやご家族、ケアマネジャーと確認し、看護師・管理者が判断します。事務は決まった依頼先を台帳に記録し、更新時に迷わないようにしておきます。
トラブル4:2つのステーションが関わる場合の記載漏れ
一定の疾病等の利用者さんで、2か所の訪問看護ステーションに指示書が交付される場合、それぞれの指示書には、他のステーションにも交付している旨とその名称を記載することとされています。もう1か所のステーションがある利用者さんの指示書が届いたら、この記載があるかを確認し、なければ看護師・管理者に共有しましょう。トラブル事例と対処法は指示書のトラブル対処法の記事でも紹介しています。
事務担当者がやること:受付から更新までの実務手順
役割は分かりました。明日から、具体的に何をすればいいですか?
この6ステップを習慣にすれば、「誰が頼んだの?」で慌てることはなくなりますよ。
- 受付時に「依頼者」と「依頼先」を記録する新規相談を受けたら、相談元(ケアマネジャー・病院・本人家族)、主治医の医療機関名・連絡先、保険区分を受付票に記入します。
- ステーション宛ての依頼状況を確認するケアマネジャーや病院が主治医に相談済みでも、ステーション宛ての指示書が依頼されているかを確認し、必要ならステーションから依頼書を送付します。
- 到着予定日を決めて追いかける訪問開始日から逆算し、指示書の到着予定日を台帳に入れます。予定日を過ぎても届かない場合は、医療機関へ到着状況を問い合わせます。
- 届いたら記載内容を確認し、看護師に回す利用者名、指示期間、医療機関名、主治医名、緊急時の連絡先などの基本情報を確認し、指示内容の確認は看護師に依頼します。
- 有効期間を台帳に登録する指示期間の開始日・終了日と、特別指示書があればその期間を登録します。更新依頼の予定日(終了の1か月前など)もあわせて入力します。
- 更新依頼はステーションから出し、関係者に共有する更新予定日になったら事務が依頼書を送付し、ケアマネジャーにも更新を依頼した旨を伝えます。請求前には、訪問日が指示期間内に収まっているかを突き合わせます。
指示書の料金や、誰が費用を負担するのかについては訪問看護指示書の料金の記事、返信用封筒や切手の扱いについては返信用封筒・切手の記事で解説しています。
よくある質問
訪問看護指示書は利用者本人や家族が依頼しないといけませんか?
必ずしも本人や家族が依頼する必要はありません。指示書は、主治医が患者の同意を得て、患者が選んだ訪問看護ステーションに交付するものです。実務では、ケアマネジャーや病院の退院支援担当、訪問看護ステーションが主治医への依頼を担うことが多く、本人・家族には同意とステーションの選択をしてもらいます。
ケアマネジャーが主治医に相談してくれた場合、ステーションは何もしなくてよいですか?
何もしなくてよいわけではありません。運営基準上、訪問看護の開始時に主治医の指示を文書で受ける義務はステーションにあります。ケアマネジャーが相談済みでも、ステーション宛ての指示書が依頼されているか、いつ届くかを確認し、必要に応じてステーションから依頼書を送りましょう。
指示書の更新は誰が依頼しますか?
有効期間を台帳で管理しているステーションが依頼するのが確実です。指示書の有効期間は最長6か月以内とされているため、事務が期限から逆算して更新依頼を出し、ケアマネジャーには依頼した旨を共有する運用が一般的です。
特別訪問看護指示書は事務が依頼してもよいですか?
特別訪問看護指示書は、急性増悪などで一時的に頻回の訪問が必要かどうかを主治医が判断して交付するものです。利用者の状態を主治医に報告・相談するのは看護師や管理者が担い、事務は届いた指示書の期間を台帳に登録して、請求時に訪問回数や期間と突き合わせる役割を担います。
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まとめ|依頼の入口は人それぞれ、確認の責任はステーション
訪問看護指示書は「誰が依頼するか」が法令で一つに決まっているわけではありません。だからこそ、ステーションとして役割分担を決め、記録しておくことが大切です。
この記事のまとめ
- 指示書を書くのは主治医、文書で受け取る義務を負うのは訪問看護ステーション
- 新規の入口は、介護保険ならケアマネジャー、退院時なら病院、医療保険なら本人・家族やステーションが多い
- ケアマネジャーが相談済みでも、ステーション宛ての指示書が依頼・到着しているかは自分たちで確認する
- 更新は有効期間を管理しているステーション(事務)が期限から逆算して依頼する
- 状態変化や特別指示の相談は看護師・管理者、書類と期限の管理は事務が担う
「誰が頼んだか」「いつ届くか」「いつ切れるか」を台帳で見える化すれば、指示書まわりの抜け漏れは大きく減らせます。
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